インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
誰もやりたがらないような高度の制御プログラムを得意とし、有名テーマパークのパビリオン制御プログラムを手がけたこともある髙瀬渉市社長が、思いがけず始めることになった介護事業。得意のIT技術を活かして、独自のサービスを展開しています。
難度の高いプログラム開発を強みとして起業
ファクトリーオートメーション(FA)が進展するなかで、技術者として電気・電子設計・制御プログラムに携わっていた髙瀬涉市社長は、制御機器による生産データ管理の面白さに魅せられ、より深く追求したいと個人事業主として独立。誰でもできる簡単な仕事や一度取り組んだ仕事を避けて、難度が高く引き受け手の少ないシステム制御プログラムばかりに携わるうち、世界に生産拠点を広げる大企業のデータ管理システムや、有名テーマパークのパビリオンの制御プログラムなども手がけるようになりました。
「その後プチリタイアして、数年間世界を旅していたのですが、帰国後、ある社会福祉法人とのご縁から、介護現場のシステム改善をお手伝いしました。そこで介護に携わっている多くの職員たちがパソコン業務に苦手意識を持ち、多くの時間を取られてストレスを感じていることに気づいたのです。その原因は、介護現場を知らない人間が想像でプログラムやシステムを作っていることにあると考え、介護職員の心に寄り添い、本来の業務であるケアに集中できるようなシステムづくりをしたいと株式会社ソフトアップJ※1を設立しました」。
※1㈱髙瀬の旧社名
IT技術を活かした介護事業へ 認知症予防装置を開発
当初は介護保険の請求ソフトの開発や事務処理の自動化など、ITを活用した業務支援を行っていましたが、思いがけず介護事業そのものを立ち上げることに。
「今や介護施設はコンビニエンスストアより多く、経営は大変と言われたので、他社と差別化できるのは得意のIT技術を活かすことだと思いました。ちょうど私の母も軽度の認知症を煩っていたので、すぐに認知症を予防したり改善したりする装置を思い立ち、展示会に出品したところ、商社が扱ってくれることになったのです」。
「脳ぽち」と名付けられたその装置は、手と目の協調性や足し算、瞬間記憶など、前頭葉の機能を評価するとともに向上させるトレーニングソフトと、高齢者にも簡単に操作できるタッチパネル形式のパソコンをパッケージ化したトレーニング装置で、すでに特許も取得しています。
この「脳ぽち」の活用を目指して2014年からスタートした地域密着型通所介護サービス「エントレリハ」では、「脳ぽち」のほか、バランス強化や四肢の筋力アップなどを目的としたスタジオトレーニングなどを行っています。ユニークなのは、地元の農家や商店と連携した買い物支援です。利用者が到着後1時間以内に大画面のタッチパネルで米や野菜、日用品を注文しておくと、帰りの送迎車で商品を自宅まで運んでもらえる仕組みです。
「外出がつらい高齢者がスマホで買い物しようとすれば、詐欺などに遭う危険性があるうえ、そもそもスマホの小さな画面は高齢者には使いづらいのです。腐らせてはもったいないと考える世代ですから、ナス1個からでも買えるようにしました。地元の商店と連携することで地域貢献にもつながればと考えています」。
▲写真1
▲写真2
▲写真3
「エントレリハ」では、認知症予防に認知症予防装置・脳ぽち(写真1)を活用。その他、理学療法士による個別リハビリ(写真2)やレッドコードを使った体幹トレーニング(写真3)などを行っている。
脳神経関係の介護サービスの全国展開を目指す
最近は、同社の脳神経に着目したトレーニング装置の開発や、それを実践する介護施設づくりが認知症の研究者たちに高く評価され、髙瀬社長自身も専門研究会に参加し、得意の分析技術で脳神経関係の介護システムづくりの研究・開発を本格的に進めているところです。
「今後はこのシステムをさらに広げようと自社でも拠点を拡大する考えですが、あわせて認知に特化した介護施設のDX化の加盟も募っています。このように全国的に認知・神経関係の介護サービスを展開したいと考えていることから、かつてのソフト開発会社のイメージから脱却するため、今年1月には社名を変更しました」。
そもそも、ITの対局にあるような介護事業への大転換に不安はなかったのか、の問いには「私の不得手な領域をカバーしてくれるパートナーを迎えましたから」と髙瀬社長。将来の夢は、認知症の方がイキイキと暮らせるテーマパークのような村を作りたいと語っています。「商店など敷地内の全てのサービスは、認知症介護の専門スキルを備えたスタッフによって運営され、利用者の尊厳が確保される村です」。
▲地域密着型通所介護サービス「エントレリハ」で行うスタジオトレーニングの様子。
経営のキモ
同社の大きな強みはIT技術と介護現場のニーズを的確に結びつけた点にあります。現場に寄り添った独自のシステムによって、介護サービスの差別化を図り、競争力を高めています。認知症介護の未来を見据えた事業展開も魅力的です。
株式会社髙瀬
代表者名 | 代表取締役 髙瀬 渉市(じゅんいち) |
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事業所 | 堺市堺区甲斐町東3-1-13 |
TEL | 072-222-2666 |
設立 | 2010年設立 |
資本金 | 200万円 |
従業員数 | 18名 |
事業内容 | コンピュータシステム、機械装置のプログラム、Webシステム、介護ロボット、介護施設などの企画・開発・運営 |
ホームページ | http://www.takase-k.com |
さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=13535 |