インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

国際輸送をはじめ、輸出入に関する通関手続きや倉庫保管、国内輸送、保険業務代理などを一元的かつ総合的に担う新洋海運株式会社。40数年前に立ち上げたサッカー部が現在、採用ルートとして大きな役割を果たしています。
最適な輸送手段などを提案する「国際物流のコンシェルジュ」
昨年、創業70周年を迎えた新洋海運株式会社。豊富な実績とノウハウに裏打ちされた現場力を活かし、顧客のニーズに則した最適な輸送手段、輸送ルートを提案する「国際物流のコンシェルジュ」としての役割をより強化していきたいと考えています。特に、ベトナムとタイに現地法人を有し、アジア・アセアン地域に強固な物流ネットワークを構築しており、東南アジアに進出する堺のものづくり企業の設備の運送や現地通関、製品の輸送などをサポートすることも増えているそうです。
また、ESG経営にも注力し、カーボンニュートラルの取組の一つとして、顧客のタイヤメーカーなどとの共同スキームでトラックによる製品輸送の7割を内航船による海上輸送にシフト。CO2の削減に貢献したと、今年6月に「第26回物流環境大賞」の「低炭素物流推進賞」を受賞しています。
来期から10年間の「長期ビジョン」と、それを踏まえた中期経営計画を策定中の同社では、その中で新たな人材戦略も立てているところです。髙景保取締役は「これまでは、部署ごとの欠員補充のような形での人材採用でした。しかし長期ビジョンで、理想とする10年後の姿を決定するにあたり、現時点でどのようなスキルやキャリアを持った人材がどれだけ足りていないのか、棚卸し作業を行っています。その結果によって、必要な人材を社内で育成するのか、新たに採用しなければならないのかを整理する予定です」と語っています。


同好会だったサッカー部が新卒採用の窓口に
中小企業の新卒採用が難しいとされる昨今、同社も例外ではないといいます。4年前までの実績では新卒採用の方が多かったものの、翌年からは逆転し、昨年は新卒3名、キャリア採用が6名となりました。
「キャリア採用は、転職ブームだからか、求人サイトで募集すると結構な反応があります。ただ、国際物流と聞けば、華やかなイメージを持たれるかもしれませんが、実際は物を動かすための手続きなど、裏方の地味な仕事です。入社してから実際の仕事と認識のズレが生じないよう、丁寧な説明を心がけたいと思っています」と髙取締役。
一方、新卒採用については、昨年と今年で3名ずつの入社があり、その全員が、40数年前に社員の交流の場として立ち上げたサッカー部が縁となり、入社に至っています。
「1980年代に、当時の社長が同好会として作ったもので、業務から離れて自由に交流できる場を作るのが目的だったようです。
その社長が堺市サッカー連盟の理事長を長く務めていたこともあり、いろいろな高校や大学のサッカー部の監督とつながりができ、そのサッカー部から当社へ入社する学生が出てきたのです。実は、1995年入社の私もその一人です(笑)」。

▲髙取締役をはじめ、サッカー部から入社した社員の多くが重要なポストで活躍している。
企業は「選ぶ」時代から「選ばれる」時代へ
驚くのは、一昨年からそのサッカー部を採用ルートとして戦略的に活用していることです。
「2000年頃からレベルの高い選手が入社するようになり、なかには高校サッカー強豪校出身で、全国ベスト4の経験を持つ社員もいます。そこで、大阪府社会人リーグにも入りました。4部からのスタートでしたが、2008年に1部リーグに昇格し、3位に入賞したこともあります。
ただ当時は、会社からの支援はユニフォーム代など年間数十万円程度でした。やがて建設業界への転職者が複数名出るなどしてサッカー部の士気が下がり、廃部も考えたのですが、私としてはむしろ、会社の援助を数百万円まで増やして専任の監督やコーチを雇用し、プロに行きたいけれど行けない、試合に出たいけれど出られない学生たちの受け皿にすることにしたのです。それが2024年2月からのことです。
今では社員だけでなく、学生たちもチームに所属しており、そこで社員と交流するなかで、当社に興味を持って入社してくれる学生たちが出てきました。サッカー部も一度は2部に降格しましたが、2023年に再び1部に昇格しています」。
髙取締役は、この採用難の時代に企業側も考え方を変えなければならないと語っています。「企業が選ぶ時代ではなく、選ばれる時代になりました。従業員にどういうスキルやキャリア、経験を提供できるのか。従業員満足度を高めることが重要です。ひいては、それが企業の付加価値向上に繋がると考えています」。

▲更に上のカテゴリーへの昇格をめざし日々練習をする新洋海運F.Cのメンバー。

▲同社倉庫を利用してニーズに合わせたジャストインタイムな配送が可能に。
経営のキモ
国際輸送から通関・倉庫保管・国内輸送・保険代理までの一貫体制と東南アジアに広がる拠点ネットワークを基盤に、顧客ニーズに即し、かつ顧客の成長戦略に寄り添う最適な物流を提案・実現していることが同社の強みです。

新洋海運株式会社
代表者名 | 代表取締役 社長執行役員 稲葉 徹志 |
---|---|
本社 | 堺市堺区大町東1-1-10 |
TEL | 072-238-1161 |
設立 | 1954年設立 |
資本金 | 1億円 |
従業員数 | 135名 |
事業内容 | 国際輸送、輸出入、通関、倉庫・配送、内航、損保代理店 |
ホームページ | https://www.shin-yo.co.jp/ |
さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=11100 |