インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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メッキ業からITの世界へ 株式会社デジタルシステム 大曲 伸一 社長

IT業界ならではの新しい働き方も実践

創業当時、アルバイト生だったスタッフは、山梨で牧場を経営したり、神戸でワインバーを営みながら、今も同社の開発に携わり、IT業界ならではの新しい働き方を実践している。2009年には、「CADMAC」に精通した人材を集約し、ユーザーのサポートやソフトウエアの開発支援を行う(株)CADMACSYSTEMを設立。

会社員時代に培った知識やスキルが新事業への布石に

ITという言葉すらなかった1985年に、板金加工に特化したCAD/CAMソフトウエアを開発する(株)デジタルシステムを設立した大曲伸一社長。その4年後に、自身が継ぐはずだった家業のメッキ業を廃業しました。ものづくり企業から、ものづくりをサポートする企業への転換。その布石は期せずして、大学卒業後に入社した大手電機メーカー時代に打たれていたようです。
「会社員時代はメッキ部門から原子力プラントの監視システム、さらには電子機器組み立てで技能オリンピックに出場する社員のサポートなど多種多様な部門に関わったことから、多くの人脈と知識を得ることができました。また、創成期のマイコンに関心を持ち、自ら志願してマイコン技術者育成プロジェクトに参加したほか、板金工場のリニューアルプロジェクトにも関わり、そこで板金の知識を蓄積しました。これらが全て、今につながっているといえますね」と大曲社長は語っています。


家業の経営合理化のためのシステム開発が発端に

ところで、1959年に創業した先代のメッキ業の業績が決して悪かったわけではありません。硬質クロームメッキを専業とし、新幹線の軸受け部のメッキは開発当時から参加したほど、高く評価されていたのです。しかし一方で、大曲社長は家業を手伝いながら、前時代的な経営管理に疑問を持っていました。例えば、口頭でやりとりしていた作業進捗の確認。そこで退職金で買ったマイコンを使い、ライトペンで簡単に操作できる独自の工程進捗管理システムを作ったほか、当時発売されたばかりの漢字ドットプリンターで納品伝票を発行するようにしたところ、それを見た取引先企業から生産管理や事務処理のシステム開発を依頼されるようになったということです。
「その後、若手技術者たちを対象にマイコンの勉強会を開き、その中に板金加工業の経営者がいたことから、板金用CAD/CAMに参入するメーカーが少なく、またソフトウエアにも課題があることがわかりました。当社のような弱小企業でも勝機はあると考えたのです」。
しばらくはメッキ業とソフトウエアの開発の二足のわらじを履いていた大曲社長ですが、身体を壊したのをきっかけに、メッキ業の廃業を決意しました。先代には、従業員たちの再就職先を確保することを条件に了承されたということです。新幹線の軸受け部にしぼって従業員と設備の引受け手を探したところ、大曲社長による合理化ですでに収益力を高めていたこともあり、すぐに引受先も見つかりました。莫大な費用をかけて工場跡地の土壌を浄化したのち、デジタルシステムは本格的なスタートを切ることになったのです。


板金加工を知り尽くしたCAD/CAMの性能に高評価

1985年に発売を開始した板金用3D‐CAD「CADMACシリーズ」。その特性は、画面上の理論的なデータでなく、実際の板金に即して板厚を持った平面の組み合わせで三次元を表現していることや、加工する板金の縦横比が一般に1対2であることから、設計画面も同じ1対2にしてシート全体が効率よく見渡せるように工夫するなど、板金加工を知り尽くした同社ならではのスペックを豊富に備えていることです。
今ではシェア約30%、2400社ほどの顧客数を誇っていますが、開業当時はコンピュータが非常に高価で、販売するマシンを使って開発し納品という自転車操業だったと振り返る大曲社長。「開発したシステムが売れなければ、すぐに資金不足に陥る不安が常にありました」。
しかし、大変だった人材の確保については、大曲社長の実弟である大曲啓介常務が大手鉄鋼メーカーを退職して加わったことと、当時は珍しかったソフトウエア開発に携われるということで、国立大の優秀な現役生たちがほぼボランティアで手伝ってくれたといいます。
これからのデジタルシステムについて、大曲一聡さんは「創業から今年で丸30年。お得意先でも世代交代の時期を迎えています。同じ世代の人間である私には、次代の若き経営者たちをサポートする新しい発想や販売方法、つまり"板金ソリューション"をご提案する役割があるのではと考えています」と語っていました。


▲デジタルシステムの看板商品「CADMAC-NEX」。
全て自社内開発なので、加工機メーカーを選ばず、ユーザーニーズにも迅速に対応できるのが強み。

異分野からの参入だったからこそ独自のソフトウエア開発に成功

ソフトウエア開発といえば、ITに関するテクニカルが先行しがちだが、大曲社長はソフトウエア、特にCAD/CAMの開発については新規参入だったために、既存の概念や手法に全くとらわれず、ただ板金加工のしやすさを追求したことが、今の成功につながったと考えている。

株式会社デジタルシステム

代表者 代表取締役 大曲 伸一
本社 堺市堺区南三国ヶ丘町 6-3-8-2
TEL 072-238-5402
設立 1985年創業
資本金 1,000万円
従業員数 11名
事業内容 コンピュータシステムの開発
ホームページ http://www.cadmac.co.jp/

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