インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
独自に開発したソフトウエアで超精密な測定を実現
回転する時に振動やノイズを発生させるモーターやファンなどの、振動の発生箇所や角度を測定するのがバランサー(動釣合試験機)であり、そのアンバランスを修正するのがバランス修正機です。電子精機工業株式会社(DSK)は1974年の創業から、このバランサーの開発・製造を手がけてきた国内でも数少ない専業メーカーで、自動車のエンジン周りや掃除機に搭載されているモーターの、非常に高い精度の求められるバランサーやバランス修正機で強みを発揮しています。
「バランサー自体は、お得意先メーカーの技術者の方でも作ろうと思えば作ることができるかもしれませんが、当社では、振動時のアナログのデータをデジタル化する際に、まわりの雑振動を拾わず、バランス振動だけを検出し周波数分析を厳密に行うよう独自のソフトウエアを開発しました。これにより、超精密な測定を実現したわけで、そのノウハウを高く評価いただいています」と、永見由紀夫社長は語っています。
▲サイクルタイム3秒を実現した「全自動6ステーションバランサー」
自社内で磨き続けた技術力が新たな得意先の獲得へ
現在は、最大手の自動車部品メーカーや家電メーカーを得意先とする同社ですが、最初から順調に契約を獲得できたわけでなく、地道に研鑽を重ねた技術力が、いざという時のチャンスに発揮された結果だといえるようです。
例えば、5年間営業に通ったある大手電動工具メーカーとは、新製品づくりで要望された機能の開発にどこも応えられなかったことが取引のきっかけでした。当時を振り返って永見社長は「非常に難しい案件で、当社の納品も遅れ、あわや損害賠償かと思われたのですが、先方の役員のお一人の『これまでにどこにもなかった機械は簡単にはできない。わが社の要望に応えたのはDSK一社だけだ』のひと声で当社の責任は問われることなく、むしろ、この取引が実績となり、さらに多くの受注をいただくきっかけとなったと思います」と話しています。
その他、かつて中国の国営企業とモーター製造プラントの技術提携を行った大手家電メーカーが、「DSK製の自動バランサーを採用しなければ、品質の保証はしない」と、他社製を勧めてきた中国からの要求をはねつけたこともあったとか。ものづくりにおいては、優れた技術こそが物言う世界であることを語っている好例でしょう。
▲サンルーフの開閉用モーターの製造に使用されるバランサー
長期間のメンテナンスフリーを実現 信頼性の高さから世界へ販路を拡大
同社では現在、中国に工場を持っているほか、北米やヨーロッパ、アジアの各国に販路を広げています。その発端は、約30年前に得意先企業が中国に工場を建設した折、最新の製造ラインとして同社の設備を導入したことでした。もともと同社では、専門知識がなくても操作が簡単で、ユーザー自身でメンテナンスができるよう、できる限りシンプルな構造の製品づくりを進めてきました。そのため高い耐久性も実現。無修理で長く使用できる安心感が海外での採用を促してきたといえます。
世界中の工場が集中する中国において、同社製品の高い評価が広がることで世界に販路を拡大しましたが、一方で偽物が出回ったことも。開発は国内の少人数のチームで行い、中国工場では組立てだけを行うことで、製品のコピーを防止しているそうです。
今後は、基盤の冷却ファンなど、高精度が求められない市場へも進出、裾野を広げたいと考えています。
▲ミスが発生してもその場ですぐに対応できる職場づくりが、技術力をさらに高めている
電子精機工業株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 永見 由紀夫 |
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本社 | 堺市美原区黒山300 |
TEL | 072-362-3373(代) |
設立 | 1974年設立 |
資本金 | 5,000万円 |
従業員数 | 30名 |
事業内容 | バランサーおよび試験機の製造・販売 |
ホームページ | https://www.dsk-japan.co.jp/ |