インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
職人技の量産化を実現した「フラワーシート」を開発
田中食品興業所という社名を聞いたことはなくても、おそらく誰もが一度や二度は同社の製品を口にしたことがあるのではないでしょうか。街のスーパーマーケットやコンビニに並ぶ有名ブランドのパン製品の多くに、同社のクリームやチョコレートクリームなどが使われています。田中利明社長いわく「1日のクリームの生産量が百トン。パンの数で単純に計算すると、日本国民の25人に1人の口には入っていることになりますね」。
パン屋が自前でジャムなどを作っていた時代の昭和24年に、製菓・製パン用のクリーム、ジャムの専門メーカーとして創業。その後、焼きたてを売りとする小規模のベーカリーショップから、大手製パン企業までを得意先に、品質の向上や商品バリエーションの拡大、そして製造工程の効率化に貢献してきました。
なかでも同社が独自に開発した画期的な製品は、パン生地にクリームをマーブル状に折り込むための「フラワーシート」。パン職人の手作りの技を、機械で安定して量産するために開発された世界初の製品で、発売から30年余りが経った今も、同社の売れ筋NO.1です。今では、キャラメル、フルーツ、紫芋など、折り込む素材の豊富さに加え、メーカー別、チャネル別のオーダーにも応えているため、数え切れないほどのバリエーションを誇っているとか。
田中社長が「その時代時代の社会のニーズや消費者の嗜好の変化にあわせて、当社の製品も進化しています」と語るように、健康志向の高まりを受け、保存料などの添加物を極力使用していない「ナチュリアーナシート」を発売しているほか、こだわりのベーカリーショップ向けには、オートメーションの機械ではなく、銅製の釜で炊き上げた手作り感の高いクリームを製造、要冷蔵で配送しています。
▲製造されたクリームの充填ライン。工場内は、徹底した衛生管理が行われている。
米飯用製品やレトルト食品、ソースなどにも領域を拡げて
同社の強みである製品開発力を支えているのは、関東と関西の2カ所に設けられているタナカベーカリー研究所です。特級パン製造技能士の資格を保有するスタッフが日夜、新しい製品、レシピの開発に取り組んでいます。日本のパンは口当たりが良く、人が風味を感じる早さまでを追求して作られており、田中社長は「西洋から入ってきたパン文化ですが、今や品質の高さ、商品バリエーションの豊富さ、何よりしっとりとした美味しさは、世界に誇れるものでしょう」と語っていました。実際、同社が2010年に中国・北京に設立した合弁会社では順調に売上げが伸びているといい、さらには台湾やシンガポール、タイなどのアジア圏への輸出も好調だそうです。
製パン材料だけでなく、炊き込み御飯の素などの米飯用製品やレトルト食品のほか、"あと一品"がすぐに調理できる調味料などの付加価値の高い製品づくりを積極的に進めているとか。また、北海道産の牛乳といった地域ブランドを重視する要望が多いほか、その土地で採れる農作物などを使った具材の開発依頼も増えているといいます。商材も「現代風の新しいおにぎりやサンドイッチの具材、洋菓子、和菓子とまだまだ開発の余地はありますね」と田中社長。多様化、高付加価値化の進む食品業界で、さらなる成長を目指しての意気込みを感じました。
▲製品開発や提案のための試作が行なわれている本社中央研究所内のタナカベーカリー研究所。
▲チョコレートや抹茶の素材がマーブル状に折り込まれたフラワーシート使用例。
株式会社田中食品興業所
代表者名 | 代表取締役社長 田中 利明 |
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本社 | 堺市堺区遠里小野町2-4-26 |
TEL | 072-238-0281 |
設立 | 1949年創業 1959年設立 |
資本金 | 9,000万円 |
従業員数 | 400名 |
事業内容 | 製パン・製菓用フラワーペースト、油脂加工食品類、あん製品、ジャム製品、製菓材料、カレーフィリング、調理用フィリング、惣菜製品の製造販売 |
ホームページ | http://www.tanakafoods.co.jp/ |