インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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「スリット」で飛躍的に品質を向上 有限会社三宝金型製作所 代表取締役社長 中村 裕一

発泡スチロールの需要が高まるなかいち早く金型メーカーとして創業

 1969年創業の三宝金型製作所。1950年代にドイツで開発されたという発泡スチロールの成形用金型にいち早く取り組んだ企業です。
 発泡スチロール成形品の「軽量」「緩衝性」「断熱」「成形性(作りやすさ)」といった特徴は、高度経済成長期に一気に普及し始めた家電製品の梱包材として、また重かった鮮魚輸送用の木箱に代わる輸送箱として重宝され、需要は高まるばかりでした。創業当時、発泡スチロール成形には、職人の手による木型をもとにアルミ鋳造で金型母材を造形しており、品質に安定感がなかったとのこと。それを補う形で金型加工が施されていたそうで、同社の技術もそうしたなかで磨かれたものです。
 「金型メーカーの評価として『コスト』『対応力』『成形品質』『成形効率』の4つがありますが、業界ではコストや対応力ばかりが重視されています。当社では木型、鋳物、加工などの工程を自社で一貫させ、成形品質や成形効率を追求してきました。新しい知恵を入れなければ、進歩はありませんから」と語る中村裕一社長。その考えから誕生したのが、画期的な「発泡スチロール成形用特殊金型」です。


▲部品を取り付けるための穴あけ作業。


▲ヘルメット内部の緩衝材にも活躍する発泡スチロール。

工程をがらりと変えた画期的な特殊金型を独自に開発

 従来の発泡スチロール成形用の金型では、原料の発泡ビーズ(樹脂粒体を3~4mmの球体に膨らませたもの)を、充填させる際に、圧縮空気を排出するための「型開き」という工程が必要です。そのために原料ビーズが均一に充填できず、底の部分と4つの側面では強度が異なっていました。
 同社が独自に開発した特殊金型は、金型にスリット(切れ目、隙間)を入れることで、成形時の圧縮空気や加熱蒸気の排出・導入を円滑に行うことができるようにしたもので、原料の充填や加熱成形が均一にできるようになり、その結果、強度の均一化を実現しています。
 さらに、こうした「成形品質の向上」に加えて、「蒸気使用量の削減」「冷却時間の短縮」「成形時間の短縮」といった省エネルギー生産効果を高めることにも寄与したとして、近畿経済産業局から「関西ものづくり新撰2018」に選定されたほか、府立環境農林水産総合研究所からは、大阪の中小企業が開発した環境技術・製品の中でも特に優れているものに与えられるおおさかエコテック(環境技術評価・普及事業)の「ゴールドエコテック」に選ばれています。


▲独自に開発された金型では、「スリット」がポイント。原料充填が困難な部に線条(せんじょう)スリットが入っている。

将来の自動化設備にも対応し少子化による人材不足に寄与

 これまで発泡スチロール成形会社において、見直されることなく更新されてきた金型ですが、成形品質と成形効率をより高めることができれば、大きなビジネスに成長するはずと開発に取り組んできた中村社長。開発と実績作りに数年をかけて、ようやく完成させました。具体的な効果として、蒸気使用量が約2~3割削減され、鮮魚輸送箱の成形については生産効率が約40%も向上しています。また、養殖場で使われる俵状の海洋フロート(ブイ)も、従来品では表面の硬さが十分ではありませんでしたが、特殊金型の採用で均一な硬さとなり、浮力も確保されています。
 今後のビジョンとして、中村社長は「この特殊金型は成形条件の設定が容易で、熟練した技術がなくても成形が可能です。将来的には成形設備の自動化にも貢献できる。少子高齢化にともなう人材不足にも貢献できるもので、そこに当社の大きなビジネスチャンスがあると考えています」と、未来のものづくりを見据えて語っていました。

有限会社三宝金型製作所

代表者名代表取締役社長 中村 裕一
本社堺市西区山田3-890-3
TEL072-271-9289(代)
設立1969年設立
資本金300万円
従業員数12名
事業内容発泡スチロール・真空成型・FRP用金型一式・一般軽金属加工など

貸会場のご案内 TEL 072-255-0111 FAX 072-255-3570 ご案内ページはこのボタンをクリック