インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
つらいリハビリをロボットがサポート
リハビリの指導を行う作業療法士が自ら装着して見本となる動作を行うだけで、その動きを簡単に記憶・再生する「手指リハビリロボット」。2009年7月に創業した株式会社アールテクスが開発したものです。きっかけは、約10年前に脳卒中で倒れた父親のリハビリだったと積山彰社長は言います。
「毎日のリハビリはつらいもので、本人はつい怠けますし、家族がつきっきりでサポートするのも大変です。その上、力加減がわからずに強すぎたり、弱すぎて意味がなかったりしますが、このロボットは決められた時間、記憶させられた動作を正確に続けますから、大きな効果が期待できます」。
難しい入力操作が一切不要で、作業療法士が簡単にセットアップできる使い勝手の良さに加えて、既に発売されている関節が一つしかないフランス製のものが一台約80万円もするのに対し、同社の手指リハビリロボットは多関節でさまざまな動きに対応でき、販売予定価格も10万円台と低価格なのが大きな魅力。「家庭でも使っていただきたいから」と積山社長は語っています。
▲作業療法士の手指リハビリ運動を記憶し、患者に施術する「手指リハビリロボット」。
技術の追求が目的ではなく使う人の利益が重要
「とても居心地のいい会社だったので、辞めることを躊躇(ちゅうちょ)した」という積山社長は、堺市に本社を置く自転車部品メーカーのプロジェクトマネージャーでした。それでも起業したのは、「就職して10年間勤めるところまでが自分にとっての義務教育で、"卒業"したら独立することは昔から決めていた」と語る積山社長。新会社の理念は「人を助ける技術創造」です。「父親の病気や阪神淡路大震災、さらに数年前のマネーゲームブームが、そう考えるようになった発端です。お金を右から左に動かすだけで、何も生産せずに儲けるだけの起業家がどうにも嫌でしたね」。
根っからの技術者の自分は、ものづくりで人の役に立とうと考え、積山社長がすぐに着手したのが、手指リハビリロボットだったのです。「もともと大学ではロボットを研究していましたし、既存の技術を使えばさまざまなことに応用がききます。要はロボット技術が人々にどのような利益を提供できるかが重要なのです」。
▲経営者にとって重要な資金調達。「営業は苦手かと思いましたが、いろんな方に自分が作っているものをプレゼンテーションできる機会があって楽しくなりました」と積山社長。
夢はロボット市場を育て、若い技術者たちの受け皿に
手指リハビリロボットについては、すでに同様の研究を進めていた近畿大学のロボットをベースに、約2kgあったものを積山社長が500g まで軽量化。現在は、大阪市との間で経済交流の協定を結んでいるデンマークで医療認定の申請中です。また、シンガポールでも来春からさらにバージョンアップを図ったリハビリロボットの共同研究がスタートするのだとか。
「当社のような実績のない小さな会社が、日本で医療認定を取得するのは大変難しく、まずデンマークで認定を取得した後にヨーロッパで実績を作り、そこから日本に逆輸入するつもりです。生産はマレーシアなどの東南アジアで行い、日本は開発拠点だと考えています。ロボット市場の育っていない日本で、若い人たちの受け皿になれたら」と積山社長は未来を語ります。目は世界に向けられていても、足もとはしっかりと日本の、この堺の地に立っていました。
▲デンマークで開かれた福祉・医療機器の展示会で、「手指リハビリロボット」をデモンストレーション。福祉国家だけに多くの関心を集めた。
▲ロボット制御工学の研究・教育用として、立命館大学の学内ベンチャー企業MMSE社と協同開発中の「ロボットキット」。3つのユニットが用意されている。
株式会社アールテクス
代表者 | 代表取締役 積山 彰 |
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本社 | 堺市南区槇塚台 |
設立 | 2009年設立 |
資本金 | 800万円 |
従業員数 | 2名 |
事業内容 | ロボット製品開発、ロボット部品委託設計、技術開発コンサルティング |
ホームページ | http://www.roobo.com/index.php?mpage=index_detail&schr=146 |
tsumiyama7@gmail.com |