インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
少ロットでも高付加価値なものづくりを
工場内に大きく広げられたシート。ユニット住宅をそのまま、すっぽりと覆う特殊カバーです。雨がかかっても自然と下に流れるよう、トップがドーム型に工夫されており、その開発は2年がかりだったとか。得意先企業の住宅メーカーと共同で特許も取得しています。
シート地を使った防泥・防水シートや製品を保護するための包資材を製造・販売する(株)東野朝商店では、製品は全てフルオーダーメイド生産。たとえ注文数が1つや2つでも引き受けると、東野景一社長は語ります。
「弊社では早くから海外との価格競争に陥る大量生産型に見切りをつけ、少ロットでも高付加価値な製品づくりにこだわってきました。どこでも作れるものではなく、お客様の『こんなものがあれば』というニーズに確実に応える、弊社独自の発想やものづくりを大切に考えています」。
▲災害時にベッドにも担架にもなる防災用簡易ベッド。平常時はコンパクトに収納できる省スペース型。
被災地で少しでも快適な睡眠をという発想から
そうした東野社長のもとで生まれた「HAS 防災用簡易ベッド」はもともと、アウトドア用品として開発中のものでした。東日本大震災がおこり、テレビ画面に映し出されるのは、避難所で床に直接横たわっている被災者の姿や、役場で机などをベッド代わりに泊まり込んで対応に追われている自治体の職員たちの姿です。東野社長は「固い床の上ではさぞ、寝心地が悪いだろうし、床から舞い上がる埃を吸って身体にも良くないと思いました。そこで開発中だったアウトドア用ベッドを、非常時にも使える防災用簡易ベッドに転用できないかと考えたのです」と語っています。素材には、建設現場で使われる落下物防止用高強度メッシュ素材を採用。高い耐久性を確保しました。また、平常時に防災用品として備蓄してもかさばらないよう、コンパクトに折り畳んで収納できるようになっていますが、いざという時には誰もが簡単に組み立てられることを重視して設計されています。担架としても使え、さらには階段室などの狭いところでも運び出しやすいよう、両サイドのパイプは抜けるようにもなっています。こうしたさまざまな工夫が評価され、「HAS 防災要簡易ベッド」は、関西広域連合の「防災関連新商品」に認定され、すでに自治体への納入実績もあります。
▲「当社の強みは、高い安全性と信頼性を確保する品質と、徹底したアフターサービスにある」と語る信貴鴻一社長。
▲ハウスメーカーの工場で生産されるユニット住宅用の養生カバー。
独自性を発揮できる川上からのものづくりを
「お客様の『困った』を解決してきたという自負はあるものの、メーカーとしては川上からのものづくりをしたいと考えていました。奇しくも防災用簡易ベッドがその第1号となったわけです。こうした自社ブランド製品づくりにおいて重視したのが『デザイン』で、この防災用簡易ベッドもアウトドア用として開発中の時から、堺市産業振興センターの「堺発オリジナル商品魅力アップ支援事業」を活用しました。中小のものづくり企業では手薄な領域なだけに、こうした公的な支援をうまく利用していきたいですね」と話す東野社長。防災用簡易ベッドでは、防災服をイメージしたグレーに赤をきかせたカラーリングにすることで、一見して防災用品であることがわかるように意図しています。
現在は、地震だけでなく洪水による浸水などから大切なデータの入ったパソコンやハードディスクなどを守るための完全防水バッグなどを実用化していきたいと考えているとか。今後もますます重要性の増す「防災」に、同社の柔軟な発想力が活かされることが期待されます。
株式会社東野朝商店
代表者 | 代表取締役 東野景一 |
---|---|
本社 | 堺市北区百舌鳥梅北町5-410 |
TEL | 072-252-0255(代) |
設立 | 1927年創業 1967年設立 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 25名 |
事業内容 | 建築包資材、ユニット住宅カバー、保冷BOX、各種テント、固定ベルト防水、防塵シートなどの製造・販売 |
ホームページ | http://higashinoasa.com/ |