インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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子育てしながら働きやすい環境が品質の安定にも 株式会社カネシゲ刃物

「どれだけ売れるかではなく、どれだけ惚れ込んでいるか」でラインナップしたかったと、河村幸祐社長が自ら立ち上げた自社ブランド「幸之祐」。そのものづくりを支える従業員の約半数が女性で、働きやすさが品質の安定にもつながると語っています。

価値観を共有できる人に向けてこだわりの自社ブランドを開設

 1932年に刃物の製造卸商として創業して以来、百年近い歴史を誇る株式会社カネシゲ刃物。幅広い層に向けて数多くの包丁を販売してきましたが、河村幸祐社長が疑問を抱いたのは、伝統的な技術で手作りされた高級品も、大量生産されている汎用品も同じカネシゲの名前で売られていることでした。
 「それでは職人の方たちも刃物作りに誇りが持てないじゃないですか。そこで、私がやりたいことだけを徹底的にやる、こだわりのブランドを作りたいと思ったんです。それが『幸之祐』です。そのこだわりを共有してくれる人だけが買ってくださればいい。それがたとえ0.1%の方であっても、世界全体を市場と考えれば、決して小さくありません」。
 実際に欧米を中心に、さまざまな国の販売店が「幸之祐」ブランドを扱っており、なかには「幸之祐」ブランドを愛好するあまり、腕にブランドロゴのタトゥーを入れているバイヤーもいたとか。そうした販売店に紹介されて、わざわざ堺の店舗を訪ねてくる外国人も少なくありません。
 そして、一流の職人による「鍛冶」「研ぎ」という工程を経た刃に柄をつける最終工程「柄付け」を担っているのが、同社の女性従業員たちです。

納期も価格も管理できるから急な早退や有給休暇も自由

 6年前から同社に勤務する河村社長の妹の西場奈津子さんは「刃物を扱うと聞けば、最初は『怖い』『男の仕事』というイメージを持たれがちなんですが、実際にやってみると、怖いというより楽しいです。なかでも『幸之祐』ブランドはデザイン的に洗練されているので、ふれるだけで惚れ惚れします。店頭に来られた外国人のお客様が思わず『Fantastic!』とつぶやくのを聞くと、嬉しくなりますね」。
 西場さん自身も一児のお母さんですが、同社は以前から子育て中の女性にとって働きやすい職場づくりを進めてきました。
 「当社で積極的に女性を活用するようになったのは、ちょうど『幸之祐』ブランドを立ち上げた頃です。1本1本小さな傷も見落とさないよう、心をこめて柄付けする作業に女性が向いていると考えたこともあります。一般に女性を活用する上でネックになるのは出産や育児だと言われますが、産休や育休といったことは事前に予定が見えて、こちらも備えることができます。問題になるのは、子どもの急な発熱による早退などで生産数の予定が狂うことですね。当社の『幸之祐』ブランドは、納期も価格も自社で管理しているからこそ、そうした予定外のことも許容できます。数年前から時間有給休暇制度も導入しました」。


▲本社ビル内で各々の業務に励んでいる従業員の皆さん

▲本社ビルと自社製品を陳列・販売している併設ギャラリー

女性も含めた従業員のやる気を応援する企業に

 「さかい女性の就職応援プロジェクト」に参画し、企業向けセミナーにも出席した河村社長は「話を聞いて、当社は自然と女性が働きやすい環境づくりができていたんだなと思いました。会社訪問も3回受け入れましたが、子育てしながら仕事を探している女性たちの真剣な思いもよく伝わってきて、働きやすい環境づくりの大切さを改めて認識しました。
 私自身が会社員だった時代の実感から、やらされ感のある残業や休日出勤はモチベーションを下げるだけだと考え、当社は残業ゼロ、有給休暇申請は即時承認としています。働きやすさが心のゆとりを生み、ひいては製品の品質の安定にもつながっていると思いますね」と語っています。
 将来的には、こだわりのものづくりを極めるために、すべての工程を自社内で完結させる一貫生産を目指したいと河村社長。すでに2人の社員が修行中だとか。さらに、「幸之祐」ブランドも包丁だけでなく、鞘や布巻きなど周辺グッズにもラインナップを拡大できればと考えています。
 西場さんは「私たち女性従業員にも、思いついたことがあればチャレンジすればいいと言われていて、私も思いついた漆塗りとのコラボレーションを、備長炭を使った漆塗り職人を探すところからやらせてもらえました」と話しています。
 若い人たちのやりたいものづくりを応援したいと語る河村社長。「男女を問わず従業員の満足度を上げることが企業の業績を上げる一番の近道ではないかと考えています」と語っていました。


▲最終工程の「柄付け」作業を行う女性従業員

※マミクリさかい...堺市の女性活躍推進を目的とした就労応援プロジェクト事業の一つで、「いつか働きたい」と考えるママのためのサークルです。子連れで参加できる企業説明会や企業見学も実施しています。

マミクリさかいの支援ポイント

新たな女性の働き方を模索する中で、社員一人ひとりと向き合いながら働きやすい環境を作り出そうとしている企業さんです。さらに多くの子育て中の女性に、「働き方はひとつではない」と知ってもらいたいです。


株式会社カネシゲ刃物

代表者名代表取締役社長 河村 幸祐
本社堺市堺区甲斐町東4-3-26
TEL072-222-0081
設立1932年創業 1969年設立
資本金1,000万円
従業員数7名
事業内容打刃物の製造、販売
ホームページ http://konosuke-sakai.com/
さかしる掲載ページ https://sakacil.com/detail/?id=8282

貸会場のご案内 TEL 072-255-0111 FAX 072-255-3570 ご案内ページはこのボタンをクリック