インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
金属面を2ミクロン以下まで人の手で削る「きさげ」技術に強み
村上精機株式会社はその社名の通り、1948年の創業以来、ミクロン(千分の1㎜) やサブミクロン(一万分の1)といった世界で超精密機械部品の製造や組立てに特化した事業を展開してきました。
「量産品ではなく、一品料理のものづくりにこだわってきた」と語る村上周三社長は、「そのために一人ひとりの技術者をスペシャリストにしなければ」と人材育成に注力。毎週月曜日に行われる勉強会では、最新の情報を技術者全員で共有するなど、全社で技術力の底上げを図っています。なかでも、同社が誇る「きさげ加工」は、精密機械の滑り面などを高い精度で仕上げるため、機械では難しい平面度2ミクロン以下まで人の手で削り取る技術です。同社には現在、この技術を持っている技術者が8人。国内では、村上精機のオンリーワン技術と言っても過言ではありません。
このように絶えず磨き続けた高い技術力によって、バブル経済の崩壊で大きな経営危機を迎えた時にも、自動車業界に参入するチャンスを獲得しています。
「大阪で協力会社を探しているということで、大手自動車メーカーから試験的に課題をもらうことができましたが、日頃製造している何ミクロンという精度の部品に比べれば、決して難しいものではなく、自信を持って臨めました」と語る村上社長の言葉通り、その後、その大手自動車メーカーとエンジンの金型製作での取引が始まり、同社の主要得意先となっています。
▲習得が大変困難な「きさげ」技術を、村上精機ではコストも時間もかけて大切に守り伝えている。
高い技術力に寄せられる宇宙開発事業からの期待に応えて
しかし、安泰と思えた自動車産業もリーマンショックや東北大震災、そして円高などの影響を受け、自動車メーカーからの売上が10分の1まで激減。さらに、自動車の電動化が加速し、エンジンの需要が減少する見通しから、自動車業界以外で新たな得意先を開拓せねばと思っていたといいます。そこへ、村上精機のホームページを見て声を掛けてきたのが、ロケットの製造を手がける機械メーカーでした。3年前のことです。
「現在は、ロケットのエンジン部分の燃焼バルブやノズルの金型製作を行っています。1000℃を超える燃焼温度に耐えられる耐熱鋼が難削材なので、その点で苦労しましたが、エンジン部分の金型作りは自動車ですでに実績もありましたし、納めた製品については高く評価いただきました」と村上社長。宇宙開発事業を手がける大手機械メーカーの直々の訪問を受け、今後の協力も求められたといいます。
これを機会に、同社ではJIS Q 9100(※1)の取得を目指し、今秋に初めての審査を受ける予定です。また将来的にはNASAへのアプローチを視野に、アメリカのNadcap認証(※2)も取得したいと考えています。
※1 航空宇宙・防衛産業において製品・サービスの安全性を確保し信頼性を向上させるためのマネジメントシステム規格
※2 国際航空宇宙産業における特殊工程や製品に対する国際的な認証制度
▲同社で活躍するベトナム人の従業員は約20人。
熱心な働きぶりで、大きな戦力となっている。
低圧の水蒸気でも発電できるロータリーエンジンを自社開発
最近は、初めての自社ブランド製品として、これまで回収が難しいとされた200℃以下の低温廃熱を再利用し、さらには低圧の少ない水蒸気でも発電できる「ロータリーエンジン発電システム」の開発に成功。大阪府立大学と、木質バイオマス蒸気ボイラー技術を持つ株式会社イクロスとの共同開発で、木のクズでもあれば、どこでも発電できるバイオマス蒸気ボイラーの発売を開始しています。廃棄処分にコストのかかる農業残渣物の活用も考えられ、今後に期待されています。
「新しい、難しい仕事ほど燃えるんですよ」。静かな語り口ながら、村上社長の言葉からは同社の技術力に対する並々ならぬ自信が感じられました。いつかは、精密加工技術の先進国であるドイツやスウェーデン、スイスの企業とも仕事をしてみたい、そして自社の技術のレベルを計ってみたいとも語っています。
コスト削減の煽りなどから、大手メーカーでも熟練の技術者が少なくなりつつある今日、同社の技術力への期待が高まり、より高付加価値な仕事に特化することを考えられています。
▲初の自社ブランド製品となるロータリーエンジン
▲精密加工技術を活かして部品作りから組立てを一貫して行っている半導体製造装置。
村上精機株式会社
代表者名 | 代表取締役 村上 周三 |
---|---|
本社 | 堺市堺区山本町5-97-3 |
TEL | 072-232-5693 |
設立 | 1948年創業 1959年設立 |
資本金 | 2,200万円 |
従業員数 | 40名 |
事業内容 | 精密機器部品の製造・加工・組立 |
ホームページ | http://www.murakamiseiki.co.jp/ |