インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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「Tロックギア」で医療分野へ 向陽エンジニアリング株式会社 代表取締役 山下 直伸

「Tロックギア」の高い信頼性で医療・福祉分野へアプローチ

 「日本で、日本のものづくりをしたい」という強い思いを持ち、向陽技研株式会社から独立する形で第二創業を図ったのは、向陽エンジニアリング株式会社の山下直伸社長です。専務を務めていた向陽技研では、技術者としてソファや座椅子のリクライニングや回転の機構パーツを開発・設計していました。
 「リクライニングの機構を備えた高級ソファはヨーロッパでの需要が高く、向陽技研の製品の約8.9割をドイツやイタリアなどの海外に輸出していました。成熟した事業領域で、もはやパーツも進化しようがなく、何か新しいことに挑戦したくなったんです」と山下社長。
 山下社長自らが開発したくさび原理を用いたロック機構は、中のツメをくさびにして強度を高めたもので、金具の小型軽量化に成功。ひいてはコストダウンにつながり、量産化しやすいというメリットを備えたものでした。
 さらに片方にしかロックのかからない従来のラチェット機構と異なり、両方にロックがかかるためガタが少なく誤動作もしません。関節を確実に留めるこのTロックギアを活かせるのは何かと考えた時に、山下社長は高い信頼性の要求される医療や福祉機器にこそ用途が広がるのではという思いに至ったといいます。


初訪問のわずか9ヶ月後、デンタルチェアの新モデルに搭載

 医療・福祉機器メーカーをターゲットに定め、飛込みで営業に回るなか、山下社長は歯科用ユニット・チェアなどの製造・販売する企業で、運命的ともいえる一人の技術者と出会いました。デンタルチェアの新製品を開発中で、まさにヘッドレストのパーツ機構で試行錯誤をされているところだったとか。
 「初めて訪問した日に、すぐに紹介され、Tロックギアに興味を持っていただけましたが、新製品の発表が9ヶ月後に迫っていて、今回は無理かということになりました。しかし後日に、『今からでも間に合うのなら採用する』という判断をいただき、私も『寝ないでやります』と答えました(笑)」。
 初訪問が2015年10月。そこから設計を詰めて、翌年4月に金型を発注。6月に量産品を納めて、7月の「日本デンタルショー2016東京」での発表に間に合わせました。ガタの全くない、静かで滑らかな動きのヘッドレストの実現に高評価を得て、今後その他の商品への展開も期待されるところです。
 「強度確認などのテスト検証で、一度でもエラーが出ていたら間に合わなかったところです。並行して代替技術の開発も進められていたので、本当にプレッシャーでした」と山下社長。一度でも安全性・信頼性の損なわれるものづくりをした時はメーカーとして終わりだ、ということを常に肝に銘じてきた山下社長の技術者としてのプライドが、今回の成功につながったといえるのでしょう。


社会にまだない価値あるものをメーカーとして提供したい

 「弊社が独自に開発した機構パーツが、大手メーカーで採用されたことは、第二創業をスタートさせたばかりの我々にはありがたく、大きな実績となりました。今後のさまざまな展開への期待が高まっているところです。例えば、スムーズに角度や高さが変えられるといった機能は、在宅医療や在宅介護の現場でニーズがあると思っています」と山下社長。すでに巨大ピラミッド構造のできあがっている自動車産業などへのベンチャー企業の新規参入は大変困難だけれども、医療・福祉分野は「まだ世の中にないもの」を提案できれば参入のチャンスはまだまだあると考えられています。
 機構パーツの開発だけ、技術だけを売ってくれという話を持ちかけられることもあるそうですが、山下社長があくまでもこだわるのはメーカーとしてのものづくりだと語っています。「最適の原材料、工法を選び、最適な協力会社を得てアッセンブリで出荷するメーカーでありたい。いつかは、向陽グループの創業の地・堺に工場を建てて、海外にも販路を広げたいですね」と夢を語っていました。


▲「Tロックギア」を活用した自社製品群。水に強い機構の開発で医療や介護の現場での汎用性を高めようと樹脂製への展開を図っている。

オーストラリア大陸をバイクで縦断、第二創業のスタートを迎えて気持ち新たに。

向陽エンジニアリングの第二創業前に、オーストラリア大陸をアデレードからダーウィンまでバイクで縦断してきたという山下社長。「大学の卒業旅行では、パースからシドニーまで横断したんです」。これから社会に飛び込んでいく自身を鼓舞したように、この旅で新事業の展開に向けて思いを高められたのか、社内の目のつくところにエアーズロックの写真が置かれています。

向陽エンジニアリング株式会社

代表者名代表取締役 山下直伸
本社堺市北区長曽根町130-42-123(S-Cube)
TEL072-257-8000
設立1980年設立
資本金4,800万円
従業員数5名
事業内容くさび原理を用いたロック機構部品の設計開発ならびに製造販売、各種企画製品の設計開発ならびに製造販売、3Dプリント出力ならびに設計開発支援事業
ホームページ http://www.koyoeng.biz/

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