インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
あなご加工専門店としての目利き、加工技術を強みに
ふわっとした身に、噛むほどにコクのある旨味。「あなごがこれほどおいしいものだったとは」松井泉の焼あなごをひと口、口にした時の率直な感想です。「焼あなごは硬いというイメージがあるようですが、そんなことは全くないでしょう?」と松井利行社長が誇らしげに語りかけます。
かつてあなごの延縄漁(はえなわりょう)が盛んだった堺近海では、美食家で知られる北大路魯山人も絶賛したあなごが多く水揚げされ、それを独自の技術で加工し、大阪の中央卸売市場や料理屋、寿司屋に卸す"堺もん"と呼ばれるあなご屋が軒を並べていました。松井泉もそうした"堺もん"の一軒で、昭和43年の創業からずっと、あなごの加工に携わっています。
「さすがに最近は、堺近海で安定してあなごは揚がらず、長崎県の対馬や韓国から仕入れていますが、あなごの加工で重要なのは、産地よりも目利きなんです」と松井社長。あなごの脂ののりと鮮度、それによってどのように調理するか、それらを見極める目、そしてあなご独特の捌き、さらには丁寧な下処理こそが、"堺もん"として培われた技だといいます。堺近海からあなごが消えた今も、関西一円の高級割烹店や寿司店が堺の松井泉に卸を委ねる理由は、そこにありました。
卸から小売りへ松井泉のブランドづくり
松井泉がプロ向け専門卸から小売りに目を向けたのは、13年前に経営を引き継いだ松井社長が時代の変化を見据えてのことです。
「回転寿司が台頭し、日本料理店はファミリーレストランに取って代わられ、町の魚屋がスーパーに押される時代になっていました。卸だけを営むことに危機感を持ったのです」(松井社長)。一方で、自社のあなごに絶大な自信がありました。「食べてもらえば、必ずわかる」とたびたび松井社長が口にするように、あなごの旨さを広く知ってもらいたいという思いから、百貨店での試食販売を皮切りに、ギフト用商品の開発、本社前のあなご小屋の開設、さらには髙島屋泉北店にイートインを併設した直営店を開業するなど、"松井泉"の看板を掲げて、一般の方々との接点を広げてきたのです。
「丼用に当社オリジナルのたれをサービスするなど、家庭での楽しみ方の提案も含めて、さまざまな場や機会を通して当社のあなごをアピールしてきました。ご家族三世代が『おいしい』と召し上がってくださったり、リピート購入してくださったりすると、本当に嬉しいですね。」と松井社長。めざすのは、松井泉のブランド化です。
あなごマップやファンドなど「堺あなご」の浸透をめざして
"松井泉のあなご"を広く知らしめるために、これまでさまざまな取り組みを行ってきた松井社長。「堺名物あなご」の復活を目指してあなごを食べられるお店を一堂に紹介した「堺あなごMAP」もその一つです。あなごを使ったレシピを松井泉から積極的に提案、採用いただいた店もあるとか。焼あなごを入れた明石焼風の「堺焼」は、たこ焼きで有名な元祖たこ昌とのコラボレーション商品。生地の量とあなごの大きさ、そして味付けが絶妙なバランスです。
昨年から今春にかけて投資者を募った「堺名物あなごファンド」については、「資金集めというよりは、出資いただくことで応援団になっていただくことがねらいでした。メディアにも取り上げられ、高いPR効果も得られましたしね」と松井社長。こうしたファンづくり、ブランドづくりは、社員の意識向上にも結びついているそうです。
現在は、あなご100%の「あなごの粉」を利用して、ふりかけやお菓子などの商品を開発中。「堺のお土産として購入いただければと考えています。堺といえばあなご、そして松井泉と一緒にアピールできればいいですね」と松井社長は語っています。
▲松井泉のオリジナル商品の「焼あなご」「煮込あなご」等は、にぎり寿司や丼、焼あなごそば等として、髙島屋泉北店のイートインで楽しめる。
さまざまな出会いやつながりが新しい"松井泉"を創りだしていく
『堺焼』誕生のきっかけは、松井泉も一緒にレシピ開発したシティホテル「青雲荘」のあなご膳の試食会で、元祖たこ昌の社長と出会ったことだったとか。「今、ふりかけやお菓子の開発を手伝っていただいている広島の企業とのご縁もそうですが、こうした出会い、つながりが新しいアイデア、事業につながっています」と松井社長は語る。
株式会社松井泉
代表者 | 代表取締役社長 松井利行 |
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本社 | 堺市堺区楠町3-1-26 |
TEL | 072-245-1779 |
設立 | 1968年設立 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 35名 |
事業内容 | あなご加工販売 |
ホームページ | http://matsuiizumi.co.jp/ |