インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
自分たちが最も欲していたことが開発への力強い動機付けに
実際の商品を手にとって見ることのできないオンラインショップでは、商品画像の良し悪しが売上に大きく影響します。運営管理者からすれば当然、最も重視しなければならない画像ですが、一方、月に何千、何万点という数をアップロードするために撮影した画像の一枚一枚の背景を消したり、写真の中央に移動させたり、暗い画像を明るく調整したりといった編集にかかる膨大な手間と時間が大きな課題となっていました。例えば、1枚の画像編集にかかる時間を5分として5千枚なら4百時間以上が必要です。それを1点あたり数秒という速さで、しかもワンクリックで自動的に全ての編集作業を終えてくれたなら・・・そんな夢のようなシステムを実現させたのが、グラムス株式会社の三浦大助社長と最高技術責任者のブレイン・ホスフォードさんです。
撮影した画像をクラウドに上げると、切り抜きからセンタリング、明るさ調整などの加工作業を一気に全自動で行うEC特化型クラウドサービス「Zenfotomatic (ゼンフォトマティック)」。今や世界100カ国以上で利用され、国内外でアカウント数3万6千余を数えるまでになっていますが、開発のきっかけは「誰よりもまず、自分たちが一番必要としていたから」と三浦社長は語っています。
▲「豊かな歴史と文化に惹かれて来日する外国人の多い関西では、優秀なエンジニアも獲得しやすい」と三浦社長は語る。
「実現不可能」と言われたからこそ技術者魂に火がついて
約10年前、三浦社長自身が起業し立ち上げたインポート物のECサイトで、最も手を取られたのが商品画像だったといいます。「商品を入荷するたびに撮影や画像編集のための徹夜が続きました。ビジネスとしてやらなければならないのはこんなことじゃないというもどかしい思いもあり、この膨大な作業を効率化したいと考えました。そして、もしそれが本当に実現したら、これまで世の中にないものだし、さぞ面白いだろうと思ったんです」。
三浦社長と二人三脚でソフトウエアの開発に取り組んだホスフォードさんは、もともと三浦社長のバンド仲間。母国ニュージーランドで顧客を抱えるほどのベテランエンジニアだったのは偶然だったそうです。ホスフォードさんが1年ほど帰国した間も、ネットでのやりとりを通して開発は進められました。
二人が目指したのは、クラウドに上げた何千、何万という画像をワンクリックで、一気に加工する「バッチ処理」。しかも、O.1秒という処理速度にこだわり、画像解析の専門家から「実現できたらノーベル賞もの」と言われたこともあったとか。ひたすら試行錯誤を繰り返すなかで、独自の画像解析技術を開発することに成功した時には4年が経っていました。気持ちを維持するのは難しくなかったのかという問いにホスフォードさんからは「世界で初めての難しい挑戦だったからこそ、モチベーションが保てた」と技術者らしい返答がありました。
▲約半数が外国人だというスタッフ全員が事務所に顔をそろえるのは、月に1回のミーティングの時だけだという。
多様な文化と働き方を認め合うソリューション開発企業へ
「重視すべきは、誰の何のための開発かであり、"売る"ために必要な画像編集が誰でも簡単にできるソフトウエアを実現する。ただその目的に絞って取り組みました」と語る三浦社長。そのために最初から完璧である必要はなく、80%でも使えるものを作ることを目指したといいます。いち早く大手企業のトップに認められ契約が決まったことは大きな力になり、期待に応えるべくシステムのブラッシュアップを重ねられたとか。現在も、ユーザーが気に入らないと判断した画像には課金せず、エラーデータとしてさらなる改善に役立てられています。
「日進月歩に進展するIoT社会において、技術やソフトウエアはすぐに陳腐化してしまう。我々が強みとするのは、今、課題とされていることを解決する"ソリューション"の提供」と三浦社長たちは強く語っています。その言葉を裏付けるように、同社は今年も早々に世界中を驚かせるような機能を発表しました。商品を撮影するだけで、画像のリネームから商品の採寸、解説文作成までを全て自動で処理してしまうというものです。
「スタッフの国籍や既存の働き方に全く捉われていませんが、世界で通用するソフトウエア会社が日本の、この堺で誕生したと認めてもらえたら嬉しいかな」と三浦社長は笑っていました。
▲何千、何万枚とある画像の加工を一気に自動で加工するクラウドサービス「Zenfotomatic」。Zenは、余分なものを一切取り払ってシンプルにという意味から「禅」に由来する。
▲誰でもが簡単に利用できるよう、WEBセミナーを開催しているほか、使い方の個別サポートも行っている。
グラムス株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 三浦 大助 |
---|---|
本社 | 堺市堺区市之町東5-2-11-3F |
TEL | 072-242-7480 |
設立 | 2010年設立 |
資本金 | 900万円 |
従業員数 | 9名 |
事業内容 | EC特化型クラウドサービス(商品画像加工) |
ホームページ | http://www.glamscorp.jp/ |