インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
高齢者の食事にレトルトパウチが大活躍
見れば誰もが知っている大手飲料メーカーや食品メーカーの製品パッケージを多く手がける日新シール工業。「私たちが手がけた商品をテレビCMやコンビニ、スーパーなどで見ることは、社員にとっても誇りであり、喜びですね」と堀川昇社長。しかし、こうした食品業界の大量生産型製品の市場は競合も多く、経営的発展のためには、これまでに培ってきた高度な技術を新たなステージで活かしたいと堀川社長は語ります。
「少子高齢化の影響で、消費期限の延長や個食化が進むことが予想されているなか、ムダなく安全に食品を消費者に届けるために、パッケージに期待される役割は大きいと考えています。例えば個食化でいえば、レトルト食品用パウチです。まるで単身赴任のお父さんの味方のように思われていたレトルト食品も、中身のバリエーションが豊富になって、今では地方の高齢者世帯でよく売れているのです。弊社で最近、力を入れているのが、老人福祉施設向けの食事ですね。中小の施設では、施設内で食事作りに対応できないところもあり、セントラルキッチンで作ったものを配食するケースが増えています。そうした食事を安全に管理するためにレトルトパウチが利用されています」(堀川社長)。
お得意先の課題を受け企画提案から加工、製造まで
そうしたパウチについて、日新シール工業の製品では、納品した先の現場での安全性にまで配慮されていることに驚かされました。開発に携わった中野勝己技術開発部長によれば「福祉施設では慢性的な人手不足が問題になっており、慌ただしい現場では、パッケージの開封にもさまざまな危険が潜んでいます。弊社ではそうしたリスクをできる限り排除しようと、まずハサミを使わずに開封できるようにしました。次に、開封後の切れ端が食事に混入しないよう、大きな切れ端にするか、または最後まで切ってしまわないようにしています」とのこと。
こうした細やかな工夫ができるのは、得意先と丁寧にヒアリングを重ね課題を聞き取った上で、製品の形状や材質、デザインなどを提案、それを自社で加工、製造までを行う一貫体制を備えている日新シール工業だからこそ。
「大企業ではないけれど将来性のある会社が、当社にとってのターゲットですね。課題を抱えていらっしゃるからこそ、当社の存在価値があるわけです。特に医療・福祉分野で我々の技術が貢献できていることは、社会的にも意義があり、社員のモチベーションアップにつながっています」と堀川社長は話しています。
環境や貧困地域の問題にも貢献できるパッケージの可能性
「食」に関わる企業としては、徹底した安全管理が求められます。日新シール工業でも、どのような小さな異物も混入させないよう工場の衛生管理を徹底しているほか、カメラを設置したり、帳票類のチェックで仕様間違いや異品種混入の防止に努めたりしています。しかし、一昨年に、冷凍食品工場の農薬混入事件が大きなニュースになりました。同社では独自の「性格テスト」を実施するなど、社員の採用時にも細心の注意を払っているということでした。
パッケージをとりまく市場環境については、「地球環境への配慮から過剰包装にならないよう、最少限の材料で十分な機能を果たす製品の開発に注力している」と中野部長。例えば、その一つがシャンプーの詰め替え商品などで見られる軟包装材に自社オリジナルのスパウト(注ぎ口)を付けることで、詰め替えなくてもそのまま使える新開発のスタンディングパウチです。
今日、海外の貧困地域で食糧不足が取り沙汰されるなか、食品の長期保存を可能とするラミネートパッケージの開発などで社会貢献できればと堀川社長。パッケージにこれほど大きなポテンシャルがあるのかと驚かされるばかりです。
▲超強力な両面テープの出し入れがしやすいよう内側に特殊なコーティングを施したパッケージなど、高い競争力を持つ製品が多い。
「日新シール工業」を設立して35年、人脈を大切にビジネスの輪を広げて。
23歳という若さで代表取締役に就任し、「日新シール工業株式会社」として法人を設立。この7月で35年の節目を迎えた。見つめているのは時代の少し先。世の中に今、どのようなニーズがあるのか。それに応える技術を積み重ね、独自の存在感を輝かせているようだ。業界でも大きな信任を得て、全国グラビア協同組合連合会の副理事長であり、関西グラビア協同組合の理事長を務める。
ひとつのテーマでこれほど世界が広がるのはやはり、私たちの暮らしのなかで最重要な「食」だからでしょう。飽食の時代と言われて久しい今日、「より本物を、より安全なものを」と消費者の意識も高まっているなか、個々の企業の努力によって、私たちの食生活がますます豊かになっていることを実感しました。
日新シール工業株式会社
代表者 | 代表取締役社長 堀川 昇 |
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本社 | 堺市美原区木材通4-2-11 |
TEL | 072-362-5593 |
設立 | 1930年創業 1981年設立 |
資本金 | 28,300万円 |
従業員数 | 196名 |
事業内容 | パッケージの開発・製造・販売 |
ホームページ | http://www.nissinseal.co.jp/ |