インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
現工場への移転を転機に、台湾や韓国へも販路を拡大
別珍やコール天などパイル織物の染色工場に勤めていた創業者・小谷卓氏が、その工場で使用される染色助剤や仕上げ剤の開発にも携わっていたことから、それを本業とする「IST化学研究所」で起業したのは1965年のことでした。摩擦堅牢度向上剤や光沢ツヤ出し剤などのヒット商品を世に送り出して、1977年に現在の臨海工業地帯に新工場を建設、移転しています。それが、同社が急成長する大きな転機となったと小谷昇社長は語っています。
「ものづくりに専念できる環境が整えられ、海外は台湾や韓国へ販路を拡大させるなど、国内外で販売先が一気に増えました。当社の製品開発は、お得意先から『こんなものができないか』という要望をいただいて、それに応えるスタイルです。全国に増えたお得意先から寄せられるさまざまな要望に面倒がらず、真摯に応えているうちに、当社の製品の幅も広がってきたといえるでしょう」。
▲機械だけに頼らないモノ作りを重視。
得意先からの要望にまずは「NO」と言わない
お客様から持ちかけられたテーマに対して、基本的に「できない」とは言わないと小谷社長。研究室に掲げられたホワイトボードには、お得意先から預かったテーマがいくつも貼ってありました。
「もうずいぶん長い間、貼ったままのものもあります。しかし、常に目に触れるところにあることで、何かの拍子に解決につながるアイデアを思いつくかもしれませんし、別の薬剤の開発がヒントになることもあります。何年も経ってから実現できる方法を見つけて連絡したら、『よく覚えていたね』と言っていただき、それが強い信頼関係につながっていることもあると思いますね」。
さまざまなオーダーがあったなかで、変わったものでは、ある温泉町の町おこしとして、衣料品に塗布して着ると温泉のようにポカポカする機能を付与する薬剤でした。苦労を重ねて、温感効果のある成分を、化粧品のように皮膚から吸収できる薬剤にすることに成功。それを使われたTシャツが作られ、大変喜ばれたということです。
▲ホワイトボードに貼られた未解決の開発テーマ。常に頭の中にあることが、やがてアイデアを生むことに。
信頼を裏切らないものづくりで非衣料分野にも進出
同社が開発したロングヒット製品には、毛玉の発生を防止するピリング防止剤や花粉付着防止剤がありますが、独自に技術開発した薬剤については、一切特許申請をしない方針だとか。その理由について、小谷社長は「特許を申請するには、製法などの情報を開示する必要があり、競合他社にヒントを与えることにもなります。代わりに公証制度を利用して、知的財産権として保護を図っています」と語っていました。
これまで長く、アパレルメーカーなどの衣料産業に貢献してきた同社ですが、衣料の約90%が海外生産となった今日、テントや傘地、マスク、カーテン、マットといった非衣料分野へも進出しているほか、さらに、撥水剤や消臭剤、抗菌剤をスプレーボトルにしたものがアウトドアメーカーなどのOEM製品として発売されています。最近では、『メディカルジャパン』に出展したことをきっかけに、看護服や介護服を専門にクリーニングしている企業からの引き合いもあったといいます。
「コタニに言えば何とかしてくれるという信頼に、これからも真摯に応えていきたい」。常に誠実にものづくりに向き合ってきた同社の自負を感じる小谷社長の言葉でした。
▲完成した薬剤はパレットごとに整理され、出荷を待つ。
コタニ化学工業株式会社
代表者名 | 代表取締役 小谷 昇 |
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本社 | 堺市西区築港浜寺西町13-14 |
TEL | 072-268-0291 |
設立 | 1965年創業 1973年設立 |
資本金 | 2,250万円 |
従業員数 | 20名 |
事業内容 | 繊維加工用薬剤および仕上剤の開発・製造・販売 |
ホームページ | http://kotani-chemical.co.jp |