インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
エネルギー環境分野で新しい事業の柱を
社名にある通り、創業時代の超硬合金から始まり、PCD(ダイヤモンド焼結体)へと「超硬」にこだわったものづくりで、業界をリードしてきた株式会社中村超硬。工作機械や産業機械の部品製造を基幹事業として大きく成長してきました。なかでも、携帯電話やパソコンなどの電子部品をプリント基板に実装するダイヤモンドノズルでは世界トップシェアを誇っています。
しかし、ITバブルの崩壊などを受けて、設備投資に依存するビジネスの不安定なことに危機感を抱いた井上誠社長は、これからの成長産業であるエネルギーや環境といった産業分野から、新たな事業の柱を築こうと考えました。そこで着目したのが、ダイヤモンドソーワイヤです。
太陽電池で使用するシリコンインゴットをウエハ状にスライスするためのダイヤモンドソーワイヤ自体はすでに市場にありましたが、高価なため普及していませんでした。同社がダイヤモンドソーワイヤの低価格を実現する製造法の研究開発に着手したのが、今から8年前のことです。
▲3年という歳月をかけて、極細のワイヤにミクロンレベルの ダイヤモンドの粒を高速で固定させるのに成功。
高性能で低価格のダイヤモンドソーワイヤを開発
必ず答えがあるという確信を得られないままの開発でしたが、大学の協力も得て、同社は髪の毛よりも細いワイヤに、ミクロン大のダイヤモンドパウダーを従来技術よりも高速で固定化させることに成功。しかもダイヤモンドの保持力も高めて長寿命化も実現しました。ついに高性能で低価格のダイヤモンドソーワイヤを作り出したのです。
しかし同社はすぐにそれを単体で売り出さず、まず自社内でダイヤモンドソーワイヤを使ったスライス加工事業を立ち上げたのです。井上社長は「後発参入ということもあり、まず自社で性能を実証しようと考えました。それに弊社の強みは、お客様のものづくりにおける課題を解決するための工具や製法をパッケージで開発し、ご提案するソリューション型ビジネスです。ソーワイヤとそれをとりまく周辺技術とを抱き合わせてアピールすることにしました」と語っています。
▲昨年の「第4回ものづくり日本大賞」で経済産業大臣賞を受賞した井上社長。今は株式公開という新たなチャレンジに向けて準備中だと語る。
世界のオンリーワンとして独自のビジネスモデルを展開
現在は、業界全体の技術革新に寄与すべくダイヤモンドソーワイヤの販売を始めていますが、それでもソーワイヤの製造・販売と、そのコストパフォーマンスの高さを活かした量産スライス加工の両事業をリンクさせた同社の「クローズドループ開発体制」は、世界に類のないオンリーワンビジネスモデルとして注目されています。
「リーマンショックなどにより、家電業界も落ち込み、当社も打撃を受けましたが、そのさなかにソーワイヤ事業のための新工場D-Next の建設を決意しました。それは大きな経営判断でしたが、半年後には黒字化しています。そうしたチャレンジ精神が大切だと思いますね。国内の需要が落ち込むのなら、海外にマーケットを求めればいい。堺のものづくり企業にはそれだけのポテンシャルがあると信じています」(井上社長)。
▲ワイヤにダイヤモンドの粒子を固定することにより、さまざまな課題を解決。
太陽光パネルやLEDといった産業分野での活躍が期待される。
株式会社中村超硬
代表者 | 代表取締役社長 井上誠 |
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本社 | 堺市西区鶴田町27-27 |
TEL | 072-274-0007(代) |
設立 | 1954年創業 1970年設立 |
資本金 | 13億187万5千円 |
従業員数 | 164名 |
事業内容 | 特殊精密部品の設計・製造・販売、切削冶工具の設計・製造・販売、ダイヤモンドソーワイヤの製造・販売、電子材料のスライス加工 |
ホームページ | http://www.nakamura-gp.co.jp/ |