インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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投薬瓶の豊富な実績が評価されて、より品質基準の厳しい化粧品業界へ ケーエム化学株式会社

瓶本体からキャップの製造、目盛りのプリントまでを自社内で

 ケーエム化学株式会社は、調剤薬局で処方される水薬などのための投薬瓶や軟膏容器のメーカーとして、1978年に創業。今では、無色透明なクリアボトルやカラーメモリ投薬瓶、乳児用投薬瓶、点鼻容器など、多様な用途に応える豊富な製品バリエーションを誇っています。
 その同社の一番の強みは、これらの製品のほぼ100%近くを自社内の設備で製造していることにあります。例えば、瓶本体のような中空状態の製品を作る"ブロー成形"と、キャップの製造に適した、金型の空間に樹脂を注入して成形する"インジェクション成形"、さらには高品質なボトル成形に最適な"1ステップストレッチブロー成形"の全ての技術と設備を持っているメーカーは珍しいといいます。驚くのは、カラーメモリ投薬瓶の、ボトルに施された目盛りのプリントも自社で行っているということでした。ほぼ全ての工程を自社内で完結させようと考えた理由を松尾良高社長にうかがいました。
 「最初は、キャップなどは外注していましたが、取引先が倒産したり、あるいは納期が間に合わなかったり、といったことから、自然と社内に設備を整え、自社製作するようになりました。結果的には、そのほうが納期管理や品質管理も円滑になり、将来的にはボトルへの塗装や、外箱の製作も自社でやってしまおうかと考えているところです」。金型も機械も備えていれば、万が一の在庫切れにも、即対応できる。そこもまたメーカーとしての強みだと考えられています。


▲98~99%までを自社生産してるという、ケーエム化学オリジナルの製品ラインナップ。

堺市に4つの工場を集約し生産効率が飛躍的に向上

 ところで、同社が堺市南区に移転してきたのは2015年。それまで、八尾市に3つの工場と奈良県広陵町に1つの工場を有していましたが、生産効率が悪いということで堺市内の現工場への集約を決めたといいます。
堺市を選んだ理由は、「自宅に近いから(笑)」と話す松尾社長ですが、移転によって、思っていた以上の効果が得られたとか。
 「新工場の建設にあたっては、もとからあった運輸倉庫の建物に加えて建て増しも行い、同時に機械を2台、新規に導入しました。併せて、1か所に全ての機能を集約したことで、生産効率が高まったうえに、在庫の無駄がなくなって、逆に遊ばせる機械が出てきたほどです。生産量が落ちたわけではないのにです」と語っています。
 想定外だったのは、ものづくり企業の集積地である八尾と異なり、すぐ近くに工具屋がないこと。「うちは、機械の修理や改善も自前でやってしまうので、ドリルなどの工具やネジが必要な時にすぐに手に入ると助かるんです」。しかし、その一方で、堺市や堺市産業振興センターの、中小企業1社1社のきめ細かく、丁寧なサポートがありがたいと語っています。実際に、新工場に新たなコンプレッサを導入するにあたって、堺市の「スマートファクトリー・スマートオフィス導入支援事業補助金」の支援を受けています。
 「これまでこうした支援を受けたこともなかったし、制度について知らせられることもなかったのですが、堺では、工場の建設中から堺市産業振興センターのサポートを受けました。身近に相談できるのがいいですね」。


▲新工場では3つの工場に分散していた製造ラインが集約され、格段に生産効率が向上した。

PET樹脂成形の技術力が評価され、化粧品容器を受注

 自社でほぼ全ての製造工程を完結させようという同社では、新たな製造技術の獲得や、新製品の開発に積極的に取り組んできたそうです。乳幼児が簡単に開けられないように考えられたセーフティキャップも、最近はよく見かけるようになりましたが、同社では20年以上前に開発しています。しかも、既存のキャップの上にかぶせるだけの簡単な機構なので、低コストなうえ、必要に応じて用意できるため無駄がないのが特色です。
 また、PET樹脂のボトルは、縦と横の2方向で伸ばすため樹脂の強度が増し、落としても割れにくいという特質を備えています。しかし、その成形機が非常に高価なため、常識的に考えれば、ある程度の仕事量が確保されなければ導入に二の足を踏むところを、同社では、具体的な製品化が見えないうちから、勉強のためにと1台導入したそうです。それが業界初となった無色透明の投薬瓶の開発につながりました。
 また、投薬瓶の製造を通じて高めてきた技術力が認められて、最近では、化粧品の容器の注文が入ってくるようになったそうです。樹脂加工の中では、最も厳しい品質基準が設けられている業界ですが、より高付加価値なものづくりに取り組むことができると松尾社長の期待も高まります。
 「将来的には、投薬瓶の製造事業と並ぶ、もう一つの事業の柱に育てたい。夢は、そのラインのための新工場建設ですね」と松尾社長。堺への移転を契機に、さらなるステップアップが図られようとしています。


▲厳しい基準で検品する当社の高品質なものづくりが信頼され、化粧品業界への進出も果たした。

ケーエム化学株式会社

代表者名代表取締役 松尾良高
本社堺市南区若松台3-1-2
TEL072-350-3830
設立1978年設立
資本金1,000万円
従業員数20名
事業内容各種医療容器、理化学・臨床・製造販売
ホームページ https://www.km-kagaku.com/

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