インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
ガラなどの未利用資源を天然調味料に再活用
1982年の創業以来、一貫して天然調味料や天然香辛料の開発製造を行ってきたファインフーズ株式会社。その原点に「もったいない精神」があったといいます。
「戦後、食糧難の時代に生まれた化学調味料や甘味料などの添加物がやがて不安視され始めた1965年頃、大学の先輩や同級生たちと作った前の会社で、私は天然調味料を作ろうと考えました。しかし、天然調味料は原料代が高くつきます。そこで目をつけたのが未利用資源でした」と西村正彦社長。未利用資源とは、水揚げされたばかりのカニをボイルしたゆで汁や、肉を取ったあとのガラ、たくさん収穫され過ぎた旬の野菜などで、それらを安価で入手しエキスを抽出したものが天然調味料に使われたのです。一番の旨味や栄養分が活用されないで捨てられるなんて「もったいない」。天然調味料はその発想から誕生したのです。
▲焼きガニの、調理した時の香りをオイルに添加した「直火調味料」。
新工場に積極的にシニア世代を採用
現在、同社が着目しているのが調理感を醸し出す「香り」です。例えば、ズワイガニを焼いた香りを百℃以上の油の中で抽出させる独自の技術を確立。直火調味料として発売しています。2010年に、堺浜テクノパーク内に建設された新工場MINATOファクトリーは、その専用ラインを有する最新鋭の工場です。
新工場の建設にあたって、最初からシニア世代を積極的活用することを考えていたという西村社長。そのために、高齢者に働きやすく、身体に大きな負担がかからないよう作業環境を配慮すべきだと考え、数年前から生産部の社員全員を参加させた勉強会を開いてきました。安全面、衛生面でHACCP(※)対応の工場とするための設備のあり方に加えて、高齢者が働きやすい作業環境を検討するためです。そのために、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構と共同研究も行いました。
※HACCP・・・・Hazard Analysis and Critical Control Pointの略で、食品衛生管理システムの一方式。食品の原材料生産から加工、流通、販売、消費に至るまでのすべての過程について、工程ごとに危害分析を行い、危害を防止する重要管理点を定め、管理基準を一定頻度で継続監視することにより、危害の発生を未然に防ぐというもの。
▲西村社長の経営の基本は「不の除去」。不快、不安、不満などの「不」を除外していくことが使命だと考えている。
▲高温で刺激臭の強かった作業環境を大幅に改善したIH釜。
ハード・ソフトの両面から高齢者に配慮した作業環境へ
具体的な研究内容と改善点を、研究チームの責任者を務めた生産部の村上真一部長にうかがいました。
「生産部全員で進めた職場環境の改善研究では、まず旧来の本社工場の現場を〝整理整頓〞〝挨拶〞といった基本から〝材料の運搬〞〝作業姿勢〞〝装置の状態〞などといった百を越える細かい項目で洗い出しました。そこから高齢者の方にとっての問題点を大きく3点、①重い材料の投入作業、②高温度と刺激臭のきつい作業現場、③作業マニュアルの不徹底だと考え、その改善方法をハード・ソフトの両面から検討したのです」。
高温と刺激臭については、IH釜の設置により大幅に軽減し、また材料の運搬についてもパレットトラックやハンドリフトなどを導入して解決しました。そして作業マニュアルは大きな写真を多用し、文字を少なめにしたものを作り直しています。
西村社長は「60歳を過ぎてもまだまだ働く意欲があり、元気で優秀な方がいらっしゃいます。そうした人材を活用しないなんて、それこそ『もったいない』ということですね(笑)」と語っていました。
▲「社内の飲み会などの機会を通じて、世代の離れたスタッフ同士のコミュニケーションもうまくいっています」と村上生産部部長。
▲新工場「MINATOファクトリー」は高齢者に配慮したばかりではなく、HACCP対応型基準で衛生面、安全面でも最新鋭の設備を誇る。
▲写真左から、シニア世代もくつろげるよう和室スペースを設けた食堂/インターロック制御で異物の侵入を防ぐ入荷口/若い社員と協力しあって作業に取り組むシニア世代/社員の問題解決能力を高めるため改善案を張り出す「知恵ボード」では、社会の大先輩であるシニアスタッフに助言を求めることもあるとか。
ファインフーズ株式会社
代表者 | 代表取締役社長 西村正彦 |
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本社 | 堺市西区鳳北町9-6 |
TEL | 072-264-7790 |
設立 | 1982年 |
資本金 | 5,000万円 |
従業員数 | 76名 |
事業内容 | 天然調味料および香辛料の製造開発・販売 |
ホームページ | http://www.fine-club.co.jp/ |