インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
超硬合金を使った金型製作のパイオニア企業
戦後間もない1950年の創業時から、当時は非常に珍しかった超硬合金を扱っていたというハイテン工業株式会社。日本で初めて、超硬合金で絞り金型を製造した企業であり、その技術は今日まで脈々と磨き続けられてきました。自動車用ホイールナットやスピンドルナットの量産に使用する冷間鍛造用超硬金型では、国内シェア約70%を誇っています。
同社が冷間鍛造用金型に注力する理由について、佐伯知哉社長は「材料に熱を加えて鍛造する温間鍛造や熱間鍛造と比べ、冷間鍛造は常温で鍛造するため、熱などで収縮して寸法精度が失われることがなく、高付加価値な製品づくりに向いています。また、超硬合金を加工できる同業者が非常に少ないため、価格競争に陥ることもありません」と語っています。特に、同社が独自に開発した「割型形状金型」は衝撃力を分散させるため、型の寿命もボルト製品の品質も飛躍的に向上させるとして、4件の実用新案と特許を取得しています。
▲電気による放電エネルギーを利用して加工する「放電加工機」。
チタンなどの加工のために高温に強い超々合金を開発
このように「研究開発型企業」として業界を牽引してきたハイテン工業が、堺市ものづくり新事業チャレンジ支援補助金を受けて、大阪府立大学と共同で開発に取り組んだのが「ニッケル基超々合金」です。
「冷間鍛造用金型で優位性を保ってきましたが、ニッケルやチタンといった非常に硬い特殊な材料に冷間鍛造は不向きで、熱間鍛造でなければなりません。しかし、超硬合金は高温に弱かったので、新たな素材を開発する必要が生まれたのです。ニッケルをベースにアルミ・バナジウムなどのさまざまな素材をブレンドし、これまでにない全く新しい素材の開発を目指しました。大学の研究室で使うサンプル程度の大きさで成功しても、金型を作るサイズの塊となると、巣が入るなどして何度も作り直し。高価な材料が次々と無駄になるんですから、その開発当初の2年間が本当につらかったですね」と佐伯社長。しかしその甲斐あって、600℃を超える高温でもビッカース硬さは低下せず、700℃以上では超硬合金よりも硬い「ニッケル基超々合金」を用いた熱間鍛造用金型の開発に成功。大阪府立大学と共同出願して特許も取得しています。
▲高い信頼性が求められる、自動車用ナットの鍛造用金型
超々合金の加工技術を活かし航空機用部品の自社製作を
大変な苦労をして開発したニッケル基超々合金の熱間鍛造用金型は、多くの企業の関心を集め、現在は十数社でテスト中だとか。しかし、佐伯社長が将来的に目指すのは「脱金型」。ニッケル基超々合金を用いて、自社で航空機用部品を製作したいと考えています。 「金型は結局、得意先企業の設備なので、景気が悪くなれば発注が控えられるなど、自社努力でどうにもならない影響を受けます。特殊な金型づくりのために必要な設備と技術を有する当社は、金型だけでなくあらゆるものづくりが可能だと自負しており、社員にも、自分たちが作っているものはこれだというのを見せてやりたい。非常に硬いとされるものを加工できる特殊な技術は当社の強みであり、さまざまなニーズに応えられると思っています」。
同社の独自技術の高度化に向けた日々の取り組みに対して、昨年には「大阪ものづくり優良企業賞2018」の「夢・未来・ORIST賞」が授与されています。まさに「夢」ある「未来」が期待される企業です。
▲研究開発型企業の同社にとって、技術者の確保は大きな課題。
ハイテン工業株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 佐伯 知哉 |
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本社 | 堺市美原区平尾679 |
TEL | 072-361-8110 |
設立 | 1950年創業 1961年設立 |
資本金 | 1,200万円 |
従業員数 | 43名 |
事業内容 | 冷間・熱間鍛造用金型の設計・製造・販売 |
ホームページ | http://www.hiten.co.jp/ |