インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
商品開発に魅力を感じて起業、新たな技術の蓄積は人材から
かつて松山浩一社長が、プラスチックの成型加工の企業に勤めていた頃に参加したという商品開発をテーマとした勉強会。堺市の老舗線香メーカーや自転車部品メーカーの経営者と席を並べて学ぶなかで見聞が広がり、自ら起業するきっかけになったといいます。
「まだ20代前半でしたが、新しい製品を企画開発するということの魅力に気付かされたんです。同じ成型加工業を営んでいる友人と晴海株式会社を立ち上げました。30年前のことです」。
当初は得意とする樹脂製品を中心とした製品開発を行っていましたが、これまでにない極小サイズのラジコン玩具の開発依頼をきっかけに、電気回路やマイコンのソフト開発などにも携わるように。松山社長は「構造的にどれほど難しいことか、これまでに経験がなかったから恐いものなしでした。ノウハウのない依頼なら、その道のエキスパートを揃えれば良いと考えて人材を採用してきましたし、そうして今では、遊技機やアミューズメント機器、玩具、美容機器、生活日用品とジャンルにこだわらず、幅広い領域で製品の企画開発から製造までを行っています」とのこと。次から次へと持ち込まれる開発依頼のハードルが高くなる中で、同社の企画開発力もまた磨かれてきたと言います。
▲量産するための工場を中国にも数社抱えているが、決して外注任せにせず、品質とコストの管理を徹底できるよう「工場を育てている」という
新しいものを創り出す企画開発力とものづくり技術の両輪を備えて
では、同社にとってデザインとは何なのでしょうか。松山社長に尋ねると「売れる商品づくりにおいて、デザインが最も重要」と答えますが、そのデザインとは、単なる見た目の格好良さや美しさではないのだとも言います。
例えば、昨年11月に発売されたばかりの美容器(左写真3点の左)。これまでのシェーバー型と異なる全く新しいデザインが注目されています。企画開発に携わったコスメティック営業課の土岐純一課長は「首、フェイスライン、目元、さらにはボディのウエスト、太もも、ふくらはぎとそれぞれの部位の範囲やカーブにあわせてフィットするようデザインしました。優れた効果を発揮する機能性を備えてこそのデザイン」だとインダストリアルデザインの役割を語っています。この美顔器の企画開発にあたって、人の身体をよく知る整体師に取材したことは、ユーザーの使い勝手、使い心地までをもデザインとして捉えている所以なのでしょう。
「新製品についてはもちろん、お得意先企業からの『このようなものを』というオーダーがあり、納期や予算でも制約を受けるわけですが、そのなかでお客様が期待されている以上のものをご提案したい」とデザイン室の生田恒平アートディレクター。同社がデザインを含む企画開発に注力していることは、晴海の社員数27名のうち17名が開発に携わっていることからもわかります。
そして、何よりもこうして創り出されたデザイン設計を実際の製品に落とし込むことのできる高いものづくり技術を備えていることも、同社の強みなのです。「とはいっても、最初から機構的に可能かどうかということを考慮しながらデザインをすると、面白いものはできなくなる」と土岐課長。企画開発担当と製造設計担当という両輪が、時には衝突しながらせめぎあっているゆえに、他社には真似のできない企画開発力を発揮しているといえそうです。
▲美容器からアウトドア用LEDランタン、さらにはオフィス向けコーヒーサービスのドリップ販売機まで幅広い製品の企画開発に携わっている
黒子のエキスパートとして企画開発に特化したものづくりを
テレビCMにも流れている商品などを数多く手がけてきた晴海ですが、全てOEM。現在のところ、自社ブランドを立ち上げるつもりはなく、「目指すは、黒子のエキスパート」と松山社長は言います。
「販売メーカーとなれば、お客様相談窓口などさまざまな部署を作る必要が出てきます。当社はものづくりにだけ集中していたい。そのために量産のための工場も自前で持たないファブレス経営です。企画開発した商品が大ヒットという形で多くの消費者に受け入れられれば、お得意先が評価してくださり、次の依頼につながっていく。そこに我々の喜びがあります」。
脈略がないといえるほど、これまで企画開発してきた製品は多岐にわたっていますが、全て同社が得意とする「樹脂」「電気回路」「マイコンソフト」「デザイン」を活かしてきたもので、最近では畜産業界向けのIOTシステムや、太陽光発電のソーラーパネルの自動洗浄装置の開発に携わったこともあり、今後は将来性の高い分野でも自分達の技術を活かした製品開発ができるのではと考えています。
▲企画開発そのものが同社の「売り物」。特許権は依頼主の得意先企業が取得し、競合しない範囲で優先的に使用することを認めてもらっているという
晴海株式会社
代表者名 | 代表取締役 松山浩一 |
---|---|
本社 | 堺市美原区多治井27-1 |
TEL | 072-361-7762(代) |
設立 | 1988年創業 1991年設立 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 27名(グループ全体で60名) |
事業内容 | 電子機器、遊技機、アミューズメント機器、美容機器、生活日用品、電子玩具、キャラクターグッズ、アクセサリーなどの企画・開発設計・製造販売。各種プラスチック製品の成型、塗装、印刷など二次加工の企画、開発設計、製造販売。DTPデザイン、WEBデザイン業務。下水処理プラント用樹脂製品の製造販売。 |
ホームページ | http://www.harumi-net.co.jp/ |