インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
「ポンと入れるだけ」を切り口に薬剤のタブレット化で急伸
浴槽の中で泡を出しながら溶けてゆく入浴剤や、洗濯機の中に入れるだけで洗濯槽を洗浄する固形洗浄剤、キッチンの排水口用ヌメリ取り剤など、私たちの暮らしの身近にあるケミカル錠剤の製造販売を行っているのが、LETSONE株式会社です。
創業は1947年。当初は油脂製造販売を行っていましたが、やがて電話用品の販売や電話消毒サービス業へ。その後、電話機の送話器に取り付ける電話消毒剤の製造を始めたのが、今日の事業の原点のようです。
現在は、粉体・粉末の小分け充填と、その粉末の錠剤加工という、「粉末」と「錠剤」の両方で独自の技術を確立させ、OEM製品を含めて多種多様な製品づくりを行っています。
「粉末薬剤を錠剤にするというのは、大手化学メーカーが固形の発泡性入浴剤を発売し人気を得たことが大きなヒントなりました。"ポンと入れるだけ"を切り口に、それまで粉末だった入浴剤や洗浄剤などのタブレット化を急速に進めてきたのです」と和田信二社長。もちろん、単純に固めればいいものではなく、用途によって錠剤の機能も、発泡しながら溶けるもの、崩壊して溶けるもの、徐々にゆっくり溶けるものがあり、配合する薬剤の設計も同社が行っています。
ただ、家庭用品品質表示法に基づいて、成分名を表示しなければならず、それによって類似品が数多く世の中に出回ったとか。同社では、大量生産が求められる100円ショップ用の商材を多く手掛ける一方で、高付加価値な製品づくりを目指していきたいと考えています。
▲粉末と錠剤それぞれの特性を生かしたOEMを手がけるほか、衣料用消臭スプレーなどの自社ブランド製品も本格的に発売をスタート。
本社・工場の集約を目的としてアクセスの良い堺市北部に移転
長く大阪市で操業してきた同社ですが、2018年に本社を堺市に移すとともに、社名も「第一商事株式会社」から、現在の社名に変更しています。そこに込められた思いをうかがうと「創業時は全国に販路を持って、電話用品の販売などを行っていたので、こうした社名をつけたのでしょう。ものづくりが主事業になってからも、その社名を大切に使ってきましたが、商事という社名が、海外製品を仕入れて販売しているような印象を与えるという助言をいただき、変更することにしました。新社名には、3カ所にあった拠点を一つに集約し、全社が一つ、ワンチームになって進んでいこうという思いを込めています。あわせて、錠剤の英語表記"TABLETS"のLETSと、第一商事の"一"を表しています」と和田社長。
堺市への本社移転については、以前から分散している3つの工場を一カ所にまとめたいと考えていたところ、堺第一工場の斜め前に売り土地が出たことから移転を決めたといいます。決め手となったのは、「すでに堺に工場があり、大学時代に住んでいたこともあって土地勘があったこと。さらには広い土地が大阪市内より比較的安く購入できる点が挙げられます。大阪市内にも近い利便性の高さも大きな要素でした」と話しています。
移転してから気づいたのは、堺市が産学官連携に積極的な地であり、また行政側から支援に関する情報を持ち込んでくることだったといいます。「大阪市にもそうした支援制度があったのかもしれませんが、知る機会がありませんでした。堺市ではさっそく、堺市中小企業研究開発機能強化支援補助金を申請し、認可されましたし、求人活動をしていた当社にさかいJOBステーションを紹介いただき、若い人を3名採用できました。採用後も定着させるための支援を行っていただいています」。
経営的な効果としては、本社工場と堺第一工場を近くに集約できたことで省力化が図れたほか、人員配置に無駄がなくなったことは大きいと語っていました。
▲処方・仕様通りに原料の混合を行う。その処方などについては、実績豊富な当社から提案することも少なくない。
自社のオリジナルブランドとして消臭スプレーや古墳型入浴剤を発売
最近では、炭酸スパとして美容院で使用される錠剤のほか、変わったところでは住宅設備関連企業からシャワーヘッドの中に内蔵する薬剤のオーダーもあったといい、錠剤加工へのニーズは業界を超えて広がっているようです。
また、昨今の香りブームで注目されているのが、同社が商標登録をしている香料含浸用錠剤「フローラレット」です。香料をよく吸収する特殊ケイ酸カルシウムを、オーダーに応じてリングやハート型など自由な形状で製造するもので、自動車の芳香剤から防虫忌避剤、空間除菌剤などさまざまな展開が可能で、販売チャネルもカー用品店やドラッグストアだけでなく、雑貨店などにも拡大しています。
こうしたなかで同社では、自社のオリジナルブランドの立ち上げを考えており、すでに昨年7月には、※クラウドファンディングを活用して衣料用消臭スプレー剤「A-genty」を製品化しています。加齢臭が気になり始める世代の男性をメインターゲットに開発されたもので、正式な発売を前にすでに反響もあったとか。
さらに、和田社長が思い描くビジョンは、地域に根ざす企業です。「まず、百舌鳥・古市古墳群が世界文化遺産に登録されたのを記念して、古墳型のオリジナル入浴剤を作りました。今年の発売予定です。今後、地域のためにどういったことで貢献できるか考え、実行していきたいですね。いつか、本社と向かいの工場の間を通る道が"レッツワンストリート"と呼ばれるようになれたら(笑)」と語っていました。
※クラウドファンディング
インターネットを通じて、不特定多数の人から資金を募ること。
▲包装する前の検品では、外観はもちろん、重量や色調なども丹念に検品を行う。
LETS ONE株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 和田信二 |
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本社 | 堺市北区常磐町3-12-3 |
TEL | 072-259-0101 |
設立 | 1947年設立 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 53名 |
事業内容 | 粉末薬品の錠剤加工、受託・企画、電話消毒薬の製造、トイレタリー製品の企画・開発 |
ホームページ | http://www.letsone.co.jp/ |