インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

定期採用で技術をつなぐ。 太陽ブリキ印刷株式会社 代表取締役社長 小池 良雅

テーマパークなどで見かける美しい缶の印刷で豊富な実績

百貨店の洋菓子売り場やテーマパークのショップに並ぶ、色とりどりの美しい化粧缶。太陽ブリキ印刷株式会社は、こうした金属への4色オフセット印刷や特色印刷を得意とし、関西の有名洋菓子メーカーのパッケージ缶では、かなり高いシェアを誇っています。
「品質と納期をきっちり守る。その機動力や対応力が当社の強みです。そのためには、職人も設備もいつもベストの状態にしておくことが重要なんです」と小池良雅社長は語っています。
気温や湿度の微妙な変化でインクの硬さや乗りが違ってくる金属印刷。シビアな品質管理が求められるなか、昔はその微妙な調整を、職人一人ひとりの技術に頼っていたといいます。
「昔の職人さんは、先輩から"身体で覚えろ"的に厳しく技術を叩き込まれていますが、今はそんなやり方で若い人たちはついてきませんし、育ちません。今後は、ある程度のことを数値で管理できるようにしていきたいと考えていますが、一方で、まだまだアナログな職人の技術は必要です。会社を次代につないでいくためには、人材の育成は欠かせないことです」と小池社長。


究極の印刷とは、最も少ない水量に最も少ないインキ量で、目標濃度を出し印刷をすること

印刷の仕上がりは、印刷機の圧とインクの量の微妙な調整でずいぶんと違ってくるとか。
60歳以上の昔の職人たちは、メンテナンスも自分でできるほど機械を知り尽くしていたそうですが、今の若い人は機械に馴染みがなく、同社では年に約10回、専門家を招いて、機械の構造についての勉強会を行っています。
「今の若いもんはと、世代の違いのせいにするのは、経営者の怠慢ですよね。できるようになる機会と環境を作ってあげるのが私たちの役割かと思います。そしてできるだけ成功体験を積ませてあげること。『うまくできたじゃないか』という評価をすることが大事だと思います」と小池社長は語っています。
ところで、同社ではこの20年間、毎年数名の新卒社員を定期採用しています。「人件費の負担が大きくなることもありますが、会社10年、20年先を見据えた時に、各世代で職人が育っていることが大切です」。できるだけ地域に貢献したいという思いから、地元の高校から採用することが多いそうです。また、先代の小池淳二会長の頃から、障害を持っていたり、家庭に複雑な事情を持っていたりして就職の難しい若い人たちも積極的に雇用し、活躍の場を提供してきました。そうした社員の中には、会長夫妻を親がわりに結婚式を挙げ、幸せな家庭を築いた人もおり、小池社長は「当社で育ったような社員が幸せになるのを見るのは感無量だった」と話しています。


世代ごとの感覚、考えを尊重 その時の経験が次の成長へ

同社では、新入社員はまず2~3年、先輩職人の補助的な仕事をするなかで、仕事の流れを覚えてもらい、本人の適性に応じて印刷や塗装、製版といった部署への配属を決めるといいます。オペレーターを中心にラインごとにチームを編成。残業時間や休日の自由出勤については、納期と品質を守ることを前提に自分たちで計画させていると小池社長。「昔のように、働き方を会社が強制できる時代ではありませんから」。
小池社長の言葉で印象的だったのは「20代は20代の感覚、感情、考え方で働き、失敗するのなら失敗したらいいと思っています。
40代、50代の我々が理屈だけ教えても、それは経験にはならないですから。それは30代、40代も同じこと。いつかオペレーターは40代までの社員に務めさせたいと考えています。ではその時、50代は何をすればいいのか。次の世代を育てられるだけの知識と技術、そして指導力を身につけてほしいですね。それはたとえ、どこにいっても通用する重要なスキルだと思います」。持続的な人材育成が、同社の発展に大きく寄与することが期待されます。

取材でうかがった3社の工場では、若い人たちがイキイキと活躍する姿が頼もしく見えました。知識も技術も外から押し付けるのではなく、自分で考えさせ、失敗させ、経験を積ませることで、内から仕事の面白み、やりがいを発見させることが成長につながっているようでした。経営戦略として人材育成を捉えることが、企業の成長に不可欠であることをあらためて確信しました。



▲印刷方法が紙印刷と全く異なる金属印刷。1版ごとに印刷されたインクは熱乾燥されて金属板に定着される。

缶には、防災用食糧保存という重要な社会的役割も担って

「缶は、製品を美しく包装する機能ばかりでなく、防災用食料のように長期保存としての大切な役割も担っています」と小池社長。

太陽ブリキ印刷株式会社

代表者名代表取締役社長 小池良雅
本社堺市美原区多治井268
TEL072-361-4433
設立1948年創業 1951年設立
資本金1,200万円
従業員数35名
事業内容一般缶、美術缶などの金属印刷

貸会場のご案内 TEL 072-255-0111 FAX 072-255-3570 ご案内ページはこのボタンをクリック