インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
身近な労働環境からも溶剤塗装の限界を感じて
256mのコンベアがまっすぐに伸びる株式会社松本現色化学工場の大型塗装ライン。4年前に完成した西日本最大級の粉体塗装工場です。塗装工場といわれても鼻をつく臭いが一切しません。同社は溶剤を全く使わない静電粉体塗装法に特化、その分野ではパイオニア的存在です。
松本益美社長は、塗装業界では珍しい女性経営者。しかし、その女性ならではの視点と感性が、今の松本現色を作り上げたと言っても過言ではないようです。
「父の代から経理を手伝っていましたが、溶剤の臭いがきつく、まさに〝きつい・汚い・危険"の3Kでした。従業員の労働環境として考えても、このままでいいのかと思っていましたので、1993年に、父が粉体塗料に着手し苦労していた時も、その苦労は必ず報われると思っていました」。
▲主に取り扱うのは、ガードレールやメッシュフェンス、防護柵などの土木製品。
最近では、10mの防球ネット用のポールへの塗装も受注。
西日本最大級の粉体塗装ラインで圧倒的な強さを発揮
当初、粉体塗装は塗料の価格が高く、しかも溶剤に比べて調色も容易ではなかったため、営業で大変な苦労をしたといいます。溶剤塗装と並行していた時期も約10年。「それでも私は、これからは絶対に環境に優しい粉体塗装だと確信していました。溶剤塗装は耐候性や耐蝕性が劣るので、2倍の費用がかかっても、2倍もてば同じではないですかと粉体塗装への切り替えを訴えたんです」。松本社長が経営を引き継ぎ、粉体塗装への完全移行を決めたのが2003年。やがて、新工場構想が浮上しました。
「旧工場のまわりに住宅が迫っていて、操業に気を遣うことが増えました。また、営業に回った先で求められていることに旧工場では対応しきれず受注を逃すという悔しい思いもしていましたので、思い切って新工場を建てることにしたのです。
正直、最初はこれほどの借金を背負って大丈夫なのかと思いましたが、一方で、同じやるなら他の塗装会社にはない特異な工場にしないと意味がないと、最長12m 、1tの大物にも対応できるラインを整備することを決めました。さらに、得意先のコスト低減のため、前処理から後工程の簡単なセットアップや梱包、出荷、物流までをサポートできる建屋を整備しています。今やこれらの設備はフル回転状態です」。
▲最長12mの大物にも対応する大型塗装ライン
男性社会の中で築いた人脈が、新米社長の大きな力に
今や、受注量の拡大によるスケールメリットで、溶剤塗装に対抗できるコストパフォーマンスを実現。松本社長も「今の営業は楽です(笑)。粉体塗装に変えない理由がどこにもないんですから」と話します。 「当時、粉体塗装が未確立な技術だったために、業界でキャリアが浅い私でも入っていきやすかったですし、厳しい男性社会の中で、温かく指導してくださる方にも多く巡り会えました。昨今の環境問題が、追い風ともなっています。私は幸運の星のもとにいたと思いますね」と謙遜する松本社長だが、いち早く環境問題に着目したことが導いた成功のようです。
▲「小さい頃から、父の言うことを聞かないじゃじゃ馬娘だから良かったんじゃないですか(笑)」。先代にほとんど相談もせずに、新工場の建設を英断した松本益美社長。
▲粉体塗装ブースは移動式が3台。塗料の入れ替え時間の無駄を省いている。
株式会社松本現色化学工場
代表者 | 代表取締役社長 松本益美 |
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本社 | 堺市堺区築港八幡町1-52 |
TEL | 072-228-3500 |
設立 | 1962年創業 1964年10月設立 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 35名 |
事業内容 | 金属製品塗装 |
ホームページ | http://www.e-matsugen.co.jp/ |