インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
偶然のできごとから生まれた刃先の丸いMAC包丁
包丁に刻印された「MAC」のロゴに、ヒップアップしたハンドル。マック株式会社の包丁は特徴的です。売り出した当初、「おもちゃみたいな包丁」と国内では相手にされなかったものが、アメリカでの爆発的なヒットを経て、今や世界のシェフたちの間でもよく知られるブランドとなりました。その経緯には、偶然の発見と斬新な販売戦略があります。
1950年代、アメリカの美術大学に留学していた創業者の小林達雄会長が、アルバイトでレストランの調理をしていて、包丁を落としました。床に突き刺さって先が折れた包丁を、自分で先を丸くして使ってみたところ使いやすくなったことから、帰国後、自ら先の丸い包丁をデザインし作ったのが、今日のMACブランドの始まりです。
▲ヒップアップしたハンドルは欧米人の「押し切り」に対応したもの。
アメリカでの実演販売で使い勝手を効果的にアピール
しかし先を丸くし、さらに吊り下げられるように刃に穴をあけたことから「おもちゃみたい」と国内の問屋には相手にされません。ところが、小林会長の目は最初から遠くアメリカに向けられていました。アメリカでは一軒の家に肉用、魚用と何本もナイフを所有すること、そして良い道具を大切にし、また自慢することを知っていたからです。何より製品の力だけで勝負ができる海外の方が魅力的でした。そして、それは正解だったのです。
ハワイを足がかりに、本土でもMACの包丁はよく売れました。その販売戦略もユニークなもので、当時は日本でもなじみのなかった包丁の実演販売を行ったのです。目の前で商品を使ってみせ、またお客様にも試させてみることで、認知度が低いにもかかわらず使いやすさで売れました。使い勝手の良さがユーザーの投稿雑誌でもたびたび紹介され、口コミでも販売数を伸ばしたそうです。そして、ある世界的に有名なシェフがMACを使いだしたことから、プロの世界でも評判が広がりました。今では100カ国以上で愛用されています。
▲「アメリカの一般家庭向けにメンテナンスの容易な和包丁を開発中」と語る小林社長。
▲1960年代のアメリカでいち早く導入した通信販売。切れ味の良さを訴求したり、輪島塗りケースで高級感を打ち出すなど画期的な手法を取り入れています。
確かな技術で作り高く売るそれがブランドづくり
ところで、MACブランドの成長を支えてきたのは、何より日本のものづくり技術だと小林克人社長は語ります。「今も、40年前に売った包丁の修理を持ち込まれることがあります。長く使っていただけるのは、日本の誇るべき職人技のおかげですね。MACは和包丁と同じ片刃風の刃付けをしていますが、それを一本一本、職人たちの手によって、45.5度まで鋭く研ぎ上げるんです。だから量産はできませんが、自信があるから高く売る。価格競争に陥らないためにも、決して価格を崩してはいけないと思っています。その代わり一流シェフの厳しい目にも耐えられるだけの高品質の製品を作り続けることが大事です」。
とはいっても、昨今、高齢化などで熟練した職人が減りつつあるとか。そこで同社では、MACブランドを守っていくために、自社で職人育成にも努めているそうです。今後について小林社長は「当社のような高価格商品はこれまで欧米など先進国でしか売れないと考えられてきましたが、今や世界全体が経済力を持ち始めています。先日もインドネシアのテレビショッピングへの出演依頼が来ました。これからはインドや東南アジア、アフリカなどへと販売網を広げていきたいと考えています」と抱負を語っていました。
▲熟練した職人の手によって、丁寧に薄く研がれたMACの包丁は優れた切れ味を長く保つことができます。
▲驚異的な靱性と高い硬度を兼ね備えたMACの包丁。
▲堺出身だが包丁とは無縁だった小林達雄会長(左)。「だからこそ既成概念にとらわれない包丁を生み出したといえる」と小林克人社長は語ります。
マック株式会社
代表者 | 代表取締役社長 小林克人 |
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本社 | 堺市堺区戎島町2-25 堂之本ビル3F |
TEL | 072-238-4071 |
設立 | 1965年創業 |
資本金 | 2,400万円 |
従業員数 | 18名 |
事業内容 | 家庭用・業務用包丁などの製造・販売 |
ホームページ | http://www.mactheknife.co.jp |