インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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強みの複合材料接合技術で廃棄される端材を新製品に 下山商工株式会社

強度の向上やコストの低減が目的だった接合技術

 社名に「商工」とあるのは、1959年の創業当時は工場で使用する備品を仕入れて販売する事業も行っていたからという下山商工株式会社。現在は、鉄やステンレス鋼、アルミ、真鍮といった金属や樹脂の切削加工を行っているほか、そうした加工技術を活かして、蒸気・温水全自動洗浄機や超音波洗浄機、撹拌機スピード切替装置などカスタムメイドの機械を製造・販売しています。
このように設計から加工、組立までを社内で一貫生産できることが同社の強みです。
 そうしたなか、最近、新規事業として同社が注力しているのは、「iZAi」と名付けた複合素材を特殊接合する技術です。「もともとは、磨耗の激しいカッターの刃の先端部分だけに高価な超硬合金を接合することを提案し採用されたことがきっかけでした。刃の強度を格段に向上させながら、コストを抑えることができ、さらにいろいろな素材や用途に展開できるのではと考えたのです」と藤永誉社長。アルミと真鍮、鉄とステンレスといった金属同士のほか、金属と樹脂、ガラスと樹脂、金属と石など異素材を接合し一括加工する技術は、素材に合わせた接着剤の選定と、強固に接合させるための表面処理法など、同社が独自に獲得したノウハウから生まれたものです。プロモーション用に接合された鉄のサンプルは、接着面がわずか1cm2ながら800kgの荷重をかけても耐えられるそうです。
 この「iZAi」の技術を活かし、異なる素材を組み合せたインテリア用品を店舗や宿泊施設向けに開発、同社のオリジナルブランドとして来春に発売開始の予定です。それに先駆け年内に発売が予定されているのは、人工大理石と金属を組み合せた盆栽用鉢で都会的なデザインが目を引きます。
 ここで使われている人工大理石は、システムキッチンの天板などに使用されたものの端材で、多額な処分費をかけて廃棄されていたといいます。「環境問題を認識しながらも、一方で再利用されないまま廃棄されている端材がたくさんあります。iZAiの技術を使って、それらを再利用できないかと考えています」。


▲容器に付着した臭気を除去する温水蒸気洗浄機「エコウォッシュ」。温水・蒸気・乾燥を全自動で行う。

関心のあった環境問題を入口に持続可能な生産を考えて

 堺市がSDGsの達成に向けた取り組みを推進するために、今年5月に設立した「さかいSDGs推進プラットフォーム」。現在、307(9月10日現在)の会員が参加しており、下山商工もその一員です。
「たまたま、街でばったり会った堺市の職員の方にこのプラットフォームのことを聞き、その日のうちに参加を決めました」と藤永社長。20代の若い頃から沖縄県の宮古島でスキューバダイビングのガイドをしたり、国際イルカ・クジラ会議に出席したり、イルカと泳ぐために東京都の御蔵島へ通ったりしたこともあるといい、地球環境や特に海洋生物への関心が高かったそうです。
「ドキュメンタリー番組で観た、ウミガメの鼻にプラスチックのストローが刺さっている映像は衝撃的でした。何ができるのかはわかりませんが、まずは、できることから始めてみようと思ったんです。廃棄物を少しでも減らすという観点から、人工大理石の端材を活用することもその一つですし、SDGsのことを広く知ってもらおうと、周囲の経営者仲間に声をかけ、堺市の方を招いて勉強会を開催したこともあります」。
 しかし、最近でも胸につけているSDGsのバッジを見て「それは何?」と尋ねられることが少なくないとか。藤永社長は「奉仕活動として、水の衛生状態が良くないというタイへ浄水器を贈っていますが、SDGsという言葉が馴染みにくいのか、この国際的取り組みについてはあまり認識されていない。私自身も芸人さんが楽しくわかりやすくSDGsについて紹介するイベントなどに出かけて、ようやく理解したぐらいです。しかし、実はすでに何かしら取り組んでいることが、SDGsだったりすることもあります。まずは私のように、興味を持つことからスタートしてみてはと思います。確かに企業活動、なかでも我々の製造業は油を大量に使うし、廃棄物も出す。SDGsに逆行していると考えられがちですが、だから何番の目標は無理とか決めつけずに、広い視野で日々の活動を振り返ってみることが大事かなと思いますね」と語っています。


▲今では得意の金属や樹脂だけでなく、人工大理石の切削もこなしている。写真はNCフライス盤による穴あけ加工。

廃棄物とクリエイターを結んでWin×4を目指す

 SDGsの取り組みにからめて、藤永社長には今、大きなビジョンが2つあります。一つは、人工大理石の端材を活用した盆栽鉢「Hachi for BONSAI」を世界に向けて売り出すこと。素材を再活用した製品であるというだけでなく、盆栽という日本の誇れる文化・芸術を世界にさらに発信したい考えです。そのために関西広域連合が今年10月にパリで行うテストマーケティングへの参加を申請しているところです。
 そしてもう一つは、大量に廃棄される端材と、それを使って制作活動を行いたいクリエイターとを結ぶプラットフォームを構築することです。
「お金をかけて廃棄している企業にも、作品作りのために素材を購入しているクリエイターにも、そして廃棄物が減ることで環境が守られる地球(そこに暮らす人類)にも良いWIN×3の方程式が成立すると思うんですよね。そして、制作された作品の販売支援は当社が担おうかと考えています。オンラインでの販売だけでなく、ギャラリーを兼ねたリアルな店舗で実際に手にとってもらって購入いただく。それで当社にも利益が出れば、WIN×4ですね」と藤永社長。「お金をかけて産業廃棄物を処分されている企業の方には、ぜひご一報いただければ、お役に立てることがあるかもしれません」と呼びかけています。


▲リユースした人工大理石の端材と真鍮や銅と接合させた盆栽鉢「Hachi for BONSAI」。
成功のポイント

素材を再活用した新製品「Hachi for BONSAI」を世界に向けて売り出すことや、企業とクリエイターを繋ぎ地球環境保全とそこに暮らす人類に貢献する「WIN×4」のプラットフォームつくりなど、熱い想いをもちながら出来ることから着実に取り組んでいる藤永社長の経営姿勢が多くの共感を得ています。


下山商工株式会社

代表者名代表取締役 藤永 誉
本社堺市堺区向陵中町1-5-5
TEL072-252-7731
設立1959年設立
資本金1,000万円
従業員数9名
事業内容複合材料接合、蒸気・温水全自動洗浄機、撹拌機スピード切替装置、全自動蒸気煮沸洗浄機などの機械の製造・販売
ホームページ http://shimoyamashoukou.com/

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