インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
鉄道好きが高じてミニSLで母校や地域に貢献
約12㎝幅の線路の上を実際に走るミニ蒸気機関車。実物の約8分の1というサイズですが、動力は本物と同じく、石炭を燃料におこした蒸気です。煙を出して走る姿に子どもたちだけでなく、大人も目を輝かせて客車に乗る姿が、イベント開催の一日中、絶えることがないとか。運転士は、株式会社ダイキファインの喜代田洋志社長です。「もともと子どもの頃から鉄道が好きで模型を収集していましたが、鉄道模型の展示会でライブスチームと呼ばれる小型乗用模型蒸気機関車を見て、力強く走る姿はもちろん、大きな汽笛の音や金属のきしむ音など、五感を刺激するミニSLにとても惹かれました。そして、これだ!と思ったんです」。
以前より自身の母校であり、お子様たちも通う学校法人賢明学院(堺区霞ケ丘町)に、卒業生として何か貢献できることはないかと模索していた喜代田社長。このミニSLを、学院のイベントなどで力工場のネットワークを構築。現在役立てたいと考えました。キットを購入し組み立ててから運転技術の習熟までに約2年を要しましたが、今では学院のイベントなどで大活躍しているとのこと。賢明学院学院広報室の大澤英樹さんは「卒業生や元保護者の方々がいつまでも学院を大切に思い、さまざまな形で支援してくださるのには頭が下がります。なかでも喜代田社長のミニSLは、在園生だけでなく、地域の子どもたちにも広く園庭を開放する日の大変な人気者です」と語っています。
地域との関わりを大切にまずは足元での活動を
ダイキファインは、自社独自の精密化学品を製造するほか、医薬品メーカーや化学メーカーからの受託研究や受託合成を行う化学メーカーです。設立時は何もなかった本社周辺も今では住宅が建て込み、化学薬品の実験・製造がしづらくなったため、現在は研究や試作を行う事業所を兵庫県三木市と神戸市西区の2カ所に移しています。
「本来なら本社も兵庫県に移したほうが利便性はいいのですが、堺市は当社の創業の地であり、また私が生まれ育った町です。企業はその規模に関係なく、地域との関わりを大切にすべきだと思っていますので、地元の堺市で何か貢献したいと考えていました。ミニSLを走らせることで、多くの人が喜んでくれることが、とても嬉しいですね」(喜代田社長)。
今ではミニSLだけでなく、ミニ新幹線も加え、延長100mの線路や燃料の石炭とともに運搬するためのバンも購入。最近では乗客数が千人を超えることもあり、近所の若い経営者仲間に手伝ってもらっているということでした。
自社の強みを活かして無理をしないことがポイント
「この蒸気機関車はキットを自分で組み立てるので、一つひとつの部品がどのような役割を果たしているのかを理解しながら製作しないと動きません。だから、万一故障した時も自分で修理ができるんですね。その製作過程を子どもたちが見学した時は、目を輝かせて見入っていました。紙で電車を作らせても、とても楽しそうです。最近の子どもはプラモデルですら組み立てることがないといいますが、機会を作れば、自分の手でだんだん形になっていく楽しさや喜びを感じています。私はミニSLを通して、ものづくりの魅力も次世代に伝えたいですね」と喜代田社長。
中小企業のCSRについては「企業はまず利益を出して納税することこそが社会貢献の基本だと考えます。そのうえで強制されるのではなく、自分の内から『こうしてあげたい!』と思えることに取り組めばいいのではないでしょうか。私の場合はそれがSLだったということです。また、自社の得意とするところから始めてもいいですよね。被災地向けにベッドキットを作られた段ボールメーカーもありました。そのまま新事業に結びつくかもしれません。中小企業のCSRは無理をしないこと。それが継続するポイントであり、継続しないCSRは意味がないと考えます」と語られました。
事業に密接に関わったCSRを実施しているホウユウ(株)や中尾食品工業(株)はもちろん、一見事業と関わりがないように思える(株)ダイキファインでも、「石炭に詳しくなったため、ある鉄鋼メーカーから石炭関係の実験を全て発注されることになった」と喜代田社長が語っています。自社の強みを活かしたCSRは、新たなビジネスチャンスを創出する可能性をも秘めているようです。
ミニSLのおかげで、人の縁が広がり、人生も豊かに
「ライブスチーマーと呼ばれるミニ SL愛好家たちの集まりが年に一度あり、夜は大宴会となります。運転技術の向上のためや、予定していたイベントに参加できなくなる緊急時にはお互いに協力し合う関係が築かれており、プライベートでこうした仲間を得られたことで人生が豊かになりました」と喜代田社長。最近は、幻の鉄道といわれる五新鉄道跡(奈良県五條市)の活用支援にも携わっています。
株式会社ダイキファイン
代表者名 | 代表取締役 喜代田 洋志 |
---|---|
本社 | 堺市中区深阪2-10-14 |
TEL | 072-237-1302 |
設立 | 1962年創立 1985年設立 |
資本金 | 3,000万円 |
従業員数 | 6名 |
事業内容 | 精密化学品の研究開発、製造、少量試作、受託合成、受託研究、国内外での販売 |
ホームページ | http://www.daikifinechemical.co.jp/ |