インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
障がい者訓練校を紹介されて初めて気づかされた逸材
機械メーカーや工具メーカーが新製品の開発やモデルチェンジを行う際に製造する試作機。そこで必要な試作部品作りが、昭和鈑金工作所の主要な事業です。試作の段階は小ロットで設計変更も多いため、金型を作る費用や時間をかけていられないこともあり、昭和鈑金工作所では職人一人ひとりが、NC工作機械などを使って簡易金型や簡易治工具を作って部品を製造しています。「依頼される部品は2つと同じものがなく、一回一回が職人の手作り。そこに求められるのは、確かな技術力はもちろんのこと、創造性と集中力だ」と秋田社長は言います。
しかし昨今、若い世代のものづくり離れもあり、優秀な人材を確保するのは至難のワザ。十数年前も、NCプログラム部門の定着率が悪く、常に人手不足の状態だったそうです。そうした時に、ハローワークの職員から「コンピュータを勉強した人がいる」と勧められたのが障がい者訓練校でした。
▲NC工作機械をコンピュータ制御するためのプログラムを作成しているNCプログラム部門。
▲試作部品を製造するための簡易金型や簡易治工具は、職人一人ひとりの工夫によって作られる。
特別視する必要は全くなく個性の一つだと思えた
「それまでにない発想でした」と語る秋田社長ですが、そこで意欲も能力も高い人材に出会えました。「採用にあたっては、障がい者用トイレを設置することと、駐車スペースと1m以上の広い通路を確保することの3つの条件が出されたため、社屋の新築にあわせて整備しました。それよりも工場内で安全を守ってやれるかという不安がありましたが、実際に働きだすとそれも全くの杞憂に終わった」といいます。
「現在は車椅子を使用している社員が一人。以前には聴覚障がいを持った社員もいました。手話を習わないといけないかなと思っていましたが、一切必要なかったですね。筆談やメールも使いましたが、ほとんどが簡単なジェスチャーでコミュニケーションがとれます。彼らを特別扱いする必要は全くなく、一つの個性だと考えています」と秋田社長。「広い視野で探せば、逸材があることに気づかされた」と話しています。
▲障がいを持つ人を積極的に雇用しているということで、堺市から表彰されたほか、平成23年度の「堺市障害者雇用貢献企業」にも認定されている。
▲障がい者訓練校から人材を採用するにあたって整備された身障者用トイレ。
具体的な作業と目標を明示プライドのある職人を育成
秋田社長は経営者仲間から「どうしてこれほど良い人材を集められるのか」と羨ましがられることがあるそうです。得意先企業からの高い評価を得て、同社では職人全員が常にフル回転。「一人として欠けては困る人材」(秋田社長)と、一人ひとりの存在価値は高く、お互いに認め合う関係を築いています。それもそのはず、40年のベテランだけでなく、若手までの全員が一つの仕事の全てを任されています。
「基本はものづくりが好きでないと務まらない仕事です。向いているかどうかなんて、実際にやってみないと誰にもわかりません。ただ採用する時に、これからどういう仕事をしてもらおうと思っているのか、そしてゆくゆくはどこまでの仕事を求めているのかをはっきりと伝えています。意欲というのは後から湧いてくるものですよ」。
良いものができれば喜びを感じ、失敗すれば悔しがる。任され信頼されることで、自ずと職人としての自尊心を育てているのでしょう。「学歴も学校の成績も、ましてや障がいの有無なんて全く関係ない。謙虚さとプライドを持って、最大限の努力をする人こそが必要な人材です」と秋田社長は語っています。
▲先進のNC工作機械の導入によって、 逆に職人が持つ「勘」や「技術」が最大限に活かせるようになったという。
株式会社昭和鈑金工作所
代表者 | 代表取締役 秋田秀勝 |
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本社 | 堺市中区平井336 |
TEL | 072-278-3421 |
設立 | 1955年 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 20名 |
事業内容 | 機械メーカー・工具メーカーの試作品製造、各種試験装置・治具設計製造 |
ホームページ | http://www3.ocn.ne.jp/~shoban/ |