インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
「老舗」に安住せず、常に新しいことにチャレンジ
豊臣時代にすでに「玉廼井(たまのい)」という称号が残されているタマノイ酢株式会社。創業百余年を数える老舗企業ですが、播野勤社長は常々「受け継がれた伝統を守るだけでなく、新しいことに挑戦し、時代の変化に対応していくことが
必要」と語られているのだとか。その精神は、同社の製品にも生きています。
例えば、1996年発売の「はちみつ黒酢ダイエット」は、"飲むお酢"の火付け役ともなった大ヒット商品。酢の用途を、調味料のほかにも広げたいと菓子・飲料部門を立ち上げてから、開発20品目の成功でした。
「社内でも難しいとされたドリンクへの挑戦でしたが、『あきらめない』のスローガンのもと開発を続けた結果ですね」と海外事業部の谷尻真治部長は語ります。
▲大ヒット商品の「はちみつ黒酢ダイエット」は、国内だけでなくパリの食品見本市でも金賞を受賞。発売から来年で50年になるお酢を粉末化した「すしのこ」は長年、海外の日系人たちを中心に愛されている。
現地で築いた人脈を活かし、お酢ドリンクの販売を拡大
その「はちみつ黒酢ダイエット」が、今や中国を中心とする東南アジアでも、健康や美容に関心の高い女性たちの間で人気商品となっています。
同社が香港、上海、シンガポールに事業所を開設したのは2008年。製造業と異なり、海外進出の遅い食品業界では大手企業を除いては早い進出です。「現地のことは全くわからないまま、社員を派遣しました。情報収集や市場調査から始まり、5年目に入る現在まで、ネットワーク作りやブランド作りを進めています」と谷尻部長。現在は日本で紹介された企業だけでなく、現地で探し出した企業とも取引をしているとのこと。「どれだけネットワークを築けるかが大事なポイントです。地道な活動で得た人脈により、香港の高級スーパーで大きな売り場を確保できたり、私たちが思ってもみなかったところでは、化粧品売り場にドリンクが置かれたりしています(笑)」(谷尻部長)。
▲「かつてから若い人や女性を積極的に起用してきた当社のエネルギーを、海外での事業展開にも活かしていきたい」と谷尻部長。
▲国の人事院国際課が行った人事行政セミナーに協力、発展途上国12ヶ国の研修者が同社を訪れた。
「世界のマーケット」を視野に、ニューヨークに拠点を開設
同社は、今年3月にニューヨーク(NY)で行われた「国際レストラン&フードサービスショー・オブ・ニューヨーク2012」にも参画。レストランを中心に、同社製品のプレゼンテーションを行いました。
世界中からの情報や人材の集積地であるNYに、オフィスを開設したのは2010年。その向こうにアメリカだけでなく、「世界」への拡販をも見据えてのことだと谷尻部長は語ります。「昨今は日本の外食産業やスーパー業界の海外進出が盛んです。当社も日本で作った製品を海外に輸出していますので、現地で一緒に頑張っていきたいですね」。
世界中でその土地特有のものが生産されている酢は、どの国でも馴染み深い調味料ですが、日本の米酢となると、どうしても"日本食"の枠から出ないとか。
一般家庭への普及の道のりは遠いと谷尻部長は話します。しかし、人口が多く購買力も大きなアジアへの期待は高まるばかり。
「今後は、その地域でどういったものが望まれているのかを吸い上げて商品化できれば」と抱負を語っています。
▲「あきらめない」の社風は、今も引き継がれている。
▲香港では、売り場の一角をタマノイ酢製品が占めるスーパーも登場。
タマノイ酢株式会社
代表者 | 代表取締役社長 播野 勤 |
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本社 | 堺市堺区車之町西1-1-32 |
TEL | 072-238-1021 |
設立 | 1907年創業 |
資本金 | 2億円 |
従業員数 | 300名 |
事業内容 | 醸造酢、粉末酢、各種調味料、レトルト食品および菓子・健康飲料などの製造・販売 |
ホームページ | http://www.tamanoi.co.jp/ |