インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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IoTで何を変革するのかその戦略を考えるべきは経営者自身 ピンクボックスコンピューター株式会社

ハードウエアのほうが儲かるとプログラミングできる電気屋へ

 「Platform inKnowledge(知識のプラットフォーム)を略して「PinK」、さらには工場の中でも目立つように、自社製品をピンク色に塗装し、「ピンクボックス」。それが社名の由来だとか。実際は顧客の要望でクリーム色に落ち着くことが大半だそうですが、「この社名にして良かったのは、一回で名前を覚えていただけること」と和田三央社長は語っています。
 大学で電子回路とソフトウエアを学んだあと、大手情報通信建設会社で、特注品案件の実現性の検証やコスト計算に携わっていたという和田社長。最終的にハードウエアを納品する外注先が最も利益を得ていることから、そこを担おうと2002年に独立しました。和田社長が得意とする電気回路の製作とソフトウエアの開発の両方ができるシステム開発会社は少なく、それぞれ別に発注した時よりコストが抑えられながら、より良いシステムを提供できることを強みとしています。和田社長の言葉を借りれば、「プログラミングのできる電気屋」とのこと。
 IoTという言葉がなかった20年近く前からITソリューションに関わってきたことについて「需要を先取りしようとしましたが、早すぎた感はありますね(笑)。ただ、"見張る"という機能については当時から監視カメラがあり、それをビデオテープに記録・保存していたのを、コンピューターで保存したり、インターネットを通して遠隔監視したり、またカメラを遠隔操作したりするというシステムはよく売れました」と和田社長。
 かつては機械のために電話回線を1本引くコストも決して安くありませんでしたが、現在はインターネット回線やFA機器といったハード面でのコストも下がり、IoTを導入しやすい環境になりました。それでも和田社長は「経営者が必要性を認めていないIoTなど、導入する必要はない」と言います。


▲小型コンピューター「ラズベリーパイ」と、入出力基板

自社の課題と解決法を見極めたうえでのIoTの導入を

 「いくらハードウエアが手に入りやすくなったとはいえ、システムの開発には100万円単位でコストがかかります。自社の売上や利益から考えて、IoTへの投資がいくらまでなら採算が合うのか、または、目標の利益を上げるために、IoTの予算がどこまで組めるのか、それを考えるのは経営者の仕事です。自社の工場にどのようなシステムが必要かは、製造ラインを持っている側で把握しておくべきことです」と語る和田社長。同社がものづくり企業のIoTを支援するケースで最も多いのは、FA商社やFA機器メーカーが機械の売り込みに回った先で、「こんな機能がついていたら欲しいのに」という特注案件で紹介されることだとか。和田社長は、こうして自社に必要なものが何かをはっきりと見極められていて初めて、IoT導入の意味があると考えています。 「IoTをどのように導入すべきかが漠然としているのなら、コンサルタントなどの専門家と一緒に自社の課題や解決方法を洗い出すことから始めるべきで、当社がお手伝いできるのはその後です」。
 実際に和田社長が堺市産業振興センターから紹介された小泉製作所もそうしたセンターのスマートものづくり導入支援センター事業を利用した企業でした。「初めてうかがった時には、メッキ水槽の液面管理にIoTを活用したいとテーマが具体的でした。しかも、どういった機器を使って、どのようにプログラムするかまで、小泉社長自らが積極的に関わってこられ、最終的には液面を制御する装置は、オリジナルを製作するまでもなく実績のある市販の機器を利用することにしました。そこからネット回線につなぎ、その信号をコンピューターで監視するシステムを当社で開発したのです」。


▲電気回路にも精通したシステム開発会社は少ない

既存の設備や市販品を利用した「最後の1マイル」の支援も

 「ネットワークにつながっていないコンピューターはその能力の半分も発揮していない」という言葉は、今では当然のことと思われますが、製造業の現場では、まだまだネットにつながっていないコンピューターがたくさん存在していると和田社長。その企業の生産体制によってはIoTの導入が絶対ではないとしながらも、一方で「売上は大きいのに利益が上がらないとか、製造が間に合わないといったことも、実は機械がエラーで止まっている時間が長かったり、原材料の投入など人の作業を機械が待っている時間があったりして、IoTで機械の稼働状況のデータを収集・解析すれば、その原因を見つけ出すことができ、新たな設備投資が不要になることも少なくない」と、そのメリットを挙げます。
 和田社長は最後に、「わかりやすく言えば、自社の機械に教えてほしいことがあるのか、ないのか、なんです。上位システムといって、現在すでに稼働している既設の機械に足りないものを、後付けでシステムに組み込むこともできます。中小のものづくり企業においては、一からシステムを開発しなくても、既設のインフラや市販の製品などを利用する方法もあります。家の近くまで整備されている電柱から、わが家に電線を引き込むように、"最後の1マイル"だけを自社に最適なものにすればいいのです。当社はその1マイルをお手伝いさせていただきます」と語っていました。


▲「IoTによって何を変えるのか」課題の抽出は経営者の仕事だと語る和田社長
成功のポイント

和田社長は、大手メーカーに依頼すれば高価になりがちなIoTシステムを、既存インフラや市販部品を使うことで、中小企業に手の届くシステムとして提供している「プログラミングのできる電気屋」さんです。エンジニアとしての高い能力・提案力と共に、気さくな人柄により多くの顧客から信頼を得ています。


ピンクボックスコンピューター株式会社

代表者名代表取締役 和田 三央
本社堺市北区百舌鳥本町3-422
TEL072-259-2185
設立2002年
事業内容コンピューターと制御装置を用いたシステムインテグレーション全般、コンピューターハードウエアおよび周辺機器の企画・開発、コンピューターソフトウエアの受託開発など
ホームページ https://www.pinkbox.co.jp/

貸会場のご案内 TEL 072-255-0111 FAX 072-255-3570 ご案内ページはこのボタンをクリック