インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
コロナ禍のデジタル化推進を手取り足取りサポート
今日のパソコンレスキューサービスを立ち上げる前、Windowsが発売された当初からパソコンのサポートに携わってきたという伊藤久美子社長。現在同社では、基本的に会員契約した法人を対象にパソコンの設定やインターネット接続をはじめ、データ移行、機器のメンテナンスなど幅広いサポートサービス事業を展開しています。
新型コロナウイルス感染症の流行で、リモートワークやオンライン会議など、かつてなかったほどデジタル化やスマート化が求められていますが、ITという言葉が世に出て久しい今日でも、それに対応できる企業がまだまだ少なかったことを実感したと伊藤社長は語っています。
「このコロナ禍で行政からもデジタル化を進めるための手厚い支援がありますが、単にパソコンを購入したりホームページを作成したりすることがデジタル化なのかといわれれば違うと思います。自社に見合ったデジタル化が何か理解している企業は多くありません。デジタル化により、10km四方だった商圏が何万kmまで拡げられるなど、どういう便益が得られるかを理解した上で活用することが大切なのです」。
会員登録制で積み重ねてきた顧客との信頼関係があるからこそ、どのようなデジタル化が最適かを総合的に提案できるのが同社の強みだと伊藤社長。最近では、デジタル化のためのどのような支援制度があるのかということから申請書の書き方までを手取り足取りサポートすることも始めたそうです。
自社でもデジタル技術を活用した新規事業を開発するにあたり補助金を活用したことで、顧客へのより具体的で実際的なサポートにつながっていると語っていました。
▲会員登録された法人顧客ごとに担当者をおき、不具合があった時にも迅速に対応している。
サンピアの現状を分析し、課題解決法をITのプロとして助言
「せっかく補助金を使ってパソコンやウェブカメラなどを導入されても、それが十分に活用されないのであれば、補助金の本来の狙いから外れてしまいます。申請が通った後にもシステムや機器がきちんと活用されるまでをサポートしています。例えば、工場内にウェブカメラを設置することで、自宅にいながらリモートで工場内の安全を確認できるようになったケースや、ものづくり企業が自社サイト内にオンラインショップを設けたことで自社製品の見直しやPRができたほか、社員のモチベーションアップにつながった例もあります」。
一方、光明池駅前の専門店街「サンピア」のスマート化事業に関わることになったのは、ITアドバイザーとして俯瞰(ふかん)してサンピアの現状を分析し、抱える課題の解決に思いきった視点から提案できたことが評価されたようです。
「ビジネスマッチング事業で紹介され初めてサンピアに伺う前に、近隣に住む友人や知人に利用者としての印象などをヒアリングしました。それから現地を訪ね、理事長たちの問題意識や、今後望む方向などを伺い、さまざまな課題を発見しました。まず、ITのプロからすれば、サンピアには公式サイトがあり、LINE公式アカウントも取得していますが、運営者の組合が主導して情報発信されているわけでなく、大変もったいない状態です。利用客にアピールする情報をリアルタイムに発信することが、サンピアの魅力向上につながるわけで、館内に設置するデジタルサイネージもその一つのツールです」。
現在サンピアでは、こうしたデジタル化を進めるための環境整備を行っているところですが、伊藤社長はさらにその先での大転換も提案しています。
▲不具合の発生した機器を持ち帰って修理などのメンテナンスも自社内で行っている。
ITとエンタメが融合したeスポーツなどが新たな起爆剤に
地域住民の少子高齢化により、顧客層も高齢化しているサンピアの現状。それを何とか打破したいと考える理事長たち組合側の要望に応えて、伊藤社長が出したプランは、遊技業が撤退した地下1階を、eスポーツやロボットコンテストなどの教育プログラムに利用しようというものです。
「eスポーツのプロのプレーヤーに聞くと、国内は会場が全く足りていないそうで、若い人たちの学びの場であるとともに、プロによるイベント会場としても活用すれば、市内外から多くの若者を呼び込むことができます。『人が集まる』は『モノが集まる』ことでもあり、新たなショップの誘致も考えられるでしょう。プログラミングやロボットというのは、教育面でも注目されている分野であり、子どもたちがその世界へ足を踏み入れる入口をサンピアが作ってはどうかと考えています」。
ところで、パソコンレスキューサービスでも補助金を活用して開発中だという新規事業は、高齢者の見守りサービスです。「子どもたちから離れて独りで暮らすアクティブシニアが対象で、スマートウォッチといったウェアラブルデバイスを利用して日常的に利用者の心拍数などのデータを取得し、異常値が出た時には家族はもちろん、登録されているケアマネジャーやかかりつけ医にも通報される仕組みです。利用者が拡大されれば、個人が特定されないビッグデータとして地域の病院や大学でも、疾病の地域特性などの研究に活用できると考えています」。
今回のサンピアのスマート化事業にアドバイザーとして参画し、以前から関心のあったエンターテインメント界とのコラボも視野に、新たな境地を開拓しつつある伊藤社長。ITの活用による可能性はまだまだ広がっていくようです。
▲ものづくり企業の産業システムの開発なども主な業務。
成功のポイント
商業施設「サンピア」が抱える少子高齢化と商圏内人口の減少という課題に対し、若者を呼び込み、顧客を大きく変えるという大胆な企画案。その発想の原点には、「顧客の潜在ニーズをどう発掘し満足させるか」をキーとして、IT技術でさらに拡大発展させていく実行力。これこそがパソコンレスキューサービスの経営の本質です。
株式会社パソコンレスキューサービス
代表者名 | 代表取締役 伊藤 久美子 |
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本社 | 堺市西区浜寺石津町西4-19-5 |
TEL | 072-243-9901 |
設立 | 2001年設立 |
資本金 | 1,000万円 |
従業員数 | 10名 |
事業内容 | 情報処理サービス・情報提供サービス、情報処理システムの開発・提案、業務アプリケーションの導入支援、システム開発・導入支援、ホームページ制作など |
ホームページ | https://pcrs.jp/ |