インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
産業用熱交換器に特化し開発力や技術力を高め続けて
創業から70年余りの歴史を誇る境川工業株式会社。産業用熱交換器の専業メーカーとして、産業機械に内蔵される熱交換器をはじめ、船舶や醸造工場、自動塗装エリアなどで使われる空調設備機器などを独自に開発し、多岐にわたる業界でその高い技術力が生かされています。
とりわけ同社が強みとしているフィンチューブ式熱交換器では、長年に積み重ねた知見や経験をもとに、より高効率でコンパクトな製品の研究開発を進めており、2019年には熱交換効率を15%も向上させた熱交換器を製品化。生産性を上げるばかりでなく、一次エネルギーの削減や炭酸ガスの排出量の抑制など環境保全にも貢献するものと評価され、「第5回シマノものづくり大賞」の特別賞を受賞しています。
このように同社では環境保全に向けた取り組みに積極的で、高効率化・コンパクト化を追求して熱資源の有効利用や資源の省資源化に貢献していることはもちろん、同社が独自に開発した溶剤回収用ステンレスコイルは、生産工程で溶剤ガスの発生する生産現場や環境プラントなどで採用されています。
また、得意とする耐食性に優れた材質で作る熱交換器も、これを製作できるメーカーは他には少なく、特に注力している溶接技能をはじめ、同社の技術力の高さを裏付けたものといえるでしょう。
▲新設の美原工場は、本社工場とほぼ同じレイアウトで設計。新事業も見据えて、1ライン増設されている。
新工場を建設中のコロナショック
じっくりと丁寧な準備の時間に
スマートフォンやノートパソコン、また最近普及の進む電気自動車などで欠かせないリチウムイオン電池の需要が伸びていことから、その製造機械に組み込む熱交換器の同社への発注量も増大し2~3年前から本社工場内が手狭になったといいます。「安全で快適な職場環境を維持する必要があり、何よりも納期を守るためにも工場の拡張を図る必要がありました」と眞田博之社長。
3年ほど前から新工場の増設を計画し、本社工場に近い立地で決定したのが2019年春。2021年の年明けからの稼働に向け工事を進めていたなかで、新型コロナウイルスの流行が始まったのです。
「経済活動が停止したので、まずは金融機関から予備の運転資金を確保しました。当社も大きな影響を受けましたが、幸いにも他業種のような8~9割減というほどの落ち込みはなかったため、それを使い切ることはありませんでした」と語る眞田社長は、むしろ新工場の本稼働に向けたさまざまな準備をじっくりと丁寧にできる時間になったと振り返ります。「一昨年までのあの忙しさの中で操業を迎えていたら、準備に見落としがあったかもしれません」。
そうは言っても、社会全体が先の見えない不安感に包まれた時期です。そこで従前からの計画通りに工場建設を進めたことが、社内に向けても大きな安心感をもたらしたことが想像できます。
「急激に産業機械が必要とされなくなるとは思えません。設備投資は必ず行われるからです。ということは、熱交換器の需要も必ず戻ってくる。逆に、コロナ禍にあって凍結された設備投資が一気に立ち上がってくることも考えられますし、またお客様の運営方針が変化する可能性も考えられます。それらに柔軟に対応できる体制を整えておくことが大事だと考えました。一方で、社員の健康が突然に脅かされる事態が起こるとはこれまで考えもしなかったことです。今回のコロナショックを機会に、危機管理の一つとして、感染予防対策は継続して徹底すべきだと思っています」。
▲生産ラインの乾燥工程で使用される、熱風発生用のプレートフィンヒーター
あきらめずコツコツと誠実に今できることに取り組む
ところで、コロナ禍にあって大きな影響を受けたのは営業活動だったといいます。感染拡大防止のために移動の制限などがあり、信頼関係のまだない新規顧客の開拓については、対面営業ができないために苦心されたとか。既存顧客との打ち合わせに活用したWeb会議システムについては十分な設備が整っていなかったため、堺市産業振興センターの「デジタルトランスフォーメーション導入促進支援」を受け、プレゼンテーションツールの整備を図ったといいます。
一方で、同社では以前から自社で独自に開発していた「能力計算プログラム」や「見積もり積算プログラム」を使っての提案活動を行っており、オンライン営業においても役立ったようです。
今回のコロナショックに限らず、バブル崩壊やIT不況、リーマンショック、大震災と多くの経営危機があり、それらを先人たちは乗り越え克服し、さらに経済を発展させてきた歴史があると眞田社長。「事業を行っていくなかで、こうしたことが突然に起こっても不思議ではなく、今はとにかくあきらめず、地道にコツコツと誠実に事業を進めていくだけ」と語っています。
「新工場の事務所は機能的であるうえに、デザイン的にもモダンなものにしました。社員がいつもイキイキと働く、小さくても誇りの持てる"グッドカンパニー" を目指しています。お客様からも品質、納期、価格、対応のあらゆる面で満足いただき、信頼される企業でありたいし、さらには地域にも貢献できればと考えます」。今後は、熱交換器単体だけでなく、その周辺の事業も手がけていきたいと、新工場の稼働を迎えての抱負を語っていました。
▲溶接技能の高さを自負する境川工業。
溶接士の資格取得を積極的に進めている
成功のポイント
産業用熱交換器は、性能そのものがエネルギー(環境) コストに跳ね返るため、同社は産官学あげて性能向上に取組んでいます。技術開発の結果こそが、多くの顧客の信頼はもとより、地球環境保全の一助となり、社員のモチベーションと境川工業の発展につながっています。
境川工業株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 眞田 博之 |
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本社 | 堺市美原区大保210-1 |
新工場 | 堺市美原区丹上320-1 |
TEL | 072-361-3085 |
設立 | 1947年創業 1948年設立 |
資本金 | 1,200万円 |
従業員数 | 40名 |
事業内容 | 産業機械用熱交換器および空調用ヒーター・クーラーの設計・製造 |
ホームページ | https://sakaigawa.co.jp |