インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
価格競争に巻き込まれないよう技術を磨き、新たな業界へ
1934年に自転車部品の製造から始まった和田精工株式会社。戦後はボールベアリングのメーカーとして事業を拡大させていきました。しかしその後、ベアリング業界の競争が激化したことから価格が崩れたため、より付加価値の高い製品づくりを模索。ベアリングに樹脂を巻きつけたプーリーの技術開発に乗り出して成功し、特許を取得しています。1970年代当時はまだ、樹脂という素材への信頼性が低く、すぐには採用されませんでしたが、やがて最大手の農機メーカーで導入されると、瞬く間に市場は拡大。大手メーカーが次々と参入したことから、価格競争に巻き込まれる前にとプーリーの製造から撤退しました。
こうした事業の変遷から伝わってくるのは、「自社の技術を安く売らない」という確固たる信念であり、新たなフィールドを開拓できるという技術力への自信です。それは戦後間もない1946年から自社製品に「WTW」というブランド商標をつけてきたことからもうかがえます。
▲高品質な射出成形品を製造する樹脂成形機
多様な業界に携わったことが大きな強みに
今ほど一般的でなかった時代から樹脂成形に携わってきたことは、素材の研究開発から始めなければならなかった苦労があったとしても、今日の和田精工の大きな礎を作ることになったといえます。そして、1985年のプラザ合意によって円高が進み、大幅なコスト削減が求められるなか、プラスチックの需要が急速に伸びたのです。
今では、医療機器から化粧用品、文房具用品、自動車関連とさまざまな業界の樹脂成形に携わっており、それが同社の大きな強みとなっていると和田一宏副社長。「業界が違うと、樹脂を成形するノウハウも違うんです。それはベアリング製造においても同じ。多種多様な業界とおつきあいをしてきたことで、どのような要望にも応えられる技術を磨いてこれました」と語っています。
プラスチック製品でイメージされるのは大量生産品ですが、同社では写真の現像機や業務用エアコンなどのエンジニアプラスチック成形の小ロット生産にもこだわってきました。そして介護用のロボット機器のOEM生産を行っている同社は、設計もできる完成品メーカーを目指しています。
▲豊富な経験と最新技術に裏打ちされた和田精工の高精度なボールベアリング製品。
左下はスクリューネジ
完成品メーカーを目指して人材教育にも注力
部品メーカーから完成品メーカーへ。その目的のもとに、社内の教育体制も大きく変わったと枡谷宏典常務。製造ラインには産業ロボットを積極的に導入する一方、技術者の資格取得を推進しています。社内に1人しかいなかったプラスチック成形技能士1級の取得者も、今は6人。第三種電気主任技術者の有資格者も増えています。これからのものづくりに大切だと枡谷常務が語る「発想力」はロボットからは生まれてこないのです。
今後について、まずはこれまで外部協力会社に依頼していた大型の射出成形も引き受けられるように社内で設備を整え、「和田精工なら全てが揃う」といわれる企業にしたいと和田副社長。そして、「さかい健康医療ものづくり研究会」にリーダー的な立場で参画する同社は、介護ロボットを発端に、いつかは自社ブランド製品の立ち上げをと考えています。
▲検査室で一つひとつを丁寧に検査
和田精工株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 和田 芳弘 |
---|---|
本社 | 堺市堺区北庄町2-3-11 |
TEL | 072-229-1485 |
設立 | 1934年創業 1954年設立 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 60名 |
事業内容 | ラジアル玉軸受・ラジアル玉軸受を利用した機能部品の製造・販売、プラスチック成形品の製造・販売 |
ホームページ | http://www.wtw.co.jp/ |