インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
地域のつながりから若い人たちを積極的に採用
どろどろと真っ赤に熱せられた金属を次々と型に流し込んでいく若い職人たち。工場内に活気がみなぎっています。聞けば、不二合金株式会社の従業員の約半数が20代。ユニークなのは、同じ中学校の先輩後輩や祭りなどの地域コミュニティのつながりで入社した社員が多いということです。ものづくりに興味があれば、まずは見習いから仕事に就いてもらうとのこと。
遠藤和男社長は「未経験でも若い人たちを積極的に採用する理由は、他社で経験を積んだ職人さんは、どうしても自分のやり方に固執しがちで、当社のやり方と馴染まず苦労したことがあるからです。一から教えるのは大変ですが、どんどん吸収してくれる人を育てる方が、長い目で見ても会社にプラスだと考えています」と話しています。
同社は銅合金にこだわった鋳物の製造で、今年、創業百周年を迎えました。戦後、大阪府下に200社以上はあったとされる同業者が次々と廃業し、今では20社ほどだとか。そうしたなかで、同社が百年もの歴史を刻むことができたのは、技術的に難しい銅とアルミニウムの合金に1960年から取り組み、他社がなかなか真似のできないノウハウを培ってきたからにほかなりません。
遠藤社長は、そうした同社独自の技術を若い世代につないでいきたいと語っています。
自分たちで考え動くことで仕事に面白みとやりがいを
鋳物製造の全行程を設計する「鋳物方案」を任せられるようになるまでには10年はかかると語るのは、遠藤篤志工場長です。入社して最初の仕事は、型から外した製品をきれいに仕上げるための研磨作業。そのなかで工具の使い方や、次の工程のことを考えながら作業をしているかといったことを見極め、本人の適正に応じた配属を決めるのだとか。
鋳物の製造は何と言っても、鋳型づくりが要であり、型の厚みや流し込み口の大きさひとつで、鋳物の品質を大きく左右します。その日の湿度や気温によっても出来上がりが違い、全く気の抜けるところがないと遠藤社長。経験がものを言うからこそ、つい若手の職人に対して具体的な指示を出してしまいがちでした。
しかし、それでは若い人は育たないと考えたのは、次代の不二合金を担う遠藤工場長と遠藤恵士さんです。「入社前に勤めていた会社で、一番つまらなかったのは、上司から一方的に指示される"やらされ仕事"でした。自分で考えて行動するということが、本人のやりがいにもなると思いますね」と恵士さん。遠藤工場長も「注文が来たら、みんなでどう型を作るか意見を出し合います。僕の意見は敢えて言わず、ただ聞くだけ。彼らが自分たちで考えたように型を作ることが、仕事の面白さにつながりますし、そうした経験の積み重ねで技術が上がるわけですから。なかには、人が失敗した型も観察し、その原因が何なのかを質問をしてくる職人もいますね」と語っています。
次代の経営陣が期待の職人たちを育てる
仕事の面白さがわかるまでに離職する若い人が増えているとされるなか、"型作りで一通りのことができるようになるまでの3年"という壁をどう越えさせているのか、遠藤工場長にうかがいました。
「当社は少量多品種の製品づくりなので飽きにくく、また自分たちの仕事の結果がすぐに見えるので面白みを覚えるんだと思いますね。たとえ、作業の途中で間違いに気づいても、頭ごなしに指摘するのではなく、『これで大丈夫か?』『合っているのか?』と問いかけることで、自分で考え気づくようにしています。そして、不良品が出た時は時間を置かず、その場で何がいけなかったのかを指導しています」と話しています。
最近、若い職人たちが『今月は射込み回数50回をめざそう』と日々の生産量や生産効率を意識したことを発言するようになってくれたのが嬉しいと遠藤工場長。「今後も若い人の採用を継続し、職人の世代を偏らせないことが、安定的な技術の継承、ひいては企業の発展に重要だ」と遠藤社長と工場長が口を揃えて語っていました。
「これからの会社を担うのは、若い息子たちと職人たちです。彼らのやり方に任せたい」と遠藤社長から委ねられた二人の人材育成法が、冒頭で紹介したような若い人たちの熱気につながっているのでしょう。
▲同社が早くから取り組んできたアルミニウム青銅鋳物の品質の確かさには定評がある。
先人たちの鋳物技術を引き継ぎ、次代へ渡すことが責任
「多くの職人が長年に育ててきた技術が、同業者の廃業などで途絶えることに危機感を抱く」と遠藤社長。「同社に、そうした熟練技術者が再就職し、活躍している。一方、若い人の採用にあたり見習い期間が1ヶ月と短めなのは、本人の未来を大切に思うからこそ。どうしても、ものづくりに向かない人もいます。今日、多様な職種がありますから、 1日でも早く適職を見つけてほしいと思いますね。」と語っています。
不二合金株式会社
代表者名 | 代表取締役 遠藤和男 |
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本社 | 堺市西区浜寺船尾町東1-5 |
TEL | 072-262-9440(代) |
設立 | 1916年創業 1953年設立 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 10名 |
事業内容 | 鋳物製造・販売 |
ホームページ | http://www.fujigokin.com/ |