インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
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オリジナルのものづくりが本場ヨーロッパでも高評価
地金商として1902年の創業以来、110年余りの歴史を誇る向陽技研株式会社は現在、一般家庭用やオフィス用のリクライニングや昇降、回転の金具の開発・製造を行っています。なかでも座椅子のリクライニング金具では国内のトップシェアを獲得。また、インテリアパーツの先進国・ドイツの「2001年インターツム国際家具産業・木材加工見本市」で、アジア企業として初のハイクオリティ賞を受賞するなど、家具づくりで歴史あるヨーロッパにおいても高い評価を得ています。今では、売上げの約70%は海外からだとか。
同社の成長の理由について山下雅伸社長は、「どこにでもあるものなら、日本から取り寄せる必要はないわけで、機能性、品質、コストパフォーマンスにおいて優位性を発揮するオリジナリティにこだわったものづくりが評価されてこそ」と語っています。
そして、そのものづくりを支えるのが「人」だと山下社長は明言します。
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▲脚の高さを自在に調整できる「テーブル昇降脚」。
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▲名門スタンフォード大学の研究室から会議室、食堂など863台のテーブルで採用された「テーブル昇降脚」。シリコンバレーにある大学らしくスタイリッシュなデザインと機能が評価された。
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▲「強度」と「コンパクト」の両方を高レベルで実現させたリクライニング用ギアなど、同社のパーツは国内外で高い評価を得ている。
採用で最も重視するのは、人間として基本的なこと
向陽技研では、一体感のある社風を構築するために新卒者の採用にこだわると山下社長は語っています。
「海外展開している当社としては、語学が堪能であることや留学経験があることも優遇すべき点ですが、それよりも重視しているのは『素直』『礼儀』『挨拶』『思いやり』といった小学生並みの価値観です。そのうえで、当社の経営理念や価値観に共感してくださる方を採用し、現場のことはゼロから教えるほうが『急がば回れ』で結局、定着率も上がりますし、一体感のある組織づくりにつながっています」。
このような山下社長の思いを受けて行われているのが、新人研修の「ナギサミーティング」。二泊三日の宿泊研修で、夜は地ビールを飲みながら、社長が会社へ思いなどを語るのだとか。昨春入社した千本都代さんも「もともと、人をとても大切にする会社だということで入社しましたが、この研修で社長を身近に感じましたし、入社1〜2年目の社員も積極的に発言していいんだと思いました」と話しています。
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▲「女性ならではの感性、視点を活かした高付加価値なものづくりをめざして、今後は女性社員の比率を高めていきたい」と山下雅伸社長。
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▲ものづくりに関心があったことが同社への入社志望動機だったという千本都代さん。事故で休職した時に社員の方々の温かさを実感したと語る。
一人ひとりの競争力の高い全員参加型経営をめざして
さらに同社の新人研修でユニークなのが、意外なきっかけで始まった中国研修です。
「リーマンショックで本社の仕事量が減った時に、新入社員を中国工場に応援に行かせたところ、驚くような高い教育効果があったのです。中国の現地社員と同じ宿舎で暮らし、同じ仕事をさせられたので、最初は不満だったようですが、やがて自分たちより安い給料で何倍もの作業をこなす現地社員たちを見て、『なぜ今日、日本のものづくりが海外に出ていくのか』を肌身で感じ、今後、日本人としてどういう仕事をしていくべきなのかを自ら考えることになったようです」と山下社長は語っています。
「組織は風通しが良くなければ」と、同社では年度ごとの品質方針スローガンも社員全員で決め、また「感動推進委員会」では社員全員の投票による表彰制度も設けています。また機会あるごとに、山下社長も会社の進むべき方向性についてオープンに語っているのだとか。こうしたことが人材の定着率を、そして社員一人ひとりの競争力を高めていると山下社長。それが組織としての強さとなり、他社の追随を許さない、同社の高い優位性を実現しているようです。
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▲毎年5月、2泊3日で行われる
「ナギサミーティング」。
向陽技研株式会社
代表者 | 代表取締役社長 山下雅伸 |
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本社 | 堺市西区草部1214 |
TEL | 072-275-1300(代) |
設立 | 1902年創業 1961年設立 |
資本金 | 6,000万円 |
従業員数 | 60名(中国工場130名) |
事業内容 | 家具・オフィス業界向けリクライニング、昇降、回転金具の開発・製造 |
ホームページ | http://www.koyogear.com/ |