インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
趣味のアウトドアで切削加工業からメーカーへ転身
1966年の創業時は、切削加工業を営んでいた常磐精工株式会社。「賃加工では利益が十分に確保できないことから、いつか自社製品を作りたいと考えていました」と喜井充社長は語っています。どのような製品が良いのかと考え続けていた時、その答えは思いがけないところから返ってきました。
「もともとアウトドアが好きで、お腹の大きな妻と小さい子どもを連れてキャンプに行った時に、一人でも簡単にタープの張れるマストアンカーやペグがあればいいなと考えて作りました。それを知った友人の紹介で弁理士さんに見てもらったところ、これならパテントが取れるというので製品化したのが、当社のメーカーとしてのスタートです」。
やがて、アウトドア用品から園芸用品を手がけるようになり、花市場で販売していると、供花と関係の深い葬儀会社からサインの製作を依頼されるようになりました。それがきっかけで、今日では、置き型看板の完全自社生産メーカーとして、さまざまなタイプのサインやスタンドを製造・販売しています。
「例えば、新規開店される時でも看板は最後になりがち。急ぎの注文が多いので、既製品なら午前中に受注したものは即日発送し、パイプの長さを変えるぐらいの別注品なら翌日に発送しています」と喜井社長。自社生産ならではの強みといえます。
▲自社製作しているがゆえに、驚きの「短納期」を実現。
東北大震災をきっかけに非常時に看板ができることを考えて
夜でもよく目立つLED内蔵のスタンドや、直立型のパネル一体型スタンドなど、置き型看板において豊富なラインナップを誇る同社ですが、最近、学校や官公庁、介護施設、イベント会場、さらに変わったところでは領事館から引き合いがあったのが、「サポートシリーズ」と銘打たれた非常搬送用可変式サインスタンドやディスプレイテーブルです。非常時には、車いすやストレッチャーとして使える置き型看板などで、工具も必要なく、誰でも簡単にすばやく車いすや担架に変形できるのが特長です。
開発のきっかけは「東北大震災のあと、宮城県知事が被災していない地域までが経済を萎縮させてはいけないと語っているのに共感。看板でできることは何だろうかと考え、『がんばろう日本』というメッセージの入った看板を低価格で販売し、その売上の一部を義援金として寄付したりもしました。そして、このサポートシリーズも、看板にできることの一つとして考えたものです」と喜井社長。
万一のために車いすや担架を備えていても、いざという時に置き場所がわからなかったり、置かれている倉庫に鍵がかかっていたりすることも考えられますが、人目に目立つように置かれている看板なら、すぐに使えるうえに、日頃からメンテナンスもしやすいことが大きなメリットだと喜井社長は語っています。
▲看板のパネルを外すだけで、1分もかからずに車いすやストレッチャーに。
安全性を第一にパイプから組み方までを独自に設計
常磐精工の製品は、模倣品が作られにくいようにパイプから金具、ネジにいたるまでほぼ100%自社オリジナルです。「サポートシリーズ」の製品にも、その設計力や技術力が活かされていました。
「サポートシリーズで最も留意しなければならなかったのは安全性でした。人を乗せても十分な強度を保つため、角パイプも専用のものを開発。また、パイプ同士のジョイントも力が逃げないよう金具を使わず、ダイレクトにつなぐ組み方を考案しました。その加工のための横軸タッパーも自社開発しています」と喜井社長。この信頼性を評価する規格がないため、大阪府立大学に依頼して強度検査を実施。高い安全性も確認されています。
「災害用だけでなく、熱中症対策に工場や倉庫に設置するための注文も増えています。お年寄りやけが人などの要救護者の搬送など、日頃から活用いただけたら」と喜井社長。AEDのように、街のいたるところにサポートサインがあるのが当たり前の風景になってほしいと願っています。
▲ヒット製品はすぐに模倣されるため、部品はすべて市販品と規格が異なる同社オリジナル。
常磐精工株式会社
代表者名 | 代表取締役 喜井 充 |
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本社 | 堺市北区常磐町3-19-3 |
TEL | 072-255-1287 |
設立 | 1966年設立 |
資本金 | 2,000万円 |
従業員数 | 18名 |
事業内容 | 各種スタンドの製造・販売 |
ホームページ | http://www.tokisei.co.jp/ |