インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
堺緞通の製造・販売に始まり、産業用高機能包装材の製造へ
創業は1885年。136年もの歴史を誇る堀富商工株式会社ですが、堀畑敏一社長は「常に気持ちは"創業者"」と語っています。この言葉通り、同社では歴代の経営者が、先代が成功した事業に安住せず、その時代の要請に応えて事業を変遷させてきた歴史があります。
始まりは明治期、紡績の材料である綿花の梱包に使われていた麻袋に目をつけた創業者が、その麻袋をほどいて紡ぎ直した織物を芯地に堺緞通を製造し、アメリカに販売したことでした。やがて2代目は、戦時中に軍服や銃器の防水梱包の製造販売に携わり、「鉄は国家なり」といわれた高度経済成長期には、3代目が鉄を錆びさせない包装材を開発。ほとんどの製鉄会社を得意先としていたといいます。
そして今日、堀畑社長が展開する事業は「高機能フィルムコーティング製造」「フレコンバッグや物流機器の製造販売」「自動化機械の販売」の3本柱。なかでも高機能フィルムコーティング製造においては、大阪の他に福島県いわき市にも製造拠点を設け、世界的にも数少ない最大3.7mまでの超広幅ラミネートコーティング設備や、3m幅のものにも防錆・防滑・抗菌などの液剤をコーティングできる世界最大の設備を備えています。「塗る・貼る」という加工から「巻く・切る」までを一貫生産できる総合加工メーカーは世界的にもあまり例がないということです。
▲得意先から営業が持ち帰ってきた課題については、帰社後にすぐ、立ったまま行う「立ち会議」で製造、生産管理の担当者も含めて情報を共有。
トータルコストの削減を提案するソリューション・サプライヤーに
同社が大きな競争力を発揮している理由の一つは、堀富商工の社名が示す通り、製造業と商社の両方の役割を担っているところにあるように思えます。製品を作っている、あるいは既製品を販売するというだけでなく、得意先の工場の状況をしっかり見極めた上で、同社の製品を採用することによる工程の削減や省人化、物流コストの低減までを提案しており、堀畑社長は「当社はプロダクト・サプライヤーではなく、ソリューション・サプライヤーです」と話しています。
「単に製品を売るだけだと価格競争に陥りやすい。お客様のコスト削減といった課題に工場全体のトータルコストで応えることは、お客様と当社の双方に利益のあることです。数年前からヨーロッパのメーカーと独占輸入契約を結び、梱包に関わる自動化ライン装置や、製紙ロールなどの自動立体倉庫設備などを販売、定期メンテナンスまでを請け負い始めたのもそうした考え方に基づいてスタートした事業です」と堀畑社長。
「製品開発のタネはお客様のところにある」と、同社では社員全員で常にアンテナを張り、すぐに動くことをモットーとしており、営業が受けた得意先の課題をすぐさま製造、生産管理担当とともに"立ち会議"で情報共有し、翌日までに必ず顧客にレスポンスしています。
それが可能なのは、「やってみなければわからない。だからすぐにやってみよう」という同社の行動指針でしょう。失敗をとがめられることを恐れて、行動が遅くなることを良しとしない考え方が社員全員に浸透しているようです。
▲さまざまな機能性ラミネート製品。
いくつもの経済危機を乗り越え企業を継続できたのは長年の信頼
同社がいわき市にラミネート工場を立ち上げてからのこの15年間にも、リーマンショック、東日本大震災に超円高、そして今回の新型コロナウイルスといくつもの経済危機がありました。それを乗り越えてきた理由をうかがうと「危機感から変わらざるを得ない状況となったのが、逆に良い方向へ進むチャンスとなった」とのこと。例えば、製造コストを削減するための工程改善を行ったほか、得意先の工場全体でトータルコストの削減を提案する方向に転換したのも金融危機によって需要が激減した時だったそうです。
東日本大震災では、いわき市北部が避難準備区域に指定されたため、いわき工場の社員とその家族皆で一緒に堺へ1ヶ月間避難しました。その時に、堺といわきの両工場の全社員とその家族がともに困難に立ち向かった経験から、全社の結束力が強まり、さらには自社が被災し長期断水で困った経験から、応急給水組立式タンク「ホリフトウォーター」の開発につながっています。
そして、今回のコロナ禍では、もともと手がけていた医師への感染症を予防する手術着のラミネート加工の技術を活かし、コロナ感染予防の使い捨てガウンにもいち早く取り組んでいます。
コロナによる営業活動の自粛によって気付かされたのは、いかに業務の進め方を各人のスキルに任せきりにしていたかということだとか。これを契機に、ヒト・モノ・カネの一元化を図り、さらに意思決定の瞬発力、逆境への対応力、行動に移すスピードを高めていこうと自社独自の企業資源計画に取り組む予定だと堀畑社長。
「136年という年月は結果であって、現在、大手企業がこれまでにない業績の悪化を招いているように、今日が良いから明日も、さらには1年後も10年後も繁栄しているとは限らないのです。苦しい状況下にあって大切なのは、お客様はもちろん、取引先や従業員とその家族みんなの応援と信頼です。信頼を築くのには長い時間がかかります。そういった意味では、老舗企業だということで得られる信用は無形の財産ですし、代々継承してきた『信義・誠実・共栄』の実践が、これまで企業が存続してきた秘訣なのだと思います」と語っていました。
▲10μから60μという厚みで、紙やフィルム、不織布などにラミネート加工を行う。
成功のポイント
同社は、経営理念である『信義・誠実・共栄』をベースに「やってみなければわからない。だからすぐにやってみよう」という行動指針と「立ち会議」に象徴されるスピード感を重視した経営姿勢が、危機に強い、変化への適応力の高い企業体質を作り出しています。
堀富商工株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 堀畑 敏一 |
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本社 | 堺市西区浜寺石津町東3-5-23 |
TEL | 072-241-3821 |
設立 | 1885年創業 |
資本金 | 3,460万円 |
従業員数 | 85名 |
事業内容 | 産業用包装資材の製造・販売 |
ホームページ | https://www.horitomi.co.jp/ |