インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
新社屋の立ち上げのタイミングで若手社員と「いい会社」づくりを
建築現場で使われるシーリング材や防水材、接着剤を製造販売しているシャープ化学工業。昨今の多様なカラーリングのニーズに応え、業界最多の70色の調色に対応したシーリング材の特注生産のほか、一般消費者にも馴染みのあるDIY・補修材など、独自の開発力で幅広く製品を展開しています。
「いい会社」づくりについて、同社ではこれまでも村上幹男社長の「失敗してもいいから、何でもやってみろ」という方針で、さまざまなことへのチャレンジを許してきた風土があります。4年に1回開催される「世界接着剤・シーリング材会議」でのプレゼンターにも若手を積極的に起用し、社員の成長を促してきました。「ものづくり経営大学」にも、これからの現場を担う社員にこそ学んでほしいと2年目から若手社員を参加させています。
今回の受講を決めた永江弘武取締役工場長は、その理由を「ちょうど新社屋が立ち上がり、事業も拡張していこうというタイミングでの開講でした。生産現場が忙しくなるなかで、このままではうまく回らないのではないかという心配もあり、また、世間で言う『いい会社』とはどのような会社なのかという興味もあって受講を決めました」と話しています。
永江工場長が「日本でいちばん大切にしたいいい会社」を見学して驚いたのは、訪問した企業ではほとんど残業がないことだったと言います。すぐさま「いかに仕事量を減らすか」つまりは「生産効率の向上」が経営陣の課題となりました。
「事業を見直す良いきっかけになりましたね」と村上社長。「これまで利益は出ていないけれど、創業時からのお付き合いで製造し続けてきた製品などがありました。それらは、環境負荷が大きく、今となっては当社に特長のない製品となっていることから、昨今の環境意識の高まりも考慮し、製造を廃止する決断をしました」。
▲2022年に行われた「世界接着剤・シーリング材会議」のプレゼンにも若手社員を起用。
積極的に推進したDXもまた残業時間の低減に
製造現場の機械化や自動化はもちろん、DX(デジタル・トランスフォーメーション)にも積極的に取り組んでいます。具体的には、クラウド型グループウエアサービスの導入で生産管理や納期管理などの情報の共有化、作業手順書などのペーパーレス化など、自分で考え判断できるだけの情報をすぐに取り出せるようシステムを整備したことで、業務のスピードアップが図られたとか。これもまた、残業時間の低減につながっています。
一方、組織づくりでは、かねてから特定の社員に仕事が集中することが課題になっていました。その人にしかできない仕事があることは会社としてもリスクであり、バックアップ体制を確立するために整備したのが新たな評価制度です。
「職務のマトリックスのようなものを作成し、どの業務にどのような作業があるかを洗い出しました。そして、それぞれの作業のできる、できないを各自で明確にし、半期ごとに自分で目標を立てて、個人面談でどれだけ達成できたかの評価を行っています」と永江工場長。もちろん、評価するばかりではなく、達成するための教育にも注力すべく、現場の補助に外部人材を活用し教育時間を確保しています。
ユニークなのは、5日連続の有給休暇の取得で土日を含む連続9日間の休暇を奨励する「計画休暇制度」です。社員のモチベーションアップが一番の目的ですが、これによって、業務の調整のための社員間のコミュニケーションが活発になるのと、特定の人しかできない領域がなくなるといった効果も得られています。
▲各自が持つタブレットで現在の生産数の確認や製造日報などの情報共有を行っている。
社員が自分で考え行動できる「いい会社」の組織づくりへ
最近は、社員一人ひとりのテリトリーを広げてもらおうと、組織の枠も外し始めたと村上社長。それによって、例えば、海外事業部は英語の話せる人間しかできないから、自分には無理という概念を取り払ってもらいたいと考えています。
そして、今春から新たにスタートさせたのがチーム制です。ホームセンターや産業用といった市場分野別に大きく4つのチームに分け、それぞれに開発担当、製造担当、営業担当の社員を振り分けています。
「チームに分けることで全員に当事者意識を持ってもらうことが狙いです。チームで情報を共有するため、これまでは営業から伝えられた得意先の要望のままに製品を開発・製造していましたが、製造部門からコストや時間が低減できる製法などが提案されるようになればと考えています」と永江工場長。そうして改善しようと行動したことは、成功すれば「提案賞」や「やったで賞」などで表彰され、失敗してもチャレンジ精神を失って欲しくないと「お笑い失敗大賞」が授与されるそうです。
最後に「いい会社」づくりに取り組む意義について村上社長は、「アメリカで開催された国際学会のオープニングセッションで、世界のトップメーカーのCEOが人材育成の重要性を説いていました。IT産業などに人材が流れがちで、化学産業における人材不足は世界が共通して抱いている危機感です。だからこそ、この業界を選んでくれた人材を大切に育てるべく『いい会社』であることが重要なんです」と語っています。
▲受注案件の生産管理や納期管理はもとより、社員のスケジュールも一元化されており、誰もがいつでも見ることができる。
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左:村上 幹男 代表取締役社長
右:永江 弘武 取締役工場長
シャープ化学工業株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 村上 幹男 |
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本社 | 堺市西区築港浜寺西町12-1 |
TEL | 072-268-0321 |
設立 | 1960年創業 1965年設立 |
資本金 | 9,200万円 |
従業員数 | 67名 |
事業内容 | シーリング材・接着剤・防水剤の製造販売、工事関連商品の仕入販売、輸出入 |
ホームページ | https://www.sharpchem.co.jp/ |