インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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適正な人事評価で社員の自律を促し成長し続ける企業へ 昭和金属工業株式会社

 冷間鍛造を用いた金属の塑性(そせい)加工から切削加工まで一貫生産できることや、金属ナットを専門で製造していることなどを強みに自動車業界などでシェアを拡大している昭和金属工業株式会社。この数年の"大改革"により、業績を大きく伸ばしています。

ナットに特化したニッチな領域でシェアを拡大

 原材料や人件費の高騰、為替の影響など、日本国内で製造事業を円滑に進めることが難しくなっているなか、昭和金属工業では冷間鍛造と切削の一貫生産によるコストパフォーマンスの高さや、ナット(雌ネジ)を専門に製造している数少ないメーカーとしての強みを発揮。とりわけEV化が急速に進む自動車業界で、多用される樹脂のインサート成型で使用される金属ナットで、同社の金属ナットの需要が高まっています。同社では、日本製の高品質という価値をしっかりと訴求して利益を確保。業績を順調に伸ばしていますが、その要因は、昨年8月に社長に就任したばかりの小谷侑久社長が敢行した大改革でした。
 「大学卒業後に入社した大手アウトドアスポーツメーカーでは、統計学を用いたマネジメント分析や機械要素の基礎などを習得したほか、人間関係の良さと福利厚生の充実が働く原動力になることを体感しました。事業を承継すべく2014年に入社した当社では、その2つが全くできておらず、パワハラのような言動も見られました。人間関係を含めた働きやすい環境づくり。そこから変えていかなければ、成長のためのスタートラインにも立てないと思ったのです」。


▲製品に亀裂やひび割れなどがないかマイクロスコープで検査。

5Sに始まる大改革を敢行 原価管理も徹底して利益を確保

 2016年、小谷社長(当時は一般社員)は、自分の考えに賛同し、現場での発言力を持つ係長クラスの社員らを現場や生産管理部門などから選抜して「社長室」を開設しました。
 「『社長室』としたのは、社長直下で改革を遂行する部署であることを印象づけるためで、最初に取り組んだのは、改善改革の基礎である5S活動です。直近1年以内に使用しなかったものは、パレットから金型など全てを廃棄して、まず有効スペースを確保しました。床を塗り替えたりしたほか、ホームセンターの商品棚のように見えやすく取り出しやすい工具専用棚を新設するなど、5Sを維持するための『汚れない仕組み作り』を行いました。大きな改造は第2工場に作った中2階ですね。この地域は、創業後に市街化調整区域になり、工場を新増設できなくなったのですが、冷間鍛造と切削では加工サイクルが異なるため、冷間鍛造設備1台に対し、切削設備を複数台用意する必要があり、そのためのスペースを作ったのです。食堂もきれいにし、照明も全てLEDにしたことで電気代は大幅に削減されました」。
 改革は他にも、長期設備投資計画を作成し内部留保と投資限度を超過させないシステムを構築したほか、300以上の製品の製造原価や純利益金額を算出し、限界利益率を割っていたり純利益率がマイナス転嫁していたりする製品は値上げ交渉を実施しています。


▲計量、梱包作業を経て出荷される製品。
▲製品に不良品が含まれていないかチェックを行う。

評価の基準を明確に示すことで社員の意欲とスキルの向上へ

 かつては上司の采配で決定されていた人事評価なども一新、透明性を高めました。具体的には「成果」「思考」「姿勢」「ビジネススキル」「ヒューマンスキル」「マネジメント」「製造知識試験」「自己評価コメント」の8分類のなかで100を超える評価項目を設定し、その一つひとつの評価基準を定めたコンピテンシーをハンドブックにして従業員に配付しています。各役職・階級の手当や賞与の算出方法も開示。自身の努力により次のステージに挑戦できる試験も行っています。賞与授与式では社内トップ10が発表され、選ばれた社員にはそれを示すバッジが支給されるほか、自動的に昇格の対象となります。
 「評価基準を満たさなかった社員には降格もあり、旧幹部たちは反発して退職者も出しましたが、現在、社員の平均年齢は40・31歳と若返ったうえ、離職率も全国平均の約半分です。福利厚生面でもバースデー休暇や結婚記念日休暇などを新設しました。今ではほとんどの社員が自分で考えて行動し、のびのびと仕事をしています」。
 実は、小谷社長の真の目的はここにありました。社内の能力ある人材を引き上げ、業務の大半を任せることで、小谷社長を中心とした営業部隊が新規開拓に専念できる体制を整えたのです。結果、月平均の見積件数は6件から60件へ、3年連続で年間平均19件の新製品を受注しています。
 「1年先のことも予測できない今、中長期計画を策定しませんが、カーシェアリングの浸透などで先細りが予測される自動車産業に代わる新たなモビリティ産業などに視野を広げていきたい」と語っていました。

経営のキモ

 小谷社長は人事評価・組織改革とソフト・ハード設備の整備に着手。その結果、社員のモチベーションアップと利益率向上を達成しました。これからは今まで以上に視野を広げ、時代の変化に応じた新商品開発を進めていく予定です。


昭和金属工業株式会社

代表者名代表取締役社長 小谷 侑久(たすく)
本社堺市西区山田2-190-15
TEL072-274-3888
設立1960年創業 1972年設立
資本金1,000万円
従業員数76名
事業内容自転車・自動車用各種冷間圧造部品、切削部品、建築関連ナットなどの製造・販売
ホームページhttp://www.showa-metal.co.jp
https://sakacil.com/detail/?id=3059

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