インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
和晒から染め、製品作りまでの一貫生産を強みに自社製品を開発
堺の伝統産業である和晒加工業で1931年に創業した角野晒染株式会社。100年近い歴史を誇っています。和晒とは、大きな釜の中で織り上がった綿布をそのまま、何日もかけて焚き上げて漂白加工する日本伝統の晒技法で、短時間に圧力をかけて加工する洋晒と異なり、生地にストレスをかけないため柔らかい風合いに仕上がります。また吸水性や通気性にも優れており、昔から浴衣や手ぬぐい、紙おむつがなかった時代にはおしめに使われていました。
同社では約50年前から捺染加工も始め、病院などで使われるガーゼネマキなどの製造・販売も手がけています。堺で基本的に分業制となっている和晒から染め、そして製品作りまでを一貫生産できることも同社の大きな強みです。この強みを活かして最近では、アパレル製品やナイトウエア、ホームウエアなどの自社ブランド製品を開発、製造販売しています。
「ガーゼネマキに代わる今の時代の製品作りをしたいと10年ぐらい前から考えていました。そこで自社ブランド製品をECサイトなどで販売することで持続的な売上を作っていくことにしたのです」(角野孝二社長)。
▲(左)南村健一郎営業部長
ものづくりを通して縁がつながり、広がっていくことに魅力を感じて
こうした新事業を推進するうえで角野社長の心強い右腕が、南村健一郎営業部長です。入社のきっかけは、2010年の角野社長の代表取締役就任でした。
「事業承継のため帰ってきた27歳の時に、従業員の平均年齢が60歳近くでした。この先、自分と一緒に会社を担ってくれる人をと、10年かけて若い人材を入れました。中学時代の同級生、南村に声を掛けたのは、社長就任の2ヶ月後です」。
当時は自動車販売会社で営業を務めていたという南村部長。週末に休めない仕事のため、家族と一緒に過ごせるよう働き方を変えたかった、と喜んで転職を決めました。
「それに小学生の時に社会見学させてもらった地元・堺の伝統産業に貢献したいという気持ちもありました。もちろん、当社の売上と利益の確保を一番に考えていますが、事業の発展とともに雇用が拡大できれば、ひいては地場産業の活性化につながると考えています。
入社後に実感しているのは、人とのつながりですね。奈良の有名な老舗雑貨店に飛び込みで営業したのが長いお付き合いになったり、失敗した商品の直しを手伝ってくれた新たな外注先との出会いがあったりと、自分たちの思いを持って商品づくりをすることでお得意先をはじめ、外注先、エンドユーザーの方たちとつながっていくことに魅力を感じます」。
▲細かなデザインや多色のデザインをプリントすることに適しているスクリーンプリント。
▲同社のオリジナル手ぬぐいの生地に汚れやシワなどがないようつねにチェックしている検反作業。
工場の開放や絞り染め体験が産業観光への端緒になれば
角野社長の厚い信頼を得て、南村部長の業務はさらに広がっています。例えば、「こうばをエンターテインメントに変える」をテーマに大阪府下で開催された「FactorISM(ファクトリズム)」。工場をオープンにすることで堺の和晒や染めについて理解が深まればと参加を決めた角野社長に代わって実務を担いました。
「コロナ禍で世間が低迷していて面白くない時期でしたが、参加企業の社長さんたちがとても前向きで刺激をもらいました」。
和晒・染めという地場産業をもっと知ってもらおうと同社では4年前から、自分で染めた世界で一枚の手ぬぐいなどを製作する「雪花絞り染め体験」も行っています。「和晒・染めが修学旅行生にも来てもらえる産業観光に発展できれば」と南村部長は抱負を語っていました。
▲工場に隣接して設けられたショールーム(写真左)では、絞り染め手ぬぐいや自社ブランド商品のサンプルが展示・販売されている。
(株)角野晒染の人材戦略
次代を見据えて、生え抜きの社員の育成を
これまで中途採用ばかりでしたが、持続的発展を考えると新卒者を採用したいと考えています。そのためにすでに進めているのがトイレや更衣室などの環境整備で、あわせて誇りの持てる働きがい作りだと考えています。繊維業は独特の用語など覚えることも多いですが、3年頑張ってくれたら、きっと面白さがわかります。
角野晒染株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 角野 孝二 |
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本社 | 堺市西区津久野町3-32-1 |
TEL | 072-262-0425 |
設立 | 1931年創業 1951年設立 |
従業員数 | 18名 |
事業内容 | 綿織物の精錬漂白加工、捺染加工 |
ホームページ | https://www.kadono-sarashi.jp/ |
さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=21802 |