インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
相次ぐ若手従業員の退職に会社を大きく変えることを決意
主に、ネスティングラックやクロスサポーターといった物流機器を製造販売している新川製作所。溶接ロボットが火花を散らしている工場内には、あちらこちらで若い技術者たちの姿が目につきます。しかし、つい4年ほど前は若手の退職が相次ぎ、20~30代前半の社員はゼロだったとか。どれだけ実績があり、良い製品を送り出していても、技術者が定着しない組織はダメだと危機感を抱いた新川浩社長が、2017年10月の社長就任後に真っ先に着手したのが、従業員がやり甲斐を持って働ける仕組み作りでした。
「大学を卒業して他社で9年間勤めた後に当社に入社し、最初にうちの強みを探してみたら、『約束を守る』という実直な風土でした。それはもちろん、確実に納期を守るということでもあり、当社への信用、信頼につながっていました。今も誇るべき信条・社是として大きく掲げています。しかし一方で、一人ひとりの職人の勘ややり方に任せた旧態依然とした現場では、若手は定着せず、このままでは企業としての発展が見込めないと、工場長に『5年をかけて、一緒に社風を変えよう』と訴えたのです」。
▲溶接ロボットを操作する若手技術者
従業員同士が関わり合う仕組みで不安や不満を払拭
会社としてのルール作りのスタートとして、まず制服を作り、会議室を整え、何より一番の大仕事は統一された作業手順書を作成することだったといいます。
「それまで教える人によって手順が異なり、部品の名前などの用語もバラバラでした。それをみんなで検討して、作業手順を統一する作業を行ったのです。そのプロセスは、ISO認証の取得プロセスと同じだと考え、思い切ってその取得も目指しました。そこで従業員同士の会話が生まれたのは良かったですね。これにより誰もが悩まない、迷わない指針ができました」。
同時に新川社長は、それまで仕事への不安や不満から若手が辞めていっても、他の従業員は無関心だった状況を変えようと、お互いに関わり合う仕組みを2つ作ったのです。1つは、その月に頑張った人を全従業員で投票して決める「MVP制度」。投票するためには他の人にも関心を持たざるを得ないのと、選ばれた受賞者は、自分の頑張りが仲間たちから評価される喜びを持つことができます。
そして2つ目は、若手社員と先輩が2人1組になってマンツーマンで指導する「バディ制度」。若手社員がその日の仕事の疑問や不安を持ったまま帰ることのないよう、仕事が終わった後に必ず、2人で終礼を行っています。「その時に大事なのは、インプットではなくアウトプットさせること、ただただ傾聴してやることも大切です」と新川社長。若手社員には、幅広いスキルを持った多能工に育って欲しいと定期的に勉強会を開いたり、さまざまな現場を経験させたりしています。昨年10月に、同社として初めて特許を取得した技術も、そうした技術研修会で、当時入社2年目の社員が考えたアイデアも参考になったそうです。
こうした取り組みにより、その後入社した若手社員は、別の事情で退職した一人を除いて、離職者はなし。現在は10人の若手社員が活躍しています。
▲導入時より溶接ロボットに携わってきた顧問と、勤続9年の技術主任。日々ものづくり技術の継承に励む。
第2工場も始動
新たなフィールドへの進出を
1958年にパイプ製の脚立や運搬用一輪車の製造などで創業した同社は、その後、メッシュパレットなど物流機器の製造を手がけるようになりましたが、低価格な海外製品に押されたことから、まだ海外製品に対抗できるネスティングラックとクロスサポーターの2製品に特化したメーカーへ転換。昨今のネット通販の急伸もあって、安定した受注を獲得しています。強みは、素材の鉄鋼を大量にコイル買いし、肉厚を自社で指定するなど、高品質な製品を低価格で提供できることと、約50年前の発売当時から導入している溶接ロボットの豊富なノウハウです。
「若手も増え、この3月から第2工場が始動しました。これからは、物流機器にこだわらず、建設業界など新たな業界へも進出していきたい」と新川社長。若手社員たちを見つめる兄貴のような温かい眼差しが印象的でした。
▲新川社長から大きな期待がかけられている若手社員たち
株式会社新川製作所
代表者名 | 代表取締役 新川 浩 |
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本社 | 堺市中区陶器北98-2 |
TEL | 072-234-2261 |
設立 | 1958年創業 1968年設立 |
資本金 | 1,300万円 |
従業員数 | 20名 |
事業内容 | クロスサポーター・ネスティングラックなど物流機器製造販売、各種鋼材・配管の加工・販売 |
ホームページ | http://shinkawa-g.jp/ |