インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
±0・3ミクロンという超精密金属加工が武器
コンピュータのハードディスク(HDD)用のモーター部品や自動車のエアバックシステム部品などの精密な金属加工を得意とする日本スーパー工業株式会社。なかでも、HDDスピンドルモーター用のハブについては、2・5インチHDDのハブで世界トップのシェア約40%を誇っています。HDD市場における揺るぎない地位を確立するまでの経緯を広瀬哲士取締役にうかがいました。
「以前はカメラやビデオの部品を加工していましたが、やがて注文は海外に流れてしまいました。そうしたなかで、HDDの製造に携わることになったのです。当初はHDDの容量も20~30GB(ギガバイト)と小さく、精度も今ほどシビアではありませんでしたが、その後、大容量化が進み、今では500GBも当たり前です。1台のHDDの中に数ミリ間隔でディスクが重ねられるようになり、ハブもわずかでもぶれてはいけない。高度な回転性能が必要となったのです。当社は±0・3ミクロンという精度の中で、真円に金属を加工する技術を磨いたのです」。
▲世界のトップシェアを誇る2.5インチHDD用ハブ
高精度高性能な製品を大量に安定供給
しかし、技術力が高いだけでは、世界トップシェアの生産力を維持することはできません。どれほど優秀でも数人の技術者の手に委ねるわけにはいかないのですから。世界トップシェアということは、そのまま供給責任が発生することです。
同社の強みは、高精度、高性能の製品を大量に、そして安定して供給し続けているところにあります。岡山工場内に設けられた工法開発部門では常に、製造プロセスや製造技法だけでなく、工具や加工機までを含めた研究開発が行われています。
そのために、得意先企業でモーターの設計が始まる段階から参画。部品の作り込みについて、開発から提案を行うといいます。また、製品の検品については抜き取り検査が一般的ですが、同社では1日70万個生産される製品の全てを、加工機が全品検品するように設計されているのだとか。そのあくなき高品質への追求が、得意先企業の高い信頼を獲得している理由でしょう。そして、それが世界トップシェアにつながる受注につながっているのです。
▲「社内で製造上の課題を検証し、解決する能力があります。つまり開発のスピード感が違う。それが我々の強みの一つだと思いますね」と泉北工場長をも務める広瀬取締役。
▲製造に必要な工具さえ自社で内製する。ラジアルエンドミル(左)とチャック(右)。
経営のリスク分散のために新たな事業の柱の開拓を
現在、同社では得意先企業の組立て工場に近いタイやフィリピンにも工場を置き、国内外4カ所の生産拠点を持っています。
「昨年のタイの洪水の時は、工場の機能はマヒしたのですが、フィリピンと日本からいち早く製品を供給することができました。図らずも生産拠点が分散していたことで、リスクも分散できたわけです」。
今後は同様に、経営におけるリスク分散として、売上げの大半をHDDに依存している現状から、新たな事業の柱の開拓が経営課題だと広瀬取締役。高精度高性能な製品を、大量に安定供給できる仕組みを築き上げた同社独自のノウハウが、新たな産業分野で花を咲かせることは遠い日ではないでしょう。
▲タイ工場
▲フィリピン工場
日本スーパー工業株式会社
代表者 | 代表取締役社長 広瀬憲三 |
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本社 | 堺市南区原山台5-12-1 |
TEL | 072-293-1666 |
設立 | 1961年創業 |
資本金 | 9,950万円 |
従業員数 | 270名 |
事業内容 | コンピューターハードディスク用モーター部品、エアバックシステム部品、アルミ冷間鍛造、特殊切削工具 |
ホームページ | http://www.nippon-super.jp/ |