インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~
1968年の設立当時から仲買人制度を廃し、小売業者に直接販売する「直接買参人(ばいさんにん)方式」を採用してきた大阪南部合同青果株式会社。個人商店が減少しつつある今日、新たな販路を「拡げる」足がかりとしてカフェとマルシェを開業しました。
顧客の小売店が減少するなかBtoCのカフェをオープン
大阪南部合同青果株式会社は、1968年に八尾市の亀井青果卸売市場と松原市の天美青果卸売市場、布忍青果卸売市場が合併して設立されたもので、南大阪エリアで最大規模を誇る青果卸売市場を運営しています。
設立当初から採用してきた「直接買参人方式」により、小売店にとっては仕入れ価格が下がるばかりでなく、産地から届いた青果を新鮮なうちに店頭に並べられる利点があり、それが同社の大きな強みとなっています。しかし、昨今の商店街の衰退や店主の高齢化によって小売店の廃業が増えており、同社の経営課題となっています。
そうしたなか、2004年から近隣の小学校で食育活動に協力。その意義を山口博康管理部部長は「子どもたちの成長に大切な『食』を考える上で野菜嫌いを解消できないかと、実際に野菜を栽培したり調理したり、時には産地から講師として生産者を招いたりして青果について学んでもらっています」と語っています。
こうした地域に根ざした活動としては他にも、地元・堺の個人農家と取り引きし、「堺のめぐみ」ブランドとしてアピールしているほか、2023年1月には市場の敷地内に、「"市場と地域" "産地と消費者" "人と人"を"繋ぐ"」をコンセプトとしたカフェ&マルシェ「the PARK SIDE」を開業しています。
▲深夜に産地から入荷した青果は、競りに直接参加する小売商に買い付けられていく。
青果市場の直営ならではの新鮮な青果で人気店に
「以前は市場に買い付けに来るお客様を相手にした食堂と喫茶店がテナントとして入っていましたが、閉店してからはずっと空き店舗でした。新たな借り手が見つからないなか、国の事業再構築補助金制度のことを知り、自社で新規事業を立ち上げようということになったのです。新鮮な野菜や果物を提供するアンテナショップとして、地域の方たちとの交流を深められないかと考えました」と山口部長。
実際、これまでも近隣の方たちから、スイカやみかんなどを小売りしてもらえないかと声を掛けられることがあったとか。現在は、「the PARK SIDE」のマルシェで季節の野菜や果物が購入できます。
カフェで人気を博しているのは、旬の野菜がたっぷりと盛られた「サラダプレート」と、旬の果物が下皿にこぼれ落ちるほど盛り付けられた「季節のフルーツパフェ」です。テレビ番組や雑誌で取り上げられたこともあり、近隣からだけでなく、遠く和歌山などからも訪れる人がいるといいます。
開店と同時に女性たちで席が次々と埋められていく人気店ですが、飲食業のプロに頼らず自社でメニュー開発を行ったことにも驚かされます。
▲青果市場の直営店ならではの新鮮さと価格が魅力のマルシェ。
少なくなる小売店に代わって飲食店などへの小売業も視野に
管理部の森田充希次長は「カフェの立ち上げに先立って社員を募集しましたが、飲食業の経験者というわけでなく、全て手探り状態でした。当初、サラダで店が成り立つのか不安もあり、大阪のオフィス街や西宮のお店など、人生でこれまでにないほどサラダを食べ歩きました(笑)。そして試作を何度も重ねて、新鮮でおいしい旬の野菜を大きなプレートにたっぷり、色とりどりに盛り付けることで見栄えもいいサラダプレートが完成したのです。
お客様からは『これだけの野菜の種類を揃えるのは家庭では無理。お得感がある』とか『罪悪感なくお腹が満たされる』と喜んでいただいていますが、野菜の種類や量の多さだけでなく、それぞれマリネやラペにしたり、当社でオリジナルに開発したドレッシングを使ったりするなど、たくさんの野菜を飽きることなく楽しんでいただく工夫をしています」と語っています。
オープン当時にチラシを配布したほかは広告にお金をかけていないそうですが、見栄えの良い画像を頻繁に更新するなどSNSを積極的に活用することで十分なPR効果が得られているようです。
「同店で消費者の声を直接聞けるようになり、変わった野菜も意外と受け入れてもらえることがわかったりと、本業の小売店への営業活動にも活かせるのではと思っています」。卸売市場のほうも、今後は少なくなっていく小売店に代わって小規模の飲食店や福祉施設へのデリバリーも展開できればと山口部長。時代の変化に柔軟に対応し、新たな販路も拡げていきたい考えです。
▲ナチュラルな内装が女性に人気のカフェ。大泉緑地に隣接して家族連れも多く訪れる。
経営のキモ
全国の産地からの直接買取りによる豊富な品揃えと新鮮さの提供という強みを活かし、地元に密着して野菜果物の価値を新たに拡大するビジネスモデルの創造により、時代の変化への適応を目指していることが同社の特長です。
大阪南部合同青果株式会社
代表者名 | 代表取締役社長 中谷泰明 |
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本社 | 堺市北区中村町744-1 |
TEL | 072-258-1800 |
設立 | 1968年設立 |
資本金 | 1億円 |
従業員数 | 70名 |
事業内容 | 青果物の卸売に関するすべての事業 |
ホームページ | http://www.osaka-nanbu.com/ |
さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=19019 |