インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
暮らし慣れた街に住み続けるための生活支援住宅を提供
地域に根ざした事業でこの街に貢献したいという思いから、1983年に設立された美木多園。現在は特別養護老人ホームや老人保健施設、グループホームの運営を行っています。なかでも全国的に珍しく、独創的な事業が「高齢者生活支援住宅」です。
府営住宅の空室を借り上げ、高齢者が暮らしやすいように改装した住宅を提供するもので、長期の居住だけでなく一泊二日からの短期の利用も可能です。発案者である西尾正敏理事長に、その意図を伺いました。
「ハードとしての高齢者施設を次々作り続けることには無理がありますし、安全のためにある程度自由を束縛せざるを得ない施設暮らしが、全ての高齢者にとって良いことだと考えていません。介護は必要ないけれど、生活に少し不安のある高齢者を対象に、暮らし慣れたこの街に住み続けてもらうための住居を提供しています。改装にあたっては、福祉の視点から建築を研究している大阪府立大学(現在の大阪公立大学)の先生たちと共同で考えました」。
社会実験的な前例のない事業に国や自治体からの見学も
前例がなく、社会実験的な側面もあったため、改装のための補助金を申請した国土交通省にも最初は理解されなかったとか。ところが、2011年に本事業が始動すると、国土交通省をはじめ、大阪府などの自治体から多くの見学があったといいます。老朽化した府営住宅の活用事例としても興味を持たれたようです。
各室にトイレはあるものの浴室がついていないのは、高齢者に入浴中の事故が多いことと、広々した浴室の方が気持ち良いからという理由。府営住宅の1室を、談話スペースも備えた大きな浴室に改装しています。そこに事務所を置くことで、職員が利用者と顔を合わせる機会を作るなど、自然な形での生活支援を実現しました。美木多園として自治会にも加入。当事業と利用者が地域に快く迎えられるような配慮も行われています。
▲ボランティアによる書道や押し花、絵手紙など多彩な教室活動。
▲地域にあるこども園の園児が訪問し合唱を披露。
航空分野で開発されたマネジメント手法で独自の研修
一方、施設運営においては、中間管理職の激務が課題となっていました。それを解消しようと、西尾理事長自らが昨年度から中間管理職研修を実施しています。これまでも独特な発想で事業を運営してきた西尾理事長が着目したのは、航空分野で開発された「クルー・リソース・マネジメント※」です。
「よくPDCAサイクルで回せと言われますが、それでは悠長なんです。現場で今起こったことに一人ひとりがどう対応できるか。航空機では操縦士と副操縦士は対等の責任を負っているそうです。介護の現場も上司だけでなく職員がそれぞれに自分の役割と責任を果たすべきで、そのためには管理職は管理に徹して、現場のことは職員に任せるよう言っています」。
特別養護老人ホームの林秀学副施設長は「この研修で学んだことを現場の職員たちとも共有し地固めしているところです。全ての職員が同じ方向を見て、一人ひとりの能力を発揮し役割を果たしてこそ、良い介護ができるのだということの理解が進んでいるように思います」。
業務改善会議で職員たちからさまざまなアイデアが発せられることも増えたと西尾理事長。独創的なマネジメントが効果を発揮し始めています。
※クルー・リソース・マネジメント...航空機の安全で効率的な運航のために、利用できる人的資源を効果的に活用しようという概念。
▲利用者の家族の相談事にも親身になって答える同園の生活相談員。
▲季節の生け花や絵画が鑑賞できる、まるでホテルのような特別養護老人ホームのロビー。
美木多園の人材戦略
業務の細分化で多様な人材の受入れを実現
外国人や介護に直接携わらないスタッフなど多様な人材を受入れ、週2日4時間勤務といった多様な働き方を実践しています。具体的には、すき間時間で働きたい方を生活サポーターとして活用し、介護職が専門業務に集中できるようになりました。また、このシステムのために業務を細分化したことで現場全体の効率化が図られています。
社会福祉法人 美木多園
代表者名 | 理事長 西尾 正敏 |
---|---|
本社 | 堺市南区美木多上1277-1 |
TEL | 072-296-1222 |
設立 | 1983年 |
従業員数 | 220名 |
事業内容 | 特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホームの運営 |
ホームページ | http://mikinosono.sakura.ne.jp/ |
さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=25032 |