インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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「脱メタル」の歯科技工へ 株式会社サクラ歯研 代表取締役 越智 章

半世紀変わることのない金属材料を使った歯科技工

 虫歯や歯周病などで失われた歯の形や機能を回復させるためのクラウンやブリッジ、入れ歯など補綴(ほてつ)物を製作するのが歯科技工所です。その補綴物についても、使用する材料などによって、保険適用と適用外(自由診療)があります。保険の適用されるクラウンなどの製作物はほとんど、金銀パラジウム合金が使用されており、その材料も技工手法もこの50年余り、ほとんど変わっていません。そうしたなか、審美性を追求する非メタルの補綴物については、材料をはじめ、技法についてもますます進化しているとか。40名の歯科技工士を擁する株式会社サクラ歯研は、将来を見据え、業界に先行して、「脱メタル」「脱貴金属」を進めてきました。
 「金銀パラジウム合金が半世紀も変わりなく使われたのには、強度や加工のしやすさといった優位性があったからで、歯科医師の先生の間でもまだまだ、技工士の手で加工する金銀パラジウム合金への信頼が大きいようです。しかし、今日の歯科技工業界をとりまく、貴金属の価格の高騰、金属アレルギーへの対応、審美性のニーズの高まりといった流れから、新しい材料を積極的に取り入れ、進化させていかなければ、技工士の地位向上にもつながらないと考えています」と越智章社長。サクラ歯研が目指す「脱メタル」「脱貴金属」とは、金属アレルギー対策というほかでは、治療などの実用性と直接関係しませんが、生活の質を高める高付加価値型ものづくりだといえるのでしょう。


期待されるCAD/CAMシステム

 非メタルの材料で、最近、自由診療でよく使われるようになったジルコニアは、従来のセラミックに比べて強度があり、さらに光を通すので自然に見えるのが特徴です。越智社長は、十数年前に参加した研修会で初めて紹介されたといいます。そして、このジルコニアの技工に、CAD/CAMが不可欠です。
 CAD/CAMシステムとは、患者の石膏の歯型をもとに歯科技工士の手作業で補綴物を作る従来のアナログ技工に対し、石膏の歯型をスキャニングし、CADで補綴物を設計、CAMで機械加工する技工です。サクラ歯研ではいち早く導入したものの、13~14年前までは、国内の設備で技工が完結できず、スウェーデンまでデータを送っていたこともあったといいます。
 「委託される業務の90%が保険適用の補綴物ですが、3年前から小臼歯へのCAD/CAM冠(かん)に保険が適用されることになりました。他社に若干先駆けてCAD/CAMシステムを導入していたので、すでに扱いにも慣れていましたし、すぐに対応できたのはよかったですね。見た目にも美しい非メタルの補綴物が、今後大臼歯などにも保険適用が認められてくれればと期待しています」と越智社長は語っています。


審美性に高い非メタル素材をよりリーズナブルに

 そして、歯科医療ではますますデジタル化が進む傾向にあります。驚くのは、歯科医師が治療現場で患者の口腔内をスキャンしてデジタルインプレッション(印象)を作製し、そのまま治療時間内に補綴物を製作してしまうということが実現されていることです。
 「この動きが広がれば、我々歯科技工士はいかにして生き残っていくかという問題になりますが、当社としては、そのデジタルインプレッションをデータで送っていただいて技工を請け負うという形で取り込んでいきたいと考えており、すでに歯科医院のご協力を得て、モニタリングを進めつつあります。CAD/CAMシステムに一歩先んじてきたことを、この機会に弊社の強みにしていきたいですね」と越智社長。
 今後は、これまで自由診療で9万、10万円とかかっていたジルコニアなどの補綴物を、製作効率を高めることでよりリーズナブルに提供し、「脱メタル」「脱貴金属」を広めていけたらと抱負を語っていました。

今回の3社の事業だけを見ても、「ヘルスケア関連事業」の間口は広く、奥は深いのだと実感します。健康を求めない消費者はいないと言っても過言ではありません。そして、「からだにやさしい」ということは、ひいては「こころにやさしい」、つまり気持ちの豊かさにもつながっています。
自社の技術や製品を「人にやさしい」という観点から見つめ直せば、新たなビジネスのヒントが生まれるのではないでしょうか。


▲不自然なほど真っ白だったセラミックなどに代わって、自然な色が表現できるようになったジルコニア

どれだけシステム、設備が進化しても歯科技工士の基本はアナログ技工

一つの型から補綴物を作るまでにはたくさんの工程があり、分業制を採っている歯科技工所も少なくないそうですが、サクラ歯研では、約2年がかりでアナログ技工の全行程を習得させるのだとか。越智社長は「全行程をしっかり習得して初めて、歯科技工というものが理解できると考えています。どれだけシステムが進化しようと、基本はアナログ技工。それが歯科技工業界全体のレベルアップにつながると思いますね」と語っています。

株式会社サクラ歯研

代表者名代表取締役 越智章
本社堺市北区北長尾町8-1-23すばるビル内
TEL072-254-0026
設立1985年創業 2000年設立
資本金300万円
従業員数50名
事業内容歯科医療用補綴物の製作
ホームページ http://www.sakura-labo.com/

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