インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
北海道から沖縄まで取引先3百軒 旅行土産をオリジナルで企画開発
沖縄の水族館で販売されているジンベエザメの孫の手から、奈良市観光協会のマスコットキャラクター"しかまろくん"のマグネットや、高野山の文字がレイアウトされたTシャツ、さらには浅草・雷門のミニ提灯に、ひこにゃんのぬいぐるみなど、誰もがどこかで見かけたことのある土産物。これらは全て、東区にある(株)野田工芸で企画開発されたものです。堺市の馴染み深いものでは、堺市博物館のミュージアムグッズのサカイタケルくんキーホルダーや犬形埴輪キーホルダー、古墳キーホルダーもまた同社製品。「北海道の札幌から南は石垣島まで、全国に300軒の問屋さんとお取引しています」と語るのは、堤 敬一社長です。
1980年に創業した当時は、全国の海沿いの観光地向けに、貝殻を使った置物やアクセサリーを製造していたとか。「当初は、フィリピンや台湾の観光地で売られていた土産物を模倣することから始まりました。昔は熱海や白浜、宮崎など、海辺の観光地が人気でしたし、貝殻がまだ珍しい時代でしたから、よく売れましたよ」。沖縄の土産物店などでよく見かける小瓶に入った星砂も同社が考案したものです。
「土産物はアイデア勝負で、製造に特別なものづくり技術は必要ないんです」と堤社長は話しますが、以前に海外から仕入れた製品は不良品が多く、現在は、部品の製造をベトナムの自社工場で製造しているものの、材料の選定・仕入から、企画デザイン、組み立てまでを同社が行っています。特に外国人観光客に"日本製"は大きなアピールポイントで、日本のものづくりへの大きな信頼を実感します。
▲さまざまな素材に絵柄をプリントする昇華転写機
▲デザインの重要性を認識し、早い時代からデザイナーを雇用
アイデアのヒントは現地から桜島の火山灰もお土産にアレンジ
アイデアが全てと語る同社の土産物のほとんどは、堤社長が「布団の中などでふっと思いついた」ものだそうで、「長く土産物に関わってきた積み重ねが引き出しとなっているんでしょうね」と話しています。ただ、流行を知るために女性たちのファッションをチェックすることも怠らず、女性の指輪を見て思いついたというオリジナル製品"幸福の指輪"は、販売数400万個のヒット商品に。ひこにゃんなど商標使用料の発生するマスコットキャラクターものは、現地の取引先から要望があった場合のみ、取引先が商標使用料を支払う条件で製造しており、それがメーカーとして確実な利益の確保につながっているようです。
全国で売れる七福神シリーズのほかに、最近では、地域色の強いものが好まれ、ユニークなところでは、きれいに洗浄した鹿児島県の桜島の火山灰や富士山麓の土を、透明のアクリルケースに入れたマグネットなどが人気だといいます。
「こうしたアイデアのヒントは、現地の問屋さんから得ることが多く、互いの情報交換などのために年に3回、全国のお取引先を回っています。そこで、次の商品の要望を聞いたり、他の観光地の情報を交換したりすることが多く、私が訪ねていくのを皆さんが待ってくださっている。メーカー冥利に尽きますね」。
▲実用性を備えた伸びる孫の手などが人気。スマートフォンが普及してからは、ストラップに代わってマグネットが売れるようになった。
人気商品はすぐにコピー商標登録などで対策
ところで現在、同社の課題の一つが、すぐにコピー商品が出回ることです。商品だけでなく、同社が長年に培ったノウハウを結集させているパッケージや台紙ごと、コピーされているケースも少なくないといいます。その対策として、企画開発した製品はすぐに商標登録し、台紙にクレジットを入れていますが、それでもコピー商品の出現が後を絶ちません。「販売元に抗議しますが、いろいろ言い逃れをするので、弊社では著作権に強い弁護士と契約し、悪質なものはすぐに訴訟に持ち込むようにしています。不正は絶対に許さないという態度を示し続けることが大事なんです」。
そして、もう一つの重大な課題が、後継者がいないことだと堤社長。全国の取引先めぐりに、新しい担当者を同行させても、堤社長でないと商談にならないそうで、この件についてはカリスマ経営者が共通して抱える課題だといえるでしょう。
インバウンド需要が急激に高まっている今日、同社のビジネスチャンスはますます広がっています。
▲最終の組み立てまで、製品づくりは堺で行われている。
株式会社野田工芸
代表者名 | 代表取締役 堤 敬一 |
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本社 | 堺市東区南野田645-4 |
TEL | 072-235-1615(代) |
設立 | 1980年創業 1984年設立 |
資本金 | 3,000万円 |
従業員数 | 15名 |
事業内容 | 国内観光地の土産物の企画・製造・販売、富貴蘭および資材の販売 |